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647、飲まない 響side

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斗真は怒らない。

安心するけど怖い……
信じたくないのに信じようとする自分も怖い


「響、一杯だけでいいからお水飲んでほしい。」

「……いらない。」

「お願い、脱水になっちゃうから。一口だけでもいいから、」

「いらない。」

「ゴックン、ほら、何も入ってないよ。怖くないから、一口だけ飲んで。」

「いらない。」

さっきは飲まなくても何も言わなかったのに急にしつこく水を飲むよう勧めてきた。
口には何も入れたくない。
薬も疑ってるがそもそも口に何かが入る感覚が嫌いだ。

「お願い、さっき倒れたのも脱水が原因だと思うんだ。ちょっと汗もかいてるしお水飲も。」

「……いらない。」

喉は渇いてるけど飲みたくない気持ちの方が強く、「いらない」と言い続ける。
が、斗真は引き下がってくれない。

「飲まずに吐き出しても良いから一口だけ口に入れてみよ。」

「…………、やだ……」

「どうして?お水怖い?薬入ってないよ。」

「…別に……嫌なだけ、」

「…………、どうしたら飲めるかな……」

「飲まない。」

「お願い、」

「しつこい…」

「このままだと本当にしんどくなっちゃうよ。」

「…………、」

「……、飲まないならまた無理矢理飲ませることになっちゃうよ。」

「っ!!ビクッ、………もう一口…」

前、熱が出た時に口移しで無理矢理飲まされたことを思い出す。
抵抗しても舌をねじ込まれ飲んでしまった…
力づくで怖いし…あれはもう嫌だ…

「もう一口?俺が飲んだらいいの?」

「…コクリ、」

「ゴックン、飲んだよ。ほら、どうもないでしょ。」

「………ジ-、」

水を飲んだ斗真をじっと見つめる。
張り詰めた空気が流れる中、斗真がにこっと笑顔を向けてきた。

っ!!!

余裕こきやがって、
何となくムカついてコップの中に入った水を一気に喉に流し込んだ。

ゴックン、

「?!、凄いじゃん!頑張ったね!!偉いね!!」

勢いで飲んだけど不安と恐怖と後悔が押し寄せ無意識に斗真の服を掴んでいた。

斗真は何も言わずそっと強ばった俺の手を優しく包みこんだ。
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