須今 安見は常に眠たげ

風祭 風利

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名前とチーム分け

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週末を終えて新たな月曜日が始まった。


 いつもの時間に学校に登校をして、教室に着くと、僕の席の隣、須今さんが先週、先々週と同じ様に机に向かって眠っていた。 やっぱりお弁当を作っているから眠たくなるのではないかと思うのだが、お弁当を作るものとしてはこだわりたいのだろう。 僕自身もそう思っているときがあるので、分からなくはない。 今日は手抜き弁当だけど。


 僕は自分の席について、最初の授業の準備をしていると、


「んぅ・・・ふあぁ・・・あふぅ・・・」


 隣で目を覚ました須今さんが欠伸をする。 まだ寝たりないのかな?


「ん・・・あ、おはようございます、館さん。」


 隣に座っていた僕に気が付いたようで、朝の挨拶をしてくる。 それは会ったときの挨拶? 今起きたときの挨拶?


「おはよう・・・・・・須今さん。」

「・・・なんで少し言い淀んだんです?」


 自分でもなんで言い淀んだのか、理由は分かっている。 一昨日に須今さんの姉と妹、両方にあっているため、名前呼びをしなければならなかっただけに今の須今さんも名前呼びになりそうだったので、少し戸惑ったのだ。


「あぁ、そういえば土曜日に姉さんと味柑にあったそうではないですか。」

「うん、まあ。」

「姉さんはともかくとしても、まさか味柑にまで会っていたとは・・・ と言うことはあのお菓子も館さんが選んだんですか?」

「まぁ、そういうことになるよね。」

「なるほど。 珍しく気分に沿ったものを買ってきて、それを誉めたら大喜びしたんですけれど。 館さんが一枚絡んでいましたか。」

「なんか、余計なことしちゃった?」

「いえ、そういうわけではないのですが。 勘違いが加速してしまったかなと。」


 勘違い? 俺と須今さんの間になにか勘違いをするようなことが生じるのだろうか? そう思い首を傾げると、須今さんは少しだけ笑っていた。


「館さんも今はそれでいいと思います。 下手に意識し始めると、どこで墓穴を掘るかわかったものではありませんので。」

「そうだね。 あ、そうだ須今さ・・・ん!?」


 名前を呼んだ瞬間に須今さんがズイッと顔を近づける。 ふわりとなにか甘い香りが鼻をくすぐる。


「でも姉さんも味柑も名前呼びされていると考えると私だけ「須今さん」と呼ばれるのはなんだか癪に触ります。 なんていうか、疎外されてる感じで。」


 えぇ? じゃあ名前で呼んでと言うのか? まだ2週間しか経ってないのにそれはどうなんだろうか? うーん、でも・・・・・・


「・・・・・・分かったよ。 安見さん。 って呼べばいいのかな?」


 観念したように名前を呼んでみる。 女子の名前を呼ぶのはちょっと抵抗があるが、これで区別は付けれるだろう。


「・・・・・・はい。 それでよろしくお願いします。 館・君・。」

「っ!!」


 名字ではあるが「さん」から「君」になった。 そしてその言葉を発した安見さんの柔らかくも妖しげな笑顔に、心を奪われている自分がいた。


 からかわれているのではないのだろうが、それでも僕の瞳を奪うには十分すぎる優しげな笑顔だった。



「そんなわけで、大分クラスの方に馴染めた者もいれば、まだ馴染みきれてない人もいる。 そこで行われるのはクラス対抗、球技大会だ!」


 朝のHRから担任の先生が話したのは球技大会。 2つの球技にクラスが分かれてそれぞれの勝敗でポイントを決めて、優勝を目指すという新入生限定のイベントのようだ。 ちなみに選べるのはドッジボールとバレーボール。 バレーの12人を決めたら残りの全員はドッジボールに回る。 男女混合なため、大体は男女6人ずつバレーに入るのが通例だ。 例外もあるらしいけれど。


 さてここで重要になってくるのはどのような人材がバレーの方に行くかと言うことだ。 男子なら背が高い、女子なら運動能力が優れている人材が必要になってくる。


 僕は身体能力的にはあまり高くはない。 なのでドッジボールのほうに入ることになった。


「やっぱり僕らはこっちになったね。」

「まぁ、バレーなんてのはやれるやつにやらせておけばいいんだよ。」


 同じ様にハブられた感じで坂内君と小舞君が僕の机に集まる。


「とは言え僕らのドッジボールチームだってそれなりに話さないといけないんじゃない?」

「でもなぁ・・・・・・」


 そういってバレーチームの方を見た後に教室の全体をみる。 バレーチームの方は黒板を使って作戦を立てているが、ドッジボールチームはそもそもあまりやる気がないみんなが集まったような烏合の衆。 団結もなにもないのだ。


「そもそも男女が一緒になにか話し合う、なんてハードル高いだろ?」


 言われてみればそうだ。 普通ならなかなか話すのだって勇気がいることだろう。 実際に男女共にグループで作っているあちこちで、行けや行けやの押し合いだ。 あれでは会話も成り立つか分からない。


「と言うわけで館。 どこでもいいから女子のところに声かけてきてくれよ。」

「凄い投げ槍。 なんで僕?」

「だって、喋りなれてるだろ? 前だって女子となにか話してたじゃないか。」


 そんな理由で僕に託すのか。 声をかけなければなにも始まらないのは確かなので、僕は動き始めて、そして1つの女子グループに声をかける。


「安見さん。 少しいいかな?」

「おや、館君。 私たちに何か?」

「うん。 やる意味はあんまりないとは思うけれど、ドッジボールチームとしてちょっと話し合おうと思ってね。」

「そうですね。 なにか話し合っておくことに越したことはないですしね。」


 その言葉にホッと一息した。


「やったな館。」

「おおー、なんか意外なところからお声がかかったよ。」


 小舞君に呼応するように数人いた女子の1人が声をかけてきた。

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