須今 安見は常に眠たげ

風祭 風利

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それぞれの友達

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「館君。 さっきの授業の事なんだけど、先程の発言は私個人としての意見なんだが、君はどう読み取る?」

「僕はやっぱりただ待っているだけって感じには見えなかったな。 具体的に言えば、その人が自分にとっては一番大切な物とも捉えられるし、でも失くしてしまった自分への責任?みたいなのも感じ取れたよ。」


 新しい生活も1週間ほどが経ち、みんな慣れてきたようで、教室のあちこちでグループを作ってこういったお喋りが増えてきた。


「んー。 そう捉えるか。 俺はそいつはかなり薄情だと思ってるで? だってそうだろ? 自分で失くしておいて戻ってくるのは向こうからって、どう考えたっておかしいんじゃないのか?」


 僕と坂内君と共に話しているのは小舞 勲こまい いさむ君だ。 茶髪の天然パーマで、縁なしメガネが印象的だ。 話口調はかなりラフで、それがちょっとしたギャップになっている。 使い方が間違ってる? 気分の問題だよ。


 ちなみに彼の趣味は「ボトルシップ」らしく、僕の事は「手芸=手先が器用」と言うことで、ボトルシップの辛さと楽しさを手芸の僕と共感が持てたようで、同じように僕も手芸の辛さと楽しさを教えたら、仲良くなれた。


「んー。 やっぱり人が違えば物の見方も変わるというものか。」

「現国は数学や理科みたいな、決められた答えがあまりないからなぁ。 その分難しいっておもうんだよなぁ。」

「小舞君、漢字の読み書き、辛そうだったもんね。」

「読み仮名が分からんぐらいで日本人止めれるかってんだ。 あの程度の間違いくらい見逃してくれたっていいじゃんか。 な?」


 そう同意を求められても僕と坂内君はどう返したものかと困ったものになってしまう。


 今は授業と授業の合間の休み時間。 僕がこうして話している間は隣には須今さんはいない。 その須今さんは今は前の席で他の女子達と談笑を楽しんでいる。

 とはいえ先週は休み時間になったら寝ていたはずなのに、ああして友人のところに行くのには何も問題は無さそうに見える。


「館君? 館君?」


 坂内君に名前を呼ばれていたことに気がつかずにすぐに我に返り、すぐに意識を坂内君に戻す。


「ご、ごめん。 えっと、なんの話だったかな?」

「なにも話してないぜ。 それよりも気になってな。」


 なにか気になるような事があったっけ? うーんと手を顎に当てながら考えて、チラリと須今さんの方を見る。 今の彼女はいつも寝ているようなものではなく、とても楽しそうに会話をしている。


「それだよ、それ。」

「それ?」

「こっちで話をしているのにあっちを見てさ。 どうしたん?」


 どうやら小舞君は僕の目線が別のところにあったのを気になったようだ。


「向こうの女子に目線が言っていたよね。」

「まあ言いたいことは分からないでもないがな。 高校生になって、そっちに気になっちゃうよなぁ。」


 なんだか勘違いをされているような気がしたので、弁解をしようと口を開こうと思ったとき、


「それで? 気になる女子とかいるのか?」


 小舞君にあっさりと話題にされてしまった。 坂内君も小舞君も僕と同じように彼女たちの会話をしている様子を伺っている。


「そういえばここで会話しているのって、女子のなかだとあのグループだけのようだね。」

「言われてみればそうだね。 他の女子たちはどうしたんだろ?」

「その辺りで実は会話しているのかもな。 女子って意外と男子以上にところ構わずにお喋りしているからなぁ。」


 そんな女子を悪く言わなくてもいいんじゃないかな? 良く分かんないからなんとも言えないけれど。

「今あそこに目が行ってるってことは、あの中に館の気になる女子がいるわけだ。 で? 誰なんだい? 誰の事が気になるんだい?」


 なんだか先程までの小舞君と違って絡みが酷くなってきた。 こう言った絡みはあまり好きではない。 小舞君は悪い人出はないのだが、少しばかりこういうところが出てくるのは性格上の問題かなって思ったりしてる。


「そこまでにしてあげなよ小舞君。 館君だってまだその気じゃないかもしれないじゃないか。」

「なにその「後々は言ってくれるかもしれない」みたいなニュアンス。 僕はまだ気になってる女子なんて・・・・・・」


 そう言いつつも、もう一度女子のグループで話している須今さんの方を見てしまう。 その様子を2人に改めて見られて「ハッ」としてしまう。


「ま、今は無意識でも、いつか意識的に見るようになるんじゃないか? 坂内はどう思う? ああやって無意識に見てるやつが意識的に女子を見るようになるって。」

「確実に気になり始めてるよね。 しかも自分が意識してないから、多分に余計に鈍感になっちゃう可能性もあるよね」


 僕の知らないところで僕の事を勝手に分析されている。 そんなに無意識かなぁ? 良く分からない。


「なぁ坂内。 この場合って鈍感っていうのか、朴念仁というのか。」

「鈍感の方がいいね。 朴念仁っていうほど無愛想じゃないからね。 彼は。」


 なんだか彼らのなかで僕の評価が酷いことになってる気がする。 そんな風に話していたらチャイムが鳴り、みんな自分の席に戻り、次の授業の準備に入る。

 須今さんも戻ってきてノートを取り出す。 そんなに須今さんの事を見ているのかなぁ? 須今さんの横顔を見ながら、僕は首を傾げた。


「どうかされましたか?」

「んー。 いや、僕ってそんなに・・・・・・」


 須今さんの事を見てる? そんなことを口走りそうになったが、それを当の本人に質問してどうするんだと留まった。


「・・・・・・? 私はそんなに館さんの事を変だとは思ってませんよ?」

「何を察したのか分からないけれど余計なお世話だって言っておくよ。」


 やっぱり勘違いなんじゃないだろうか? 僕は本当に須今さんのことをどう思っているのだろうか? そんなことを考えながら次の授業が始まった。

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