須今 安見は常に眠たげ

風祭 風利

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部活動について

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僕の通っている学校にも部活動はある。 運動部はもちろんの事、文化部だってそれなりに多種多様に揃っていた。


 部活動紹介の時はあまり気にはなっていなかったが、改めて部活動の事が書かれたパンフレットを見て、いくつか興味のある部活動があった。


「館君はどこに行こうか決めたのかい?」


 一緒に見ていた坂内君がそう僕に質問をする。 部活動の本入部はゴールデンウィーク明けとなっていて、その間は部活動の様子を放課後の時間見学を出来るようになっている。 だからみんなまずは部活の雰囲気をみてから、仮入部という形を取ることが多い。


「僕はもういくつか候補があるよ。 坂内君は?」

「私か? 私はな。 演劇部に行こうと思っているのだよ!」


 演劇部。 これはまた大胆な所に行こうとしてるのね。


「理由を聞いてもいいのかな?」

「元々舞台劇が好きなんだ。 で、いつか自分もステージに立つ人達のように人を魅了出来るようになりたいと思っていたんだ。 君は知らないかもしれないが、中学の時にも小規模のサークルだったが演劇を主にしている部活もあったんだ。」


 へぇ、それは知らなかったな。 同じ学校出身なのに、こうして話してみるとお互いに知らなかった事実が聞けたりして面白かったりする。


「僕はここ。 家庭科部にしようかと思ってるんだ。」

「手芸を極めるのかい?」

「今の僕の手芸のレベルはまだ服にアップリケをつけたりフェルトを作ったりするくらいのものだよ。」

「それでも十分だと思うんだけど?」


 そうかな? まだまだレベルはあげれると思うんだよね。


「最終的には編みぐるみ位は作れるようになりたいんだ。」

「君は保育士にでもなるのかい?」


 そういう道を進むのも考えてみようかな? でも保育士って子供が好きじゃないと難しいんじゃないかな? 多分そんなことないとは思うけど。


「今日の放課後から行く予定かい?」

「うん。 色々と見て回るとは言ったけれど、入る部活は決まってるから。」


 これから放課後が楽しみでしょうがなくなっている。 どんな部活の雰囲気なのか、ワクワクしていたりするんだ。 そんな表情を見せると、坂内君も楽しそうにしてくれた。


 授業も終わり、放課後になった。 早速と言わんばかりに帰りの準備の入った鞄を肩にかけて、移動を開始する。


 家庭科部の拠点は僕らが習っている教室とは別の校舎にある。 僕らが習っている教室などがあるのが「学校舎」、部活動で使うような教室が多いのが「部校舎」と呼ばれている。 基本的に部校舎は普段は使われることはないのだが、部活か特別授業の時はその校舎が使用可能となる、


 そしてそのなかで家庭科部は1階部分の2教室を丸々使用している。 とは言えこれでも狭い方で、もっと広いと柔道場と剣道場が一緒に入っている階もある。 凄い財力だとも思う。


 僕は部校舎に着いて1階の左側の教室に足を運び、ドアをノックする。 「裁縫室」と書かれた教室のドアが開かれた。


「いらっしゃい。 家庭科部を見学しに来たのかな?」


 開けてくれたのは癖っ毛が強く、背が自分と同じくらいの男子生徒だった。 見た目からしてもかなり爽やかさを浴びることが出来る。


「は、はい。 そうです。 1年2組の館 光輝と言います。」

「館君だね。 僕は3年の庭木島 雅孝にきじま まさたか。 こっち側に来たってことは、君は裁縫関係希望かな?」

「はい!」

「そっか! 去年は男子も料理関係の方に行っちゃうことが多かったから女子の方が割合を占めるここは心細くなっちゃうんだよね。 今日は作業風景を見ていってくれないかい? なんだったら道具を貸すからなにかひとつ作ってみてもいいよ。」

「ありがとうございます。 では失礼を・・・」


 しますと言おうとしたときにふと後ろに見えた人物を見逃さなかった。


「すみません。 少し待ってもらえますか?」

「うん? あぁ構わないよ。」


 庭木島さんに一度頭を下げて、もうひとつの教室、「調理室」に入ろうとしていた女子生徒、須今さんに声をかけた。


「須今さんも家庭科部志望なの?」

「どうも館さん。 私館さんは陸上の方に行くのかと思ったのですが。」

「それは別の日に行くけど、僕の第一志望はこっち。 部活まで隣とはねぇ。」

「なにかの因果でしょうか?」


 因果って人聞きが悪いなぁ。 でも放課後までほとんど一緒となるとなにか感じるものは無くはない。


 調理室の方から芳しい香りがしてきた。 どうやらなにかを作っているようだ。 放課後のこれは悪魔的な誘惑でしょ。


「そう言えば料理が趣味だったっけ。」

「ええ、この部活で腕を上げたいと思っているのです。」

「考えてることまでほとんど一緒だ。 むしろ笑っちゃうかも。」

「そうですねぇ。 ふふ、好きなことを伸ばしたいという思いまで一緒なんて。 私たち本当に気が合うのですね。」

「僕はそんな簡単に眠くなったりしないよ?」

「そんなに私が寝ているのが印象に残ってるんですか?」


 そりゃあね。 授業の1回は必ず寝てる人の隣にいるんだもん。 そっちの方が印象に残るって。


 そんな風に頷いていると、須今さんが頬を膨らませてこちらを見ていた。 あ、可愛い。


「むぅ、そんな人にはここで作ったお菓子を分けてあげません。」


 そういってプイッとそっぽを向いてしまう。 こうして見ると容姿こそ大人っぽい感じがするが、寝ている姿やああして拗ねる姿はどちらかと言えば子供に近い。 そんなギャップ萌えでも目指しているかのような須今さんに心が本当に暖かくなってくる。


「ごめん。 でもまだ須今さんのご飯を食べたことが無いからなんとも言えないんだけれど。」

「だからお昼に食べ比べしようと言ったのに。」

「ごめんって。 じゃあ明日ならどうかな? 僕も作ってくるから。」

「約束ですよ? それでは私は見学してきます。」


 そういって彼女は今度こそ調理室のドアを開くのだった。 僕も裁縫室に戻ろうかな。


 裁縫室を開けた途端に目に飛び込んだのは、黙々となにかを編みながらもなにかヒソヒソと話し合っている先輩達の姿だった。 何故だろうかそれが異様な光景に見えるのは気のせいではないはずだ。


「彼らは決定でしょうか?」

「いやいや、まだ決めるのは早い。 でも時間の問題ではあるね。」

「やっぱり家庭科部の成立の高さは異常よね。」


 なんて言葉が聞こえてきたような気がしたがあまり気にせずに近くにあった布を持って僕も作業を始める事にした。

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