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596、生きるって言っちゃった 奏side

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…斗真さんに死んだらヤダって泣かれてしまった。

本当はもう全部終わりにしたかったけど、斗真さんには泣いてほしくなくて生きるって言っちゃった…





…包丁を手に取るまでは死のうとなんて思っていなかった。
でも何故か包丁を持った途端スって身体が軽く感じて包丁を自分の首元に向けてしまった。


初めて斗真さんを怒らせてしまった。

「………、」

「奏くん、おいで」

斗真さんの上に跨り向き合って抱きしめられる。

「奏くんはまだ自分の凄さに気付いてないんだよね。」

「僕の…すごさ?」

「うん、奏くんの凄さ。何だと思う?」

「……、お金持ってこれる?」

「うーん、違うよ。俺は毎日奏くんの凄さを感じてるよ。」

「毎日?………」

斗真さんに会ってから一度もお仕事してないからお仕事じゃない…
ごはん…掃除…?…毎日はやってないし…


「奏くんの凄さはね、癒しだよ。」

「いやし…?」

「うん、奏くんと一緒にいたら自然と心が温かくなるの。」

「…あたたかく…」
僕も斗真さんといたら心が温かくなる…同じかな……

「奏くんと一緒にいたらいつも幸せな気持ちになれるんだぁ、」

そんなこと言ってくれるの斗真さんだけだよ…
だって今まで僕はみんなに…………

「嫌なこといっぱい言われてきたんだね…、」

僕は何も言ってないのに溢れる涙を拭い僕の気持ちを受け止めてくれた。

「今までに言われた傷付く言葉は忘れていいよって言ってもそう簡単には忘れれないよね。」

「………僕は……斗真さんが思ってるほど良い子じゃない…」

「良い子になんてならなくていいよ。俺が求める姿じゃなくて、奏くんがどうなりたいかが大切なんだよ。」

僕がどうなりたいか…

「奏くんはこれからどうなりたい?」

「僕は…………、痛いと怖いを無くしたい。」

「うん、分かった。じゃあ痛いと怖いが無くなるように一緒に頑張ろうか。」

「…できるの?」

この2つは生きてるかぎり無くならないと思っていたのに…

「できるよ。その代わり、完全に無くすのは難しいし、時間もかかるし、奏くんもたくさん頑張んなきゃいけないと思う。それでも一緒に頑張れる?」

「…何頑張るの?」

「うーん、痛みは今怪我してるところを治そ、そしたら体は痛く無くなると思う。あと怖いのはお風呂とかトイレとか車とか?それはゆっくり時間をかけて慣れたり怖くないようにするにはどうしたらいいか一緒に考えよ。
あとは…怒ってる声が聞こえたり怖いことを思い出したり…それはまた今度透に聞いてみようか。すぐ怖くなくなるっていうのは難しいけど少しずつ怖くなくなる方法はあると思うよ。」

「…怖いなくなったら…斗真さんと同じなれる?」

「俺と同じ?」

「斗真さんは僕と違う…」

「どう違うだろう?」

「…斗真さんは………僕と違うの…」

なんて言っていいかが分からない…斗真さんは僕みたいにおどおどしてなくて真っ直ぐ先を見てる感じ…
でもなんて言葉にしたらいいか分からない。

「なんだろう、奏くんは俺みたいになりたいの?」

「コクリ、なりたい。」

「そっか、じゃあなれるように一緒に頑張ろう。」

コクリ、
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