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須今姉妹
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「ふぅ。 今日もここで休憩かな。」
休日のジョギングをして、前に休憩に使った公園でまた休みをとる。 この公園は家と学校の中間地点にあるので目印にしやすい。 ペース配分はまだ難しいけれど、それでも間隔は掴めてきた。
「これならゴールデンウィーク前には学校までのジョギングのメニューが完成しそうだ。」
そうは言ってはみるものの、今日はこの後に買い物に行かなければならない。 個人的な物だが、今の僕には必要なものだ。 妥協はしないつもりでいく。
「ワン! ワン!」
犬の鳴き声がしたので入り口の方を見ると、どうやら散歩中だったのだが、飼い主の手からリードが外れてしまったらしい。 あれでは捕まえるのは難しいだろう。 そう思っていたのだが、その犬はこちらに向かって走ってきていた。 そして僕が座っているベンチの前でお座りしはじめたのだ。
んん? よく見てみるとこの犬どこかで・・・・・・
「はぁ、はぁ。 もう急にどうしたのマルチ? 危ないでしょ? 走り出したら。」
そういって声をかける女性。 黒髪でポニーテールにしてあるのが目を引くが、何よりも驚いたのはその顔。
「須今さん・・・?」
そういわざるを得ないくらいにそっくりだったのだ。 いや、正確に言えば須今さんを少し大人びさせたような風貌をしていた。
「あら? なぜ私の名前を?」
「あ、すみません。 同級生に似ていたもので、つい。」
「同級生・・・ あ! じゃあ貴方が館君?」
「え? ええ。 はい。」
向こうも名前を呼ばれて驚いていたが、まさかこちらも名前で呼ばれるとは思ってもみなかった。 というかなんで知ってるんだ?
「初めまして。 私は須今 安見の姉の須今 音理亜すいま ねりあ。 貴方の事は、安見から聞いたわ。」
須今さん、話しちゃったんだ。 まあ僕の方も須今さんの事を話してるからどっこいどっこいだけれど。
「須今さんからどこまで聞いているかは分からないですが、僕は館 光輝といいます。 須今さんとは今、隣の席になっています。」
「ええ、聞いているわ。 それと呼び方は「音理亜」でいいわ。 「須今さん」だとややこしいでしょ?」
「そ、そうですか。 では音理亜さん。 今回は音理亜さんが散歩担当なんですか?」
「ええそうよ。 安見から聞いたのかしら?」
「まぁ、そんなところです。 あ、あの・・・そんなに近付かれなくても。」
話をしている間に音理亜さんは僕に顔を近付ける。 正直まだジョギング中なので、汗の臭いとかダイレクトに伝わってしまうので、少々気が引けるのだが・・・
「安見が夢中になる男子・・・かぁ。 なんだか納得出来たわ。」
「あの・・・」
「あの子、すぐに寝ちゃう癖があるんだけれど、これからもあの子の事を見てあげてね。 姉としても心配してる部分だし、誰かが見てくれている方がいいんだもの。」
そういって顔を離すともう一度、しっかりとした眼差しをした音理亜さんと目が合う。 その表情は妹を思いやる気持ちでいっぱいなんだろうなと伝わってきた。
「はい。 僕で良ければ。」
「ふふっ、むしろ貴方だから頼んでるのよ。」
「え?」
「そろそろ時間ね。 それじゃあね館君。 また近いうちに会えるわ。」
そういって音理亜さんは公園を後にした。 音理亜さんと別れてジョギングを再開させる。 その間も音理亜さんの言葉が反復される。 「僕だから頼んでいる。」 その言葉にはどんな意味が込められているのだろうか? 学校から家に帰るまでずっと考えていた。
朝のジョギングを終えて、お昼辺りまで学校の宿題をしたり、母さんとテレビを見たり、ゲームをしたりで過ごしていて、日もまだ高い位置にある時間に出かける事にした。
目的地は近くの100円均一のショップ。 ここで買うのはもちろん裁縫用具だ。 キットを買えば安いが、全部が全部補充する必要はないので、めぼしいものだけを歳出して手に取る。 白、黒、紺色の縫い糸に古くなってボロボロになってしまった針山。 後は錆が酷くなってきた糸切りばさみ。 それとこれから使う機会が増えると思われるまち針と言ったところだ。
それらを見つけて買い物かごに入れた後、適当にお菓子やら飲み物やらを買おうとお菓子コーナーに向かっていたとき。
「んもぅ。 お姉はついでの頼み方が雑いよぉ。 お姉の好みって分かりにくいから選ぶのに苦労するの分かってるんだから、せめて今日の気分くらい教えてくれたっていいじゃんかぁ。」
そんな文句を垂れながらもお菓子選びに必死になっている少女。 黒髪でショートカットしているを横目に自分もお菓子を選ぶ。 チラリとその横顔を見てみると、今朝と同じようにどことなく須今さんに似ていると思った。 今朝の音理亜さんが大人になった須今さんだったが、今いるのは逆に少し幼くなったような雰囲気を出している。
「ん? なに? あたしの顔になにかついてる?」
「あぁごめん。 あまりにも似ていたからさ。 姉妹なんだろうなぁって。」
「姉さんとお姉に会ったことがあるの?」
「んー、どっちの事を言ってるのか分からないけれど、君は須今さんの妹なんだなって思ってるよ。 顔立ちがね。」
「あ、じゃあお姉が言っていた人だ! 本当に男の人だ。」
どこをどう見たら僕を女と勘違い出来ようか? 深く考えてもしょうがない。
「あたしは須今 味柑すいま みかん 中学1年生よ。」
「初めまして。 館 光輝と言います。 よろしくね、須今さんの妹さん。」
最初から下で呼ぶのはどうかと思ったので、とりあえずは妹という肩書きを利用させてもらった。
「絵にかいたような優男。 お姉こんな人が好きなのかな? でもこれくらいじゃないとお姉は見てくれないか。」
「?」
「こっちの話。 そうだ! ねぇお兄さん。 これからお姉にお菓子を買っていきたいんだけど、どれがいいと思う?」
品定めされるような目をされたと思ったら今度はこちらに注文された。 須今さんが食べたいお菓子を選べって? 無理難題もいいところだ。
「うーん。 僕だって須今さんの好みなんて分からないよ。」
「じゃあお兄さんがそれっぽいって思ったのでいいから。 あとあたしも須今だから今はやめて。 あたしの事は味柑でいいから、名前で呼んで。」
「ええっとじゃあ・・・安見さんが食べたいもの・・・か。」
急に名前呼びをすると気恥ずかしくなる。 そうは言うものの、選んだのはウェハース。 横に長く、真四角に作られたタイプが袋に入っているやつだ 味は塩レモン味だった。
「選んだけれど、文句は受け付けないよ?」
「別にいいのよ、お姉はそういうところはずぼらだから。 とにかくありがとう。」
そういってレジの方に向かっていった味柑さん。 自分も買い物を終えたのでそのままレジへと向かう。
あ、自分の分のお菓子、買ってないや。 そう思い、レジに行く前に先程のお菓子コーナーに戻った。
休日のジョギングをして、前に休憩に使った公園でまた休みをとる。 この公園は家と学校の中間地点にあるので目印にしやすい。 ペース配分はまだ難しいけれど、それでも間隔は掴めてきた。
「これならゴールデンウィーク前には学校までのジョギングのメニューが完成しそうだ。」
そうは言ってはみるものの、今日はこの後に買い物に行かなければならない。 個人的な物だが、今の僕には必要なものだ。 妥協はしないつもりでいく。
「ワン! ワン!」
犬の鳴き声がしたので入り口の方を見ると、どうやら散歩中だったのだが、飼い主の手からリードが外れてしまったらしい。 あれでは捕まえるのは難しいだろう。 そう思っていたのだが、その犬はこちらに向かって走ってきていた。 そして僕が座っているベンチの前でお座りしはじめたのだ。
んん? よく見てみるとこの犬どこかで・・・・・・
「はぁ、はぁ。 もう急にどうしたのマルチ? 危ないでしょ? 走り出したら。」
そういって声をかける女性。 黒髪でポニーテールにしてあるのが目を引くが、何よりも驚いたのはその顔。
「須今さん・・・?」
そういわざるを得ないくらいにそっくりだったのだ。 いや、正確に言えば須今さんを少し大人びさせたような風貌をしていた。
「あら? なぜ私の名前を?」
「あ、すみません。 同級生に似ていたもので、つい。」
「同級生・・・ あ! じゃあ貴方が館君?」
「え? ええ。 はい。」
向こうも名前を呼ばれて驚いていたが、まさかこちらも名前で呼ばれるとは思ってもみなかった。 というかなんで知ってるんだ?
「初めまして。 私は須今 安見の姉の須今 音理亜すいま ねりあ。 貴方の事は、安見から聞いたわ。」
須今さん、話しちゃったんだ。 まあ僕の方も須今さんの事を話してるからどっこいどっこいだけれど。
「須今さんからどこまで聞いているかは分からないですが、僕は館 光輝といいます。 須今さんとは今、隣の席になっています。」
「ええ、聞いているわ。 それと呼び方は「音理亜」でいいわ。 「須今さん」だとややこしいでしょ?」
「そ、そうですか。 では音理亜さん。 今回は音理亜さんが散歩担当なんですか?」
「ええそうよ。 安見から聞いたのかしら?」
「まぁ、そんなところです。 あ、あの・・・そんなに近付かれなくても。」
話をしている間に音理亜さんは僕に顔を近付ける。 正直まだジョギング中なので、汗の臭いとかダイレクトに伝わってしまうので、少々気が引けるのだが・・・
「安見が夢中になる男子・・・かぁ。 なんだか納得出来たわ。」
「あの・・・」
「あの子、すぐに寝ちゃう癖があるんだけれど、これからもあの子の事を見てあげてね。 姉としても心配してる部分だし、誰かが見てくれている方がいいんだもの。」
そういって顔を離すともう一度、しっかりとした眼差しをした音理亜さんと目が合う。 その表情は妹を思いやる気持ちでいっぱいなんだろうなと伝わってきた。
「はい。 僕で良ければ。」
「ふふっ、むしろ貴方だから頼んでるのよ。」
「え?」
「そろそろ時間ね。 それじゃあね館君。 また近いうちに会えるわ。」
そういって音理亜さんは公園を後にした。 音理亜さんと別れてジョギングを再開させる。 その間も音理亜さんの言葉が反復される。 「僕だから頼んでいる。」 その言葉にはどんな意味が込められているのだろうか? 学校から家に帰るまでずっと考えていた。
朝のジョギングを終えて、お昼辺りまで学校の宿題をしたり、母さんとテレビを見たり、ゲームをしたりで過ごしていて、日もまだ高い位置にある時間に出かける事にした。
目的地は近くの100円均一のショップ。 ここで買うのはもちろん裁縫用具だ。 キットを買えば安いが、全部が全部補充する必要はないので、めぼしいものだけを歳出して手に取る。 白、黒、紺色の縫い糸に古くなってボロボロになってしまった針山。 後は錆が酷くなってきた糸切りばさみ。 それとこれから使う機会が増えると思われるまち針と言ったところだ。
それらを見つけて買い物かごに入れた後、適当にお菓子やら飲み物やらを買おうとお菓子コーナーに向かっていたとき。
「んもぅ。 お姉はついでの頼み方が雑いよぉ。 お姉の好みって分かりにくいから選ぶのに苦労するの分かってるんだから、せめて今日の気分くらい教えてくれたっていいじゃんかぁ。」
そんな文句を垂れながらもお菓子選びに必死になっている少女。 黒髪でショートカットしているを横目に自分もお菓子を選ぶ。 チラリとその横顔を見てみると、今朝と同じようにどことなく須今さんに似ていると思った。 今朝の音理亜さんが大人になった須今さんだったが、今いるのは逆に少し幼くなったような雰囲気を出している。
「ん? なに? あたしの顔になにかついてる?」
「あぁごめん。 あまりにも似ていたからさ。 姉妹なんだろうなぁって。」
「姉さんとお姉に会ったことがあるの?」
「んー、どっちの事を言ってるのか分からないけれど、君は須今さんの妹なんだなって思ってるよ。 顔立ちがね。」
「あ、じゃあお姉が言っていた人だ! 本当に男の人だ。」
どこをどう見たら僕を女と勘違い出来ようか? 深く考えてもしょうがない。
「あたしは須今 味柑すいま みかん 中学1年生よ。」
「初めまして。 館 光輝と言います。 よろしくね、須今さんの妹さん。」
最初から下で呼ぶのはどうかと思ったので、とりあえずは妹という肩書きを利用させてもらった。
「絵にかいたような優男。 お姉こんな人が好きなのかな? でもこれくらいじゃないとお姉は見てくれないか。」
「?」
「こっちの話。 そうだ! ねぇお兄さん。 これからお姉にお菓子を買っていきたいんだけど、どれがいいと思う?」
品定めされるような目をされたと思ったら今度はこちらに注文された。 須今さんが食べたいお菓子を選べって? 無理難題もいいところだ。
「うーん。 僕だって須今さんの好みなんて分からないよ。」
「じゃあお兄さんがそれっぽいって思ったのでいいから。 あとあたしも須今だから今はやめて。 あたしの事は味柑でいいから、名前で呼んで。」
「ええっとじゃあ・・・安見さんが食べたいもの・・・か。」
急に名前呼びをすると気恥ずかしくなる。 そうは言うものの、選んだのはウェハース。 横に長く、真四角に作られたタイプが袋に入っているやつだ 味は塩レモン味だった。
「選んだけれど、文句は受け付けないよ?」
「別にいいのよ、お姉はそういうところはずぼらだから。 とにかくありがとう。」
そういってレジの方に向かっていった味柑さん。 自分も買い物を終えたのでそのままレジへと向かう。
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