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休日の朝
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週末になり、学校が休みの時の僕の朝は早い。
時間的には日が差し込むかどうかと思われる時間帯、僕は体をベッドから起こし、フローリングを歩きながら、来ているパジャマを脱ぎ、衣服を入れている棚の上段を開ける。 そしてそこから白シャツと上下のジャージを取り出し、それを着用する。 まだ日が射し込んでいないので何色かまでは判断できないが、おかしな色のジャージは買っていないので大丈夫だろう。
そして靴下も履いて、自室を出て階段を降り、そのまま玄関口でスニーカーを履く。
「行ってきます。」
ベランダを挟むドアに向かってそう言い残して玄関を開ける。 春先の風はまだ冷たく感じるが、冬に比べたら断然いい。
僕の休日は朝のジョギングから始まる。 家で過ごす僕にとっての最初の外出とも言えるだろう。
「今日からここから高校まで走ってみようかな?」
今までは出身の中学校まで走っていたが、今日から高校生。 学校が変わったので間違えたり、もしもの時のためにルートを覚えておこうと思ったのだ。 距離からすると今までよりも往復20分は多くなるが、慣れればなんてことなくなるだろう。
そう思い軽く伸脚運動をしたのちに走り始める。 それなりに遠く、電車通学を余儀なくされているため、周りの景色に見向きを出来ないが、こうして走ってみることで見えてくる景色があったりもする。
ほとんど人も通っていないので、大通りまでスムーズに行ける。 たまにすれ違う人も同じような人なので気にならない。 なによりただ走ることは僕にとっては一番のリラックスタイムにもなる。
走り込んで20分ほど。 横目で駅を見ながら、大体の距離を考える。 自分の家の最寄り駅を1駅と考えて、今は2駅目。 学校の最寄り駅とは3駅分離れているのでもう少しで半分と言ったところだろう。 そう思っていると公園が見えてきた。 よく電車の中から見る公園なので印象が残っている。
「よし。 この辺りで小休止入れようかな?」
そう思い公園に入る。 そんなに広くない公園の中には、体操をしているおじいさんと近くのベンチでおしゃべりしているおばあさんたち。 それに散歩途中だろう犬を連れた僕くらいの年齢の若い女性が・・・・・・って、ん? んん?
僕の見間違いだろうか? いやそんなことはない。 だって教室では隣の席だし、よく話している人物なのだから間違えようもない。
「須今さん?」
その女性に声をかけると犬を撫でながらこちら側に振り返った。
「おや、奇遇ですね。 こんなところでこんな時間に会うなんて。」
なんのためらいもなくそう声をかけられる。 首輪をしているので多分飼い犬だろう。 リードもしてるし。
「意外って訳じゃないけど、ペットいたんだね。」
「今日は私が散歩担当だったので。 そういう館さんだって、こんな時間からマラソンなんて、体力には自信があるんですね。」
「僕の場合はジョギング。 小さい頃から休みの時は走ってるんだ。」
「なるほど。 だからあれだけ足が鍛えられていたという訳ですね。」
「まぁ、そんな感じ。」
お互いの貴重な一面を見せあっているかのように会話は進んでいく。 その心地よさはジョギング終わりのそれとはまた別の感覚だった。
「須今さんは家近いの? この辺り?」
「いえ、私はもう少し先です。 最寄り駅があの駅なので。」
そう言って指を指す方を見ると、僕が来た道、つまり学校からは2つ離れた駅近くということになるわけだ。
「そうなんだ。 僕はもう一つ向こうの駅が最寄りだよ。」
「スゴいところからジョギングなさってるんですね。」
「これから高校まで行ってそれから帰るつもり。 須今さんは?」
「私はこの辺りを回ったら帰ります。 あんまり長引かせても意味はありませんので。」
犬の散歩とはそんなものなのだろうな。 そんな風に思った。
「ところでさっき担当って言ってたけど?」
「姉と妹がいて、姉が大学生になって、妹も今年で中学一年生です。」
へぇ三姉妹なんだ。 それにしても3年ずつずれるとそれぞれに変わるから色々と話が盛り上がるんだろうなぁ。
「どちらも学校が近いので、近いうちに会えるかもしれませんね。 館さんの方はご兄弟とかは?」
「僕は一人っ子。 今は父さんが単身赴任でいないから母さんと2人で暮らしてる。 兄弟とかは・・・あんまりって感じ。」
欲しくないと言えば嘘になるのだが、別段強い欲求もない。 一人は一人なりに愛情をかけられるわけだし。
「さてとそろそろ行こうかな? あんまり遅いと心配するし。」
「そうですね。 ではこの辺りで。」
「ああ、僕は明日もまた走るけれど、須今さんも明日はこの時間帯に?」
「ええ、多分そうなりますね。」
「そっか。 じゃあ明日も会えるんだね。」
「学校以外ではプライベートになるのですが、そうなってしまいますね。 ふふ。 楽しみが増えたみたいです。」
そういって笑う須今さん。 その微笑みにこちらも口角が上がる。 須今さんといると、なんだか暖かい気持ちになる。 いや、これは春先だからかな?
須今さんと公園で分かれて、学校の正門にたどり着き、先程とは少々違うルートで家に帰る。 中学時代でも同じ用法で休日の朝を過ごしていた。 今回から距離がそれなりに伸びたので疲れが出てきてしまっているが、何回も走ればそのうちに慣れてくるだろう。 そして帰ってきて玄関のドアを開ける。
「ただいま。」
「お帰り。 朝ごはん用意するから、シャワー浴びて着替えてきなさい。」
「はーい。」
これが休日の朝のやりとり。 シャワーを浴び、着替え直して、リビングに行って朝食を取りながら朝のテレビを見る。 これが僕の休日の朝の過ごし方である。
「はいこれがあなたの分。 今日は随分遅かったわね。」
「今日から高校の方まで走ろうと思ってね。」
「ふーん。 ・・・・・・なんかいいことあった?」
昨日のあまりのご飯を暖め直したものを頬張りながらそんな風に母さんが聞いてきた。
「んー? なんで?」
「なんとなく嬉しそうな顔になってるからさ。」
どういう顔だったのだろうか? よくわからないが、楽しみが増えたのは事実ではあったりする。 いい高校生活になりそうだ。
須今さんって家に着いたら速攻で寝てるのかな?
時間的には日が差し込むかどうかと思われる時間帯、僕は体をベッドから起こし、フローリングを歩きながら、来ているパジャマを脱ぎ、衣服を入れている棚の上段を開ける。 そしてそこから白シャツと上下のジャージを取り出し、それを着用する。 まだ日が射し込んでいないので何色かまでは判断できないが、おかしな色のジャージは買っていないので大丈夫だろう。
そして靴下も履いて、自室を出て階段を降り、そのまま玄関口でスニーカーを履く。
「行ってきます。」
ベランダを挟むドアに向かってそう言い残して玄関を開ける。 春先の風はまだ冷たく感じるが、冬に比べたら断然いい。
僕の休日は朝のジョギングから始まる。 家で過ごす僕にとっての最初の外出とも言えるだろう。
「今日からここから高校まで走ってみようかな?」
今までは出身の中学校まで走っていたが、今日から高校生。 学校が変わったので間違えたり、もしもの時のためにルートを覚えておこうと思ったのだ。 距離からすると今までよりも往復20分は多くなるが、慣れればなんてことなくなるだろう。
そう思い軽く伸脚運動をしたのちに走り始める。 それなりに遠く、電車通学を余儀なくされているため、周りの景色に見向きを出来ないが、こうして走ってみることで見えてくる景色があったりもする。
ほとんど人も通っていないので、大通りまでスムーズに行ける。 たまにすれ違う人も同じような人なので気にならない。 なによりただ走ることは僕にとっては一番のリラックスタイムにもなる。
走り込んで20分ほど。 横目で駅を見ながら、大体の距離を考える。 自分の家の最寄り駅を1駅と考えて、今は2駅目。 学校の最寄り駅とは3駅分離れているのでもう少しで半分と言ったところだろう。 そう思っていると公園が見えてきた。 よく電車の中から見る公園なので印象が残っている。
「よし。 この辺りで小休止入れようかな?」
そう思い公園に入る。 そんなに広くない公園の中には、体操をしているおじいさんと近くのベンチでおしゃべりしているおばあさんたち。 それに散歩途中だろう犬を連れた僕くらいの年齢の若い女性が・・・・・・って、ん? んん?
僕の見間違いだろうか? いやそんなことはない。 だって教室では隣の席だし、よく話している人物なのだから間違えようもない。
「須今さん?」
その女性に声をかけると犬を撫でながらこちら側に振り返った。
「おや、奇遇ですね。 こんなところでこんな時間に会うなんて。」
なんのためらいもなくそう声をかけられる。 首輪をしているので多分飼い犬だろう。 リードもしてるし。
「意外って訳じゃないけど、ペットいたんだね。」
「今日は私が散歩担当だったので。 そういう館さんだって、こんな時間からマラソンなんて、体力には自信があるんですね。」
「僕の場合はジョギング。 小さい頃から休みの時は走ってるんだ。」
「なるほど。 だからあれだけ足が鍛えられていたという訳ですね。」
「まぁ、そんな感じ。」
お互いの貴重な一面を見せあっているかのように会話は進んでいく。 その心地よさはジョギング終わりのそれとはまた別の感覚だった。
「須今さんは家近いの? この辺り?」
「いえ、私はもう少し先です。 最寄り駅があの駅なので。」
そう言って指を指す方を見ると、僕が来た道、つまり学校からは2つ離れた駅近くということになるわけだ。
「そうなんだ。 僕はもう一つ向こうの駅が最寄りだよ。」
「スゴいところからジョギングなさってるんですね。」
「これから高校まで行ってそれから帰るつもり。 須今さんは?」
「私はこの辺りを回ったら帰ります。 あんまり長引かせても意味はありませんので。」
犬の散歩とはそんなものなのだろうな。 そんな風に思った。
「ところでさっき担当って言ってたけど?」
「姉と妹がいて、姉が大学生になって、妹も今年で中学一年生です。」
へぇ三姉妹なんだ。 それにしても3年ずつずれるとそれぞれに変わるから色々と話が盛り上がるんだろうなぁ。
「どちらも学校が近いので、近いうちに会えるかもしれませんね。 館さんの方はご兄弟とかは?」
「僕は一人っ子。 今は父さんが単身赴任でいないから母さんと2人で暮らしてる。 兄弟とかは・・・あんまりって感じ。」
欲しくないと言えば嘘になるのだが、別段強い欲求もない。 一人は一人なりに愛情をかけられるわけだし。
「さてとそろそろ行こうかな? あんまり遅いと心配するし。」
「そうですね。 ではこの辺りで。」
「ああ、僕は明日もまた走るけれど、須今さんも明日はこの時間帯に?」
「ええ、多分そうなりますね。」
「そっか。 じゃあ明日も会えるんだね。」
「学校以外ではプライベートになるのですが、そうなってしまいますね。 ふふ。 楽しみが増えたみたいです。」
そういって笑う須今さん。 その微笑みにこちらも口角が上がる。 須今さんといると、なんだか暖かい気持ちになる。 いや、これは春先だからかな?
須今さんと公園で分かれて、学校の正門にたどり着き、先程とは少々違うルートで家に帰る。 中学時代でも同じ用法で休日の朝を過ごしていた。 今回から距離がそれなりに伸びたので疲れが出てきてしまっているが、何回も走ればそのうちに慣れてくるだろう。 そして帰ってきて玄関のドアを開ける。
「ただいま。」
「お帰り。 朝ごはん用意するから、シャワー浴びて着替えてきなさい。」
「はーい。」
これが休日の朝のやりとり。 シャワーを浴び、着替え直して、リビングに行って朝食を取りながら朝のテレビを見る。 これが僕の休日の朝の過ごし方である。
「はいこれがあなたの分。 今日は随分遅かったわね。」
「今日から高校の方まで走ろうと思ってね。」
「ふーん。 ・・・・・・なんかいいことあった?」
昨日のあまりのご飯を暖め直したものを頬張りながらそんな風に母さんが聞いてきた。
「んー? なんで?」
「なんとなく嬉しそうな顔になってるからさ。」
どういう顔だったのだろうか? よくわからないが、楽しみが増えたのは事実ではあったりする。 いい高校生活になりそうだ。
須今さんって家に着いたら速攻で寝てるのかな?
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