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館 光輝は人気者

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「ねぇ、館君・・・その・・・お願いがあるんだけど・・・」


 ある日の授業の合間の休み。 1人の女子生徒が僕の席に来た。 同じクラスメイトの女子だ。 まだ新入生になって半月も経っていないが、こうして普通に話しかけたり話しかけられたりはみんな出来るようになっていた。


「お願いってなんだい?」


 そんな彼女のお願いを無下にしないようにと、聞いてみる。 僕にだって出来ないことはある。 だからまずは相談をしてみることにした。


「実は・・・これのことで・・・」

「ん? あぁ、なるほど。 それぐらいならお安いご用だ。」

「ありがとう。 えぇっと、やり易いようにした方が・・・いい・・・よね。」

「そうだね。 そのままよりは危なくないし。」


 彼女の身を考慮した上での判断だ。 傷つける可能性は否定できない。


「それじゃあ・・・脱ぐ・・・ね。」


 そう言って彼女はおもむろにボタンを外し始めた・・・・・・



「はい。 直しておいたよ。 後、ここもついでに直しておいたから。」

「ほんとにありがとう! 私あんまりこういうの出来ないから、自分で直すことが出来なくって。 あ、それと、はいこれ。」


 そう言って渡してきたのは「牛乳」と書かれた紙パックだ。 そこそこ大きめのタイプで飲み応えのあるやつだ。


「これは?」

「直してくれたお礼。 貰って。」

「ありがとう。 これぐらいならまた言ってくれれば何時でも直すから。」

「うん!」


 そう言って僕の席から離れていく彼女。



 僕が先ほどまで行っていたのは、ブレザーの解れたボタンを留め直しをしていた。 彼女は僕が手芸が得意という事で、お願いをしてきたのだそうだ。 ついでに肩のところに糸が見えていたので、解れる可能性があった部分として直してもおいた。 まだササッとは出来ないが間休みを使えば出来ない作業ではない。


「あれ? 次の授業ってなんだったっけ?」


 先ほどまでブレザーのボタンを縫っていたので次の内容がすっとんでしまった。 今日ってなに持ってきてたっけ?


「次の授業は科学ですよ。 館さん。」


 その声の主の須今さんが隣から教えてくれた。 前の授業では寝ていたので、次の授業は起きていられるだろう。


「ありがとう須今さん・・・・・・って、なんでそんなに不機嫌そうなの?」

「寝起きなので、気分があまり優れないのです。」


 声までぶつくさになっているが、今までそんなことなかったよね? 今日の須今さんも読めない人だと思いながらも次の科学の教科書とノートを出して、次に備えた。



「はぁ。 今日の科学は覚えること多かったなぁ。 これが次の中間のテストに出ると思うと、気が抜けないなぁ。」

「ノートはしっかり取れてるので大丈夫だと思いますよ。 それに決められた範囲を越えるような問題は滅多に出ないと思いますし・・・ふぁぁ。」

「また眠たそうだね。 次の授業、起きてられる?」

「いえ、多分ダメそうです。 すみません。 またノートの方、お願いいたします。」


 そう言って早速眠ってしまう須今さん。 この光景にも慣れたもので、須今さんが寝てしまった授業の内容は僕が代わりにノートを取って、次の休み時間に須今さんが写しているという現状だ。 あんまり字は綺麗な方ではないので、読みにくくないか少々不安だし、今は後ろだからいいようなものの、席替えをしたときに前の方に行ってしまっては、すぐに目に留まるだろう。 それは避けておきたいがそうなってしまってはどうしようもない。 須今さん自身でどうにかしてもらうしかない。 そう心に誓っている。


「さてと、次の授業はっと・・・」


 次の授業の為に鞄から机の中から教材を出し終えた時、


「えっと・・・館・・・さん。」


 名前を呼ばれたので顔をあげると、このクラスのマドンナ(強制)である円藤 加奈実さんだった。 何故彼女が目の前に?


「円藤さん。 どうしたの?」

「えと、その・・・」


 元々引っ込み思案な性格なのか先程からなにかを言い出そうとしては思い止まっている。 よくよく見てみると顔も赤い。


「ま、前の休み時間の時に、千枝ちゃんの、ブレザーのボタンを、直してた、よね。」

「あ、うん。 直してたけれど・・・?」


 先程の事を言っているのだろうか? 先程の女子の名前は野々川 千枝ののかわ ちえ。 名前呼びしていると言うことは友人なんだろう。


「そ、それって、私でも、やってくれる、のかな?」


 もじもじしながらそんな風に言ってくる。 質問の意図はあまり理解出来ないが出来ないような事ではないなら頼み事になるので、出来るということになる。


「うん。 出来るけど・・・」


 そう答えると、円藤さんはホッとしたような表情になる。 別に差別をする予定は無いのでそう言えるのだが・・・


「それで直してほしいものはなに?」

「あ、そ、それは・・・その・・・」


 そう言ってまたもじもじしてしまった。 なんというか忙しい人だなと思った。 そして意を決したような表情になったかと思ったらおもむろにスカートに手を伸ばして、チャック部分をもって、そしてチャックを下ろして・・・


「って! 待って待って! 円藤さん!?」


 何気なくぼうっと見ていたが、今行われているのは先程以上に過激な事だった。 そんな僕の制止に耳を傾けず、円藤さんはスカートを下ろして、脱いだスカートを僕に渡してくる。 よくよく見てみるとそのスカートの端の部分の一部が裂けていた。


 そしてそんな円藤さんはというとハーフパンツを履いていたらしく、そのまま目の前に立っていた。 机の高さと彼女の腰周りの位置が相まって、なんだか危ない感じがする。


「えっと、その・・・トイレに行っているときに、何故かスカートの後ろが、裂けていたんです・・・ どうしようかと思っていたときに・・・千枝ちゃんがブレザーを受け取っていたので、それで直せるのかなと思って・・・め、迷惑ならお返ししていただいて結構ですので!」

「いや、いいよ。 スカートの裂け目は直すよ。 だけど裂け目が少し大きいし、僕の持ってる糸もそろそろ切れそうなんだ。 今はちょっと出来ないから次のお昼休みまで待って貰えないかな? 時間がかかりそうだからさ。」


 直せないわけではないのだが、残りの休み時間を考えると足りないのだ。 だから時間を目一杯使える昼休みにやろうと思ったのだ。


「わ、分かりました。 それでは、また、お昼休みに、お願いします。」

「それと目の前でスカートを脱がれると心臓に悪いから、次は、その。 ちゃんと準備してから来てくれると・・・」


 そう言った後に、円藤さんの方を見ると、先程よりも顔を赤く染めて、スカートを履き直した。 それもある意味心臓に悪いからやめて欲しいのだが・・・


 そして円藤さんは自分の席に戻っていった。 なんというか。 円藤さんはおとなしい感じの割には大胆な行動をするんだなという、印象になってしまった。

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