こころ・ぽかぽか 〜お金以外の僕の価値〜

554、夢じゃない 奏side

「………､……」

「おはよう。」

「……､…ぉはよう…」

目を覚まし、薄ら目を開けると斗真さんと目が合った。
斗真さんの声を聞くと今の痛くない生活が夢じゃなかったんだって安心する。

今日も一日が始まる。
今日も多分痛くない。


「トイレ行く？」

ｺｸﾘ、

歩けるけど甘えたくて斗真さんに抱っこでトイレまで連れてきてもらった。
斗真さんは僕の要望に嫌な顔ひとつせず応えてくれる。


「ちゃんとできた？」

ｺｸﾘ、

「朝ごはん食べれそう？」

「………ﾁﾗ、………､たべたい……」

昨日ゴミを食べたことを思い出し斗真さんの顔色を伺いながら「食べたい」と伝えた。

「よし、何食べたい？」

斗真さんは怒らずむしろ嬉しそうな顔で僕の頭を撫でて抱き寄せてくれた。
背中をゆっくり撫でられ耳元で話しかけられる。

「食べやすい物がいい？」

「……斗真さんと…一緒のがいい…」

「いいよ。何にしようかなー、」

斗真さんは僕から離れ冷蔵庫の中を眺める。

「リゾットとかどうかな？」

りぞっと？？？

「こういうスープにご飯入れて食べるの美味しいよ。」

スマホで画像を見せてくれた。
「…たべたい」

「じゃあリゾットにしようか、チーズポタージュリゾットにしよ。卵入れても美味しいかなー、すぐできるから机拭いてきてくれる？」

…ｺｸﾘ、

本当は斗真さんのそばを離れたくなかったけど、僕にできることがこのくらいしかないから深呼吸をしてから机を拭きに行った。