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440、教えて 斗真side

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何があるか分からないから水分補給用のゼリーを買っておいて良かった。
いつもみたいに薬が怖いんだと思ってたけど違うかったんだ、過呼吸になってる時にフラッシュバックを起こしてたのか…気付いてやれなかった……

今は落ち着いてる。

沢山泣いてパニックも起こして汗をかいたからか少し寒そうにしている。

「汗冷えて寒い?着替えようか、」

「……大丈夫、」

「冷えたままだったら風邪引いちゃうから着替えよ?」

「……コクリ」

「ちょっと待っててね、」

寝室から奏くんの服を持ってきた。

「ばんざーい」

だるそうな奏くんを着替えさせてソファーに横にさせてクッキーを抱かせる。
素直に横になってくれた。
しんどいのかな?沢山泣いたから頭痛い?眠たい?

熱はなさそうだけどな…
首を触ると「熱ない」ってパニックになりそうになるから服を着替えさせながら体に触れて体温を確認した。

体調を聞くと不安になって不調を隠そうとするから下手に聞けない。
奏くんが言ってくれるのを待つしかないけど、奏くんから言ってくれることは滅多にないんだよな…
奏くんから不調を言ってくれるってよっぽど辛い時だよな……
それまで我慢させたくないけど俺には不調を察せる力もない……

「……斗真さん……」

「っ!ん?!何?どうした?」

「っ!…………なんでもない、」

「ぇ…………」

やってしまった!!!………………
勢いよく聞き返したから言いずらくて黙り込んでしまった!!!………………

何を言おうとしてたんだろう……
やっぱりしんどいのかな???

「…………斗真さん…………」

ラストチャンスだ!落ち着いて…

「どうしたの?」

「……アウターほしい……」

アウター?

「いいよ。寒い?」

背中にかけると、「……違う。」っと言ってアウターを丸めて顔を押し付けた。

え……?

匂い嗅いでる?
アウターの持ち主隣にいるのに?本人よりアウターの方が良かったのかな?
何故かモヤモヤしてアウターに妬きながら様子を伺っていると満喫できたのか顔を離してアウターを返された。

え……?もういいの?

「ギューする?」

こんな感じで俺から誘うのってなんか恥ずかしいな。

「……いいの?」

「いいよ。おいで、」

いつものように膝に乗せて向き合って抱きしめると顔を押し当てて大きく深呼吸した。

「アウターと俺どっちがいい?」

何バカな質問してんだ俺……

「斗真さん…………でも…無理しなくてもいいよ?」

無理??
「無理なんてしてないよ?どうして?」

「……いつも抱っこなのに今日はソファーに寝かせるから…抱っこ重たいから嫌?」

あ……それでアウターで代用してたんだ……

「抱っこ嫌じゃないよ。奏くんがしんどそうだったから座ってるより横になってる方が楽かなって思ってソファーに寝かせたんだ。奏くんはどっちがいい?」

「……抱っこがいい……」

「そっか、いいよ。抱っこにしようか。」

「……コクリ、ありがとう。」

「いいえー、気を遣わせちゃってたんだね、ごめんね。」

「フルフル……僕も、斗真さんの優しさ気付けなかった……ごめんなさい。」

「いいよ。お互い様だね。言葉にしなきゃ伝わらないよね、これからはちゃんと言葉にするようにするね。」

「僕も……言う。」

「うん、少しずつでいいからね。」

「コクリ、」

「じゃあ早速聞きたいことがあるんだけど、」

「?」

「奏くんの今の体調が知りたい。しんどい?どこか痛いとかある?言ってくれなきゃ分からなくて、教えてほしい。」

「……大丈夫。…………だけど………………ちょっとだけ頭が……重たい……」

「頭が重い?体は?」

「……ちょっとだけ重たい……かも……」

「そっか…………体温測ってもいい?熱があっても絶対に奏くんが嫌なことはしないから、お願い!」

「分かった……」

体温計を脇に挟むと体を強ばらせて服を掴む。


ピピピ…ピピピ…

「37.5か……」

「…熱……ある?」

不安そうに見つめる奏くんを抱きしめる。

「うん、ちょっとだけ熱ある。でもこのくらいだったら大人しくしてたら下がると思うよ。」

「……熱なくなる?」

今にも零れそうな涙を溜めた目で見つめられ、ただでさえ熱はメンタルを弱らせるのに奏くんにとって熱はすごいストレスの塊なんなんだと感じた。

「大丈夫だよ。絶対熱治るからね。一緒に熱治そうね。」

コクリ

静かに涙を零す奏くんを優しく抱き上げて、寝室に移動した。

「夕食の時間まで一緒に寝ようか、」

「……コクリ」

不安そうな奏くんをなだめながら眠れるように抱きしめたまま背中をトントンする。
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