須今 安見は常に眠たげ

風祭 風利

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男女の話

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先程の声かけで集まっていたのは、僕を含めた坂内君と小舞君。 女子の方は安味さんを含めた4人。


 サイドテールで猫目が特徴の濱井 梨麻はまい りまさん。 かなり小柄だがスポーティーな体をしている。 バレーの方でも活躍は出来るとは思ったが身長の関係上参加出来なかったようだ。


 2人目はロングヘアーで おっとりしたような表情をしているのが江ノ島 智美えのしま さとみさん。 彼女は逆に高身長なのだが、彼女は文化部なので、こちらも条件に合わず、こちら側に流れたと言うことだ。


 そしてもう一人は円藤さんである。


「いやぁ、誰がどこに行くのかなってずっと思ってたけど、まさか私たちの所に来るとはねぇ。」

「濱井さんは観察する人なのですからね。 自分達は入ってなかったみたいですけれど。」

「そんなこと言われても分からないものは分からないじゃない。」

「えっと、とりあえず話を進めてもいいのかな?」


 このままでは話が進みそうに無かったので、話題を変える。


「ドッジボールだからそんなに作戦を考えることもないんじゃないか?」

「分からないよ? こうやって本格的に作戦を立てているのは少数かも知れないし、なにより我々以外に真面目にやろうという意欲が見られないように感じるね。」


 坂内君の言う通り、バレーチームは必死になって黒板に書いては消して書いては消してを繰り返しているが、ドッジボールの人間はどちらかと言えばゆったりしている。 勝ち負けに拘らないなら確かにいいのだが、これはあくまでも学校のイベント。 少しくらいまともにやってもらってもいいのではないのだろうか?


「でも実際どうするんだろうね。 特に最初の外野は誰にするかくらいは決めてもいいんじゃないかな? せめてって話だけれど。」

「それも作戦のひとつとして、決めてもいいと思う、のですけれど。」


 僕の意見に円藤さんが肯定する。 まだ時間はあるとは言えさすがにやる気が無さすぎるのではないかと思う。 球技大会はゴールデンウィーク前の木曜日と金曜日の2日間に分けられる。


「まあまあいいじゃん! 今は一緒に話し合おうよ!」


 濱井さんがすぐに話を元に戻した。 時間は確かにあるためあまり焦る必要はないのだろう。


「そういえば坂内君って演劇部に行ってるんだよね? どう? どんな感じなの?」

「今は私はまだ裏方に少し手伝いをしているだけだが、演技をするのはやはり難しいようで、先輩方々でも台本を見ながら唸っていたよ。」

「そういえばあなたも模型部にいましたよね。 私は作る方には出来ないのですが、その辺りのことをお聞きしたいです。」

「俺で良ければお話ししますよ。 でも模型部の模型を見て「いい色合いの使い方をしてますね。」って言ってたような気がするんだけれど。」


 向こうがそれぞれに会話を始めてしまった。 残ったのは僕に安見さんに円藤さん。 会話をしたことのない2人にも話しかけたかったが、少し時間をおいてから話しかけてみよう。


 そういって安見さんの方を見ると・・・


「くぅ・・・ くぅ・・・」


 また寝てしまっている。 机に突っ伏していることはないが、この度に首がこっくりこっくりしている。 あかべこみたいになっていて正直危なげである。


「安見さん。 首がおかしくなっちゃうよ。」


 そういって安見さんに声をかける。 こうなってしまうとしばらくは起きないだろう。 そう考えられるような寝方をしている。


「須今さんはいつも、このような感じなのですか?」

「うん。 まったく、隣にいる僕の事も少しは思って欲しいんだけど。 授業の半分も寝られてたらこっちだってノート取らなきゃいけなくて大変なのに。 僕はそんなに文字は上手く書けないんだよ。」


 この2週間の事を思い出してため息をはいた。 もう少し改善案はないのだろうか。


「よく・・・見ていらっしゃるのですね。」

「面倒見って聞こえはいいけれど、実際は大変なんだよ。 円藤さんだってこんな風にされるのはあんまり好きじゃないでしょ? 僕は好意でやってるけれど、それが好意じゃなかったら、やってる側もやられてる側も損だもの。 これは次の休み時間まで起きないや。 諦めよう。」


 諦めも肝心だと思い、少し体勢を立て直させてから円藤さんのほうに体を向ける。


「ごめんね。 こんなことになっちゃって。」

「い、いえ。 大丈夫です。」

「そっか。 あ、そういえばあれからスカートの調子はどう? 解れてたりしない?」

「はい。 おかげさまで。」


 そういって笑顔を見せる円藤さん。 しかしその笑顔にはどこか暗そうな雰囲気があった。


「しかし酷い話だよね。 スカートを切るなんてさ。」

「・・・切る?」

「うん、あの感じは自然に裂けたものでもないし、挟んだり引っ掻けたりしたような避け方じゃなかったんだ。 任意的に誰かが切った。 そう考えられるほどにね。」


 僕は右手でピースサインを作って、はさみを使うように人差し指と中指で切る動作をした。 裂け方があまりにも綺麗だった為に、そう思った。 どうやら彼女にもなにか理由がありそうだ。


「円藤さん。 なにか心当たりはないかな? その、スカートを切られるなんて普通な事じゃないよ。 僕が無理なら他の人に相談してみたら? ほら、今なら濱井さんや江ノ島さんもいるし。」

「わ、私自身心当たりはないのですが・・・そう、ですね。 相談してみようと思います。」


 悩みは溜め込まない方がいいってね。 円藤さんが少しでも気が休まるようなら、それに越したことはないのだから。



<別視点>

「あの三人、随分と仲が良さそうですね。」

「館君は本当にお人好しな性格だから、ああやって気にかけちゃうのさ。 彼のいいところでもあり、心配になる部分でもあるけどね。」

「なぁ、館がどっちと付き合うか見物じゃないか?」

「あんまりそういうのは他人がつっこむものじゃないと思うけど・・・ まあ面白そうだし、観察していこうよ。」

「いいのだろうか? そんなことをして。」

「直接的出なければ・・・多分・・・」

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