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652、俺の方が強いのに 響side

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やっぱり俺には無理だ、

口を開けることもできずただ俯くしかできない。

奏にできて俺にできないことが悔しい、
俺の方が強いはずなのに…

奏はすぐ騙されてすぐ壊れる。
俺は騙されないし壊れない。我慢は奏よりできる。

でも…俺は奏みたいに料理も食べることも、掃除も、上手に話すことも…

できない。

俺の方が強いのに、


悔しくて辛くて奥歯をぐっと噛み締める。

「ありがとう、」



斗真が俺の手からラムネを取りお礼を言った。
お礼を言われるようなことしてない。

「食べたくないって教えてくれてありがとう。」

「言ってない。食べれる。」

食べれないのに意地を張って食べれると言ってしまった。

「無理しなくていいよ。怒ってないからね。」

抱きしめられ少し抵抗するが腰を引き寄せられ離してくれない。

「…食べる。」

「うーうん、食べなくていいよ。大丈夫、響は十分頑張ったよ。これ以上頑張ったら壊れちゃうから、」

「っ!!俺は壊れないっ」

奏と同じ扱いをされた気がして頭に血が上った。
力づくでラムネを取り返そうとしたら斗真の後ろに隠された。

「響も頑張り過ぎたら壊れるよ。響は頑張り過ぎちゃうから、」

「俺は奏とは違う。」

「響と奏くんは違うよ。それは分かってる。それでも頑張り過ぎは良くないよ。」

「………食べる。」

「無理しなくていいよ。休憩してまた食べたくなったら食べよ。」

「無理してない……俺だってできる。」

「じゃあ半分こする?」



「もし薬だったら違うのを俺が食べるより1個を半分にした方が薬じゃないって分かるくない?」

「……、ん」

「めっちゃ小さくなるけどいい?」

「…ん、いい。」

「割れるかな、スプーンでできるかな、」



スプーンで2つに割ってくれた。

「どっちがいい?」

「……………、こっち、」

小さい方を選んだ。

「いただきます。ん、美味しい。」

斗真が食べてるとこをじーっと見つめる。
顔や体の細かい動きまで見る。

ラムネが喉を通ったことを確認してから気が済むまで観察してラムネに視線を向ける。

斗真は食べてもどうもなさそうだった。
食べても大丈夫…かな…

半分になったラムネを摘み口に近づける。

ゴクッ、唾を飲み込み覚悟を決める。
ゆっくり口を開き舌の上に置いた。

「っ、」
異物感が不快で眉間にしわが寄る。
口の中でラムネが溶け広がっていく。

「美味しい?」

おいし…………くない。

「?、出す?出していいよ。」

飲み込めず固まっていると口元にティッシュを当ててくれた。

本当はちゃんと飲み込みたかったけど体が受け付けなくてティッシュに吐き出した。

「……ごめんなさい」

「うーうん、口に入れれたことが凄いよ。頑張ったね、やっぱり薬に見えたら怖くなっちゃった?」

「………フルフル、」

口に入れてからは薬の見た目だったことをすっかり忘れていた。

「?、違うの?」

「…………………、」

言えない、
斗真が美味しいって言ってるものを美味しくなかったなんて言えない。

言えなくて俯いた。

「美味しくなかった?」

「………美味しかった………」

嘘がバレないように斗真の目は見ず俯いたまま言った。

「そっかー、美味しくなかったか笑 ラムネって好き嫌い別れるもんね笑」

「っ!違っ、美味しかったっ」

「じゃあもう1個食べる?」

「え……あ……、食べる。」

「はははっ笑笑 無理しなくていいよ笑 美味しくないものがあってもいいんだよ。」

「…ごめんなさい、」

「好き嫌いは悪いことじゃないよ。教えてくれてありがとう。好き嫌いは奏くんと違うんだね。奏くんも気使って美味しいって言ってたのかな?」

「奏に気使うなんてできないと思う。」

「確かに、ってそんなことないでしょ笑 ちゃんと聞いてみよ。」

「………………水……ほしい…」

「いいよ。口の中ラムネの味するもんね、」

聞こえないくらいの声で言ったのに斗真には届いていて怒らず持ってきてくれた。

持ってきてもらったけど飲むのが怖い…でも…飲みたい。

「一口貰うね、」

「…ありがとう…」



「っ、ン、ゴックン」

意を決して少量の水を口に含み飲み込んだ。
まだ少しラムネの味が残ってるけどこれ以上は怖くて飲めず、コップを机に置いた。

「偉い!頑張ったね!」

褒められ少し照れくさくて斗真の胸に顔を押し付けると頭を優しく撫でてくれた。
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