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男子限定投票
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「はい、これ館の分。」
授業が早く切り上がり、お昼の時間になろうかといったところで小舞君から1枚の紙を渡される。 それは表も裏も完全に白紙だった。
「なにこれ?」
「このクラスで誰が一番可愛いか投票するんだってさ。 ちなみにこの教室の男子は強制参加で、必ず誰か女子一人を書くことだってさ。」
「誰がそんなことを?」
そう質問すると小舞君は自分の後ろの方を指差す。 その先には一つの男子グループがあった。 見た目だけで言えば関わりあいになるのは気が引けるようなメンバーだ。
「でもなんでこんなことを?」
「さあね。 ま、見た目で選んでいいんじゃない? 匿名で投票するから、気にはならないし。 選ばれなかった子はちょっと可哀想だけど。」
そういって自分の席に戻る小舞君。
なんだか面倒だなぁ・・・・・・ こんなのを書いてどうするんだろう? どうせ1年は嫌でも一緒にいるのにこんなのをやったら差別みたいになるんじゃないのかな?
うーん。 匿名とはいえなぁ・・・・・・誰を書くかなぁ・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・
「はい。 書いたよ。」
「おう、サンキューな。」
悩んで数分後、僕は今回の主催者である、とんがり頭の矢藤 竜やとう りゅう君に渡す。 サッと渡してすぐに自分の席に戻る。
「館ももう書いたのか。」
席に戻った筈の小舞君がこちら側に歩み寄ってきた。
「僕もって事は小舞君も?」
「あぁ。 俺も決まってたしな。 それにしても意外だったぜ。 もう館も決まっていたとはな。」
別に決まっていたとかそんなのではないのだが、正直無意味なものに巻き込まれたなとしか思ってない。
「ところで誰に入れたんだ?」
「言ったら匿名にならないでしょ。」
「そりゃそうか。 わりぃ。」
こういう物分かりがいいのが小舞君のいいところである。
「さてと、全員分揃ったところで・・・誰が一番多いかなぁ。」
後ろで矢藤君がそんなことをぼやく。 ごめん小舞君。 どうやら僕らの匿名はあんまり意味が無いみたいだ。
「さーてさて? どうなってるかなぁ? うんうん。 うんうん。 やっぱりそうだよなぁ。 良くわかってらっしゃる。」
独り言のように矢藤君は頷いているが、それに同調するかのように周りにいる男子も頷く。 ああやって見ても端からしたら不良集団のように見えても仕方がないような気もする。 みんな変に尖ってるし。
「クラスの半数以上集まった! この「円藤 加奈実えんどう かなみ」さんに! 決定!」
そういって矢藤くんが手のひらを示す先、ロングのポニーテールが特徴で、丸顔やくりっとした目がどこか小動物感を与える彼女が円藤 加奈実さんだ。 そしてそんな彼女のもとへ矢藤君が向かい、1つの指輪の様なものを彼女の指にはめた。
「これがあなたがうちのクラスのマドンナだと言う証です。 是非お納めください。」
そのやりとりはどことなくプロポーズにも取れるのだが、円藤さんは困ったような笑い顔をしていた。 素直に嬉しいと喜べないような表情だと感じた。
「最初からあれが目的だったな?」
「え?」
そのやり取りを一緒に見ていた小舞君がそう口にした、
「多分だけどあの円藤って子に入れた奴はあいつの周りにいる奴等だぜ。 ありゃサクラだな。」
「サクラ?」
「隠語の一種で、まあ簡単に言えば盛り上げるための仕掛人みたいなもんだ。 あれを見てみろ。」
そういって小舞君が指差す方向、矢藤君が先程まで票を確認していた場所だ。 右と左で紙の束がそれぞれ高さの違う山になって分かれている。
「おそらくあっちの乱雑の山が円藤以外に入れた男子の紙だ。 ああ置いてあるってことは円藤以外にはあまり興味がないんだろう。 そんなんで仲良くなろうとすんなっての。」
確かにあれでは書こうが書かまいが結果は変わらなかったかもしれない。 なんか心配して損した。
そんな風に思いながら円藤さんの方を見る。 後ろにいる女子友達は少し盛り上がっているが、当の本人は困惑しきったままである。 そりゃいきなりマドンナとか言われても困るし、ぶっちゃけ迷惑なのかもしれない。
そんな彼女の事を見ていたら彼女もこちらに気付いたのか目があった。 彼女はまだ困ったような顔をしていたので、僕も「困ったものだね」と言った感じの含み笑いで返した。 あまり意図してない事なだけにどうすればいいのかよく分からなかったからだ。
そんなことをしていたら、お昼時間のチャイムが鳴った。 授業が終わってからずっと熟睡状態だった須今さんも起きて、お昼の準備をする。
「起きた後すぐに食べて大丈夫?」
「心配いりませんよ。 体内時計は狂っていないので。」
「そういうことを聞きたい訳じゃなくて・・・・・・」
まあ別に彼女の体の事だしこっちがとやかく言ってもしょうがないよなぁ。
「おーい、館。 坂内連れて飯行こうぜ。 丁度いい昼食スポット見つけてよぉ。 そこで食わね?」
「うん。 すぐいくよ。」
そういって鞄の中にあったお弁当箱を取り出して席を立つ。
「残念です。 お弁当の食べ比べしようと思っていたのに。」
「その話本気だったの? 今日は自分で作ってないから無意味だよ。 須今さんも僕の事は気にしないで、女子同士で食べなよ。」
「名残惜しいですがそうさせてもらいます。 そちらもどうぞ楽しんできてください。」
お互いにそんなやり取りを行って小舞君の方に向かう。 そして一緒に教室を出ようとしたときに、ふと視線を感じたのでそちらの方を向くと再度円藤さんと目があった。 ほんの数秒の事だったが、彼女の俺を見る瞳がどこか興味を持っているような目をしていたのは見間違いだろうか? あまり人の感情を探るような事はしたくないので、そのまま小舞君と坂内君と一緒に教室を出た。
授業が早く切り上がり、お昼の時間になろうかといったところで小舞君から1枚の紙を渡される。 それは表も裏も完全に白紙だった。
「なにこれ?」
「このクラスで誰が一番可愛いか投票するんだってさ。 ちなみにこの教室の男子は強制参加で、必ず誰か女子一人を書くことだってさ。」
「誰がそんなことを?」
そう質問すると小舞君は自分の後ろの方を指差す。 その先には一つの男子グループがあった。 見た目だけで言えば関わりあいになるのは気が引けるようなメンバーだ。
「でもなんでこんなことを?」
「さあね。 ま、見た目で選んでいいんじゃない? 匿名で投票するから、気にはならないし。 選ばれなかった子はちょっと可哀想だけど。」
そういって自分の席に戻る小舞君。
なんだか面倒だなぁ・・・・・・ こんなのを書いてどうするんだろう? どうせ1年は嫌でも一緒にいるのにこんなのをやったら差別みたいになるんじゃないのかな?
うーん。 匿名とはいえなぁ・・・・・・誰を書くかなぁ・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・
「はい。 書いたよ。」
「おう、サンキューな。」
悩んで数分後、僕は今回の主催者である、とんがり頭の矢藤 竜やとう りゅう君に渡す。 サッと渡してすぐに自分の席に戻る。
「館ももう書いたのか。」
席に戻った筈の小舞君がこちら側に歩み寄ってきた。
「僕もって事は小舞君も?」
「あぁ。 俺も決まってたしな。 それにしても意外だったぜ。 もう館も決まっていたとはな。」
別に決まっていたとかそんなのではないのだが、正直無意味なものに巻き込まれたなとしか思ってない。
「ところで誰に入れたんだ?」
「言ったら匿名にならないでしょ。」
「そりゃそうか。 わりぃ。」
こういう物分かりがいいのが小舞君のいいところである。
「さてと、全員分揃ったところで・・・誰が一番多いかなぁ。」
後ろで矢藤君がそんなことをぼやく。 ごめん小舞君。 どうやら僕らの匿名はあんまり意味が無いみたいだ。
「さーてさて? どうなってるかなぁ? うんうん。 うんうん。 やっぱりそうだよなぁ。 良くわかってらっしゃる。」
独り言のように矢藤君は頷いているが、それに同調するかのように周りにいる男子も頷く。 ああやって見ても端からしたら不良集団のように見えても仕方がないような気もする。 みんな変に尖ってるし。
「クラスの半数以上集まった! この「円藤 加奈実えんどう かなみ」さんに! 決定!」
そういって矢藤くんが手のひらを示す先、ロングのポニーテールが特徴で、丸顔やくりっとした目がどこか小動物感を与える彼女が円藤 加奈実さんだ。 そしてそんな彼女のもとへ矢藤君が向かい、1つの指輪の様なものを彼女の指にはめた。
「これがあなたがうちのクラスのマドンナだと言う証です。 是非お納めください。」
そのやりとりはどことなくプロポーズにも取れるのだが、円藤さんは困ったような笑い顔をしていた。 素直に嬉しいと喜べないような表情だと感じた。
「最初からあれが目的だったな?」
「え?」
そのやり取りを一緒に見ていた小舞君がそう口にした、
「多分だけどあの円藤って子に入れた奴はあいつの周りにいる奴等だぜ。 ありゃサクラだな。」
「サクラ?」
「隠語の一種で、まあ簡単に言えば盛り上げるための仕掛人みたいなもんだ。 あれを見てみろ。」
そういって小舞君が指差す方向、矢藤君が先程まで票を確認していた場所だ。 右と左で紙の束がそれぞれ高さの違う山になって分かれている。
「おそらくあっちの乱雑の山が円藤以外に入れた男子の紙だ。 ああ置いてあるってことは円藤以外にはあまり興味がないんだろう。 そんなんで仲良くなろうとすんなっての。」
確かにあれでは書こうが書かまいが結果は変わらなかったかもしれない。 なんか心配して損した。
そんな風に思いながら円藤さんの方を見る。 後ろにいる女子友達は少し盛り上がっているが、当の本人は困惑しきったままである。 そりゃいきなりマドンナとか言われても困るし、ぶっちゃけ迷惑なのかもしれない。
そんな彼女の事を見ていたら彼女もこちらに気付いたのか目があった。 彼女はまだ困ったような顔をしていたので、僕も「困ったものだね」と言った感じの含み笑いで返した。 あまり意図してない事なだけにどうすればいいのかよく分からなかったからだ。
そんなことをしていたら、お昼時間のチャイムが鳴った。 授業が終わってからずっと熟睡状態だった須今さんも起きて、お昼の準備をする。
「起きた後すぐに食べて大丈夫?」
「心配いりませんよ。 体内時計は狂っていないので。」
「そういうことを聞きたい訳じゃなくて・・・・・・」
まあ別に彼女の体の事だしこっちがとやかく言ってもしょうがないよなぁ。
「おーい、館。 坂内連れて飯行こうぜ。 丁度いい昼食スポット見つけてよぉ。 そこで食わね?」
「うん。 すぐいくよ。」
そういって鞄の中にあったお弁当箱を取り出して席を立つ。
「残念です。 お弁当の食べ比べしようと思っていたのに。」
「その話本気だったの? 今日は自分で作ってないから無意味だよ。 須今さんも僕の事は気にしないで、女子同士で食べなよ。」
「名残惜しいですがそうさせてもらいます。 そちらもどうぞ楽しんできてください。」
お互いにそんなやり取りを行って小舞君の方に向かう。 そして一緒に教室を出ようとしたときに、ふと視線を感じたのでそちらの方を向くと再度円藤さんと目があった。 ほんの数秒の事だったが、彼女の俺を見る瞳がどこか興味を持っているような目をしていたのは見間違いだろうか? あまり人の感情を探るような事はしたくないので、そのまま小舞君と坂内君と一緒に教室を出た。
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