Dolphin Blue

hoshizora

文字の大きさ
上 下
8 / 8

★80スープラ 現る

しおりを挟む
綾乃は無性に運転がしたくなり深夜2時頃、32の運転席にいた。

そしていつものように横浜ベイブリッジを渡り、湾岸線を走っていると暫くして背後から接近してくるマフラー音に気が付いた。

綾乃がバックミラーやサイドミラーを覗きこむとそれは80スープラ(JZA80型)(通称ハチマルスープラ)だった。

以前の綾乃ならきっと近くのインターで降りて姿を消していたことだろう。

しかしこの日の綾乃は違っていた。
インターを降りずに綾乃はアクセルを踏み込んでいた。

しかし80スープラも負けてはいなかった。
ドルフィンに追い付く勢いで加速していた。

実はこの時、80スープラのドライバーの心の中では様々な思いが駆け巡っていた。

いつしか湾岸では綾乃が最速と呼ばれるようになってはいたのだが綾乃が現れるまで同じように最速と呼ばれていた者がいた。

だが事故に巻き込まれ、わずか25歳で亡くなっていた。

名前は穂の花(ほのか)。

その事故は高速道路での出来事だった。

穂の花は行きつけのチューニングショップの帰り道にお気に入りの音楽をBGMにして、いつものように窓を少し開けて愛車のポテンシャル、マフラー音などを聞きながらハンドルを握っていた。

しかし途中から渋滞にはまってしまう。

穂の花も渋滞を見兼ねてハザードランプを暫くの間、点灯させていた。

前方に走るセダンは家族連れらしく後部座席には小学生らしき男の子と女の子が乗車していたのだが後ろを振り返っては穂の花に向かって無邪気に手を振っていた。

穂の花は子供好きという事もあり微笑みながらその子供たちに手を振り返していた。

だがそのほのぼのとした光景は一瞬として地獄に変わる。

あおり運転の車から逃げるかのように猛スピードで突っ走ってきた車に衝突されたのだ。

衝突をされたその瞬間、大きな爆音と共に穂の花の愛車は中央分離帯に激突をして 大破寸前になった。

一瞬の出来事だったとはいえ、 これは言うまでもなく前方に走っていた家族を守る為に 穂の花が犠牲になった事故でもある。

何故なら穂の花はこの時、最後尾だったが背後の光景に気付いた瞬間、咄嗟の判断でギアチェンジをして
前方のセダンの車からバックをして更に車間距離を置いていたからだ。

「このままではあの車まで巻き添えになってしまう」

穂の花が予想した通りあおられた車は猛スピードで激突してきた。

純粋に車が好きな走り屋は飲酒運転にしろ、そしてあおり運転などけしてしない。

この時、あおって暴走していた車はチューニングカーだったのだが車高もそれなりに低く、チューニングがしてある車であればあるほどマナー違反ばかりする、タチの悪いスポーツカー乗りの人達と同じように偏見な目で見られてしまう時もあるが、この80スープラのドライバーの心の中にもしっかりと走り屋としてのポリシーは持っていた。

あれは本当の、本物の走り屋じゃない。ただの暴走なのだと。

一見、矛盾しているようにも思えるが飲酒運転やあおり運転による事故のニュースが耳に入る度に心を痛めていた。

穂の花は仲間とよく一緒に走る時も多かったのだが80スープラのドライバー雅也(まさや30歳)は仲間であり友達だった。

雅也からしてみれば穂の花もまたR32が愛車であり 色もブルー、女性でありながら走り屋たちの間では湾岸最速の走り屋として伝説になっていた1人でもあっただけにドルフィンが気になる存在の1人となっていた。

雅也は過去を振り返りながら暫くの間ドルフィンを追い掛けていたが 途中から段々とスピードを落としてドルフィンから離れていった。

雅也はこの時、ドルフィンの走りを背後から見ていただけにすぎない。


綾乃はそれに気付くとアクセルから足を離していきスピードを落として次のインターで降りていった。

しおりを挟む

この作品は感想を受け付けておりません。

あなたにおすすめの小説

椿の国の後宮のはなし

犬噛 クロ
キャラ文芸
※毎日18時更新予定です。 架空の国の後宮物語。 若き皇帝と、彼に囚われた娘の話です。 有力政治家の娘・羽村 雪樹(はねむら せつじゅ)は「男子」だと性別を間違われたまま、自国の皇帝・蓮と固い絆で結ばれていた。 しかしとうとう少女であることを気づかれてしまった雪樹は、蓮に乱暴された挙句、後宮に幽閉されてしまう。 幼なじみとして慕っていた青年からの裏切りに、雪樹は混乱し、蓮に憎しみを抱き、そして……? あまり暗くなり過ぎない後宮物語。 雪樹と蓮、ふたりの関係がどう変化していくのか見守っていただければ嬉しいです。 ※2017年完結作品をタイトルとカテゴリを変更+全面改稿しております。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません

ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは 私に似た待望の男児だった。 なのに認められず、 不貞の濡れ衣を着せられ、 追い出されてしまった。 実家からも勘当され 息子と2人で生きていくことにした。 * 作り話です * 暇つぶしにどうぞ * 4万文字未満 * 完結保証付き * 少し大人表現あり

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

宮廷の九訳士と後宮の生華

狭間夕
キャラ文芸
宮廷の通訳士である英明(インミン)は、文字を扱う仕事をしていることから「暗号の解読」を頼まれることもある。ある日、後宮入りした若い妃に充てられてた手紙が謎の文字で書かれていたことから、これは恋文ではないかと噂になった。真相は単純で、兄が妹に充てただけの悪意のない内容だったが、これをきっかけに静月(ジンユェ)という若い妃のことを知る。通訳士と、後宮の妃。立場は違えど、後宮に生きる華として、二人は陰謀の渦に巻き込まれることになって――

後宮の棘

香月みまり
キャラ文芸
蔑ろにされ婚期をのがした25歳皇女がついに輿入り!相手は敵国の禁軍将軍。冷めた姫vs堅物男のチグハグな夫婦は帝国内の騒乱に巻き込まれていく。 ☆完結しました☆ スピンオフ「孤児が皇后陛下と呼ばれるまで」の進捗と合わせて番外編を不定期に公開していきます。 第13回ファンタジー大賞特別賞受賞! ありがとうございました!!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...