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705、いいところ 響side

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今日はなぜか気持ちが落ち着いている。
前は部屋の隅にいたのに今日はソファーに座っていても怖くない。
…この部屋に慣れたのか…?
…それとも…この男を信用しようとしてるのか?
信用しちゃダメだ、
フィッ、
斗真と目が合いそうになって慌てて目を逸らした。


「夕食どうする?、透は何食べたい?」

「俺は何でもいいよ。斗真のご飯なら何でも美味いから、」

「そう、ありがとう。じゃあどうしようかな、響は何なら食べれるかな。」

ごはん…いらない、
食べたくない。
そう言いたいのに言葉が喉につっかかって出ず、斗真を目で追う。

「斗真のご飯食べたことある?」

「ぇ…ぁ、ある」

小林に話しかけられた。
斗真が作ったスープを前に食べたことがある。

「そかそか、斗真のご飯は美味しいから大丈夫だよ。」

「………」
美味しいか美味しくないかは問題じゃない。
何入ってるか分からないのが怖くて…
でもそんなこと小林に言えない。
 
「前は何食べた?」   

「…スープ、卵が入ってるやつ」

「卵スープか、奏くんも好きなやつだ」

「ん、聞いた、」

「奏くんが好きなものはあとなんだろう、みかんとハンバーグも好きだよ。」

「…分かんない…」

みかんもハンバーグは見たことも聞いたこともない

「みかんはオレンジ色で甘酸っぱい果物で、ハンバーグはお肉を丸めて焼いたもの?かな?説明難しいね笑」

「ん……」

説明してもらったけど全然分からず床を見つめる。
俺は奏とは違う…
奏みたいに何でも信じて食べたり、人と関わったりできない。

「響は響でいいんだよ。比べなくていいよ。」

「………、」

心の声が聞こえてるかのようにすっと心の内に入ってきた。
目頭がジンと熱くなり一点を見つめる。

「みんな違ってみんないいって言葉知ってる?」

「知らない、」

「これはね、みんなそれぞれ違うけどそれぞれに良いとこがあるって言葉でね、
響も斗真も俺もみんな違うでしょ?でもみんな良いとこがあるんだよ。」

「…俺には…ない、」

「あるよ。響の良いとこは責任感があること奏を守ろうと頑張ったり、役目を果たそうとしたり、」

「…それは…俺のためだから…」

「でも、簡単に出来ることじゃないと思う。
嫌なことも全部我慢して自分がやらなきゃって思って頑張ってきたでしょ。それは誰でも出来ることじゃないよ。」

「………」

「少なくとも俺にはできない。嫌なことは嫌だし、嫌だったら逃げちゃうと思う。
だから、そこが響の凄いとこだと俺は思う。
でも、もう我慢しなくていいからね。
響が責任感強くて頑張れる子だって俺も斗真も知ってるから。もう我慢しなくていい、嫌なことは嫌って言っていいからね。
響は十分頑張った。頑張ったよ。奏くんを守ってくれてありがとう。
これからは響がやりたいって思うことしよ。

、頑張ったね、おいで、」

「ン、っ、…ン゛…、」

初めは頭が否定して小林の言葉を受け入れてなかったのに、気付けば涙が止まらなくなっていた。



奏を守ってくれてありがとう、なんて初めて言われた…
俺にとっては当たり前でやらなきゃいけないことで…
それは俺のためでもあって…
でも嫌で、痛くて、怖くて、…でも我慢しなきゃダメで…
奏と違って、俺には代わりが居ないから心が壊れないようにってずっと…ずっと…
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