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357、不安から 奏side
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明日から斗真さんのお家に住むことになった。
予定より1日早くなっただけだけどなんだか気持ちが落ち着かなくてソワソワする。
ちゃんと過ごせるかな…
斗真さんがお仕事してる間ちゃんと静かにできるかな…
怒らさないかな…
斗真さんは僕はお仕事しなくていいって言ってくれたけど…僕も斗真さんの役に立ちたい。
お家でできることは家事くらいだけど、そのくらいならしてもいいかな?
お掃除して洗濯物してご飯作って、お金は持って来れないけど斗真さんの役に立てるかな?
不安な事がたくさん出てきて頭がグルグルする。
「どうした? ここで過ごすの不安?」
「っ…フルフル…大丈夫…」
「ほんとに?おいでー、」
顔を見られたらこのグルグルした気持ちがバレる気がして下を向いたまま斗真さんの胸にもたれかかった。
「不安なのは悪い事じゃないんだよ。誰だって新しい環境は不安なんだよ。」
「………斗真さんも…?」
「俺も毎回新しい環境になる時は不安だよ。
ここでやっていけるかなとか、自分は何したらいいのかなとか沢山考えて不安になるよ。」
「………僕も…分かんない………」
「そっか、何が分かんない?」
「………言っても怒んない?」
「怒らないよ。」
「………ちゃんと過ごせるか…、斗真さんがお仕事の時ちゃんと静かにできるか…斗真さんの役に立てるか…斗真さんを怒らさないか………不安…」
「そっか、不安なんだな。
仕事中は別に静かにしなくても大丈夫だよ。
まぁリモート会議中とかはあまり五月蝿すぎるとあれだけど、普通の仕事の時は静かにしなくても大丈夫だからね。」
「……そうなの?」
「うん、大丈夫。あと、役に立つ?
別に俺は奏くんに何かしてほしくて一緒にいる訳じゃないよ?俺はただ奏くんと一緒にいたいからいるんだよ。まぁ、奏くんが俺のために何かしたいなって思ってくれるのは嬉しいよ。でもそれは役に立つじゃなくてお互いに支え合う関係でありたいかな。」
「支え合う…?」
「ちなみに奏くんが思う役に立つことってなんだった?」
「……えっと、家事…掃除とか洗濯とかご飯作ったりしたら役に立つかなって………迷惑?」
「迷惑じゃないよ。むしろ有難い。
強制じゃないよ。強制じゃないけど、俺が仕事で忙しい時に家事やってくれたら助かるよ。
でもやっぱりそれは役に立つじゃなくて、俺の事を支えてくれてるって俺は思うかな。」
「……家事…支えになる?」
「なるよ。すっごい支えになる。助かるよ。」
「…やってもいい??」
「いいよ。っというか、ありがとう。無理せずできる範囲で良いからね。」
「分かった。家事する。」
「ありがとう。
…あと…どうして俺が怒ると思ったの?」
「………だって……僕が…グラッっっ!」
『どうして出来ないのよ!ホント役立たず!!!』
『金も持ってこれねぇのかよこのクズが!』
『役に立たねぇならお前なんか誰も要らねぇから』
やめて…もう嫌だ…聞きたくないっ
さっきまで斗真さんと話してたはずなのに目の前にはお父さんとお母さんが立っていて2人の声が脳内に響き渡る。
耳を塞いでいても鮮明に聞こえてくる声に頭がおかしくなりそうになる。
「…くん?!、…くん!…くん!奏くん!!」
「っ!!!ん”い”や”あああああああああああ!」
「奏くんっ!大丈夫、落ち着いて、怖くないよ。」
自分の心を守るため声がする方に振りかぶった拳は斗真さんの大きな手で受け止められていた。
「はぁ…はぁ………はぁ…はぁはぁ……はぁ……」
「大丈夫だよ。ゆっくり、ゆっくり息しようね。大丈夫、大丈夫、怖かったね。もう大丈夫だからね。」
「はぁ…はぁ…はぁ…はぁ………はぁ………っ……っ……怒らないで……ごめんなさいちゃんとするから……怒らないで……お願い…お願いします…」
「分かった。怒らないよ。」
「ほんとに?役立たずって言わない?」
「言わない。」
「お金持ってこなくても?」
「持ってこなくても、大丈夫だから。子どもは仕事しなくていいって言っただろ?」
「…っ…っっ…ぅん…っ…っ………」
「大丈夫、大丈夫、大丈夫だよ。」
斗真さんの言葉よりもお父さんとお母さんの声が頭に焼き付いて手の震えが止まらない。
「大丈夫、大丈夫、…外の空気吸おうか、」
さっきみたいに窓を開けて斗真さんの上に乗ったまま座った。
_______________
外からの風に当たって少し落ち着いた。
「あ、そうだ。ちょっと待っててね、」
「っ!」
「すぐだから、」
「…」
一人が不安で斗真さんを見つめていると急いでキッチンから洗剤とコップ、ストローを持って僕の横に座った。
「おいで、」
斗真さんの上に戻って少し安心したけどやっぱり手は震えたままなかなか治まらない。
「奏くんしゃぼん玉って知ってる?」
「…しゃぼんだま??……分かんない……」
「見ててね~」
っ!
何これ!
透明の丸いのがたくさん出てきた。
「…きれい…」
「綺麗だね~やってみる?」
「………コクリ、」
「ここにフーって息ふきかけてみてー、」
「…フ-…っ!!!ぁ…できた」
「上手~いっぱいできたねー、もっとしていいよ、」
初めてすることにワクワクしてたくさんしゃぼん玉を作る。
「じゃあ俺は大きいの作ろうかな~」
「??…っ!!!」
さっきのとは違って1つのシャボン玉がみるみる大きくなっていく。
「お~大きいね~高く飛んで行っても見えるね。」
「…やりたい…」
「いいよー、さっきよりゆっくーり息を吹きかけてー、そう上手!」
斗真さんのよりは小さかったけど大きいしゃぼん玉作れた。
嬉しくて飛んで行くしゃぼん玉を見えなくなるまでじっと目で追いかけた。
「楽しい?」
「コクリ、楽しい…ありがとう。」
「どういたしまして、」
「…ぁ…」
「ん?」
しゃぼん玉に夢中になっていたいつの間にか手の震えが止まっていた。
嬉しくて手を広げて斗真さんに見せる。
「おっ、震え止まった?」
「コクリ、ありがと。」
「うーうん、辛い気持ちもしゃぼん玉に入れてお空に行ったのかな~」
そう言って斗真さんは僕の手を擦りながら優しく微笑んだ。
斗真さんはいつもこうやって僕を助けてくれる。
…かっこいい…本当にそう思った。
予定より1日早くなっただけだけどなんだか気持ちが落ち着かなくてソワソワする。
ちゃんと過ごせるかな…
斗真さんがお仕事してる間ちゃんと静かにできるかな…
怒らさないかな…
斗真さんは僕はお仕事しなくていいって言ってくれたけど…僕も斗真さんの役に立ちたい。
お家でできることは家事くらいだけど、そのくらいならしてもいいかな?
お掃除して洗濯物してご飯作って、お金は持って来れないけど斗真さんの役に立てるかな?
不安な事がたくさん出てきて頭がグルグルする。
「どうした? ここで過ごすの不安?」
「っ…フルフル…大丈夫…」
「ほんとに?おいでー、」
顔を見られたらこのグルグルした気持ちがバレる気がして下を向いたまま斗真さんの胸にもたれかかった。
「不安なのは悪い事じゃないんだよ。誰だって新しい環境は不安なんだよ。」
「………斗真さんも…?」
「俺も毎回新しい環境になる時は不安だよ。
ここでやっていけるかなとか、自分は何したらいいのかなとか沢山考えて不安になるよ。」
「………僕も…分かんない………」
「そっか、何が分かんない?」
「………言っても怒んない?」
「怒らないよ。」
「………ちゃんと過ごせるか…、斗真さんがお仕事の時ちゃんと静かにできるか…斗真さんの役に立てるか…斗真さんを怒らさないか………不安…」
「そっか、不安なんだな。
仕事中は別に静かにしなくても大丈夫だよ。
まぁリモート会議中とかはあまり五月蝿すぎるとあれだけど、普通の仕事の時は静かにしなくても大丈夫だからね。」
「……そうなの?」
「うん、大丈夫。あと、役に立つ?
別に俺は奏くんに何かしてほしくて一緒にいる訳じゃないよ?俺はただ奏くんと一緒にいたいからいるんだよ。まぁ、奏くんが俺のために何かしたいなって思ってくれるのは嬉しいよ。でもそれは役に立つじゃなくてお互いに支え合う関係でありたいかな。」
「支え合う…?」
「ちなみに奏くんが思う役に立つことってなんだった?」
「……えっと、家事…掃除とか洗濯とかご飯作ったりしたら役に立つかなって………迷惑?」
「迷惑じゃないよ。むしろ有難い。
強制じゃないよ。強制じゃないけど、俺が仕事で忙しい時に家事やってくれたら助かるよ。
でもやっぱりそれは役に立つじゃなくて、俺の事を支えてくれてるって俺は思うかな。」
「……家事…支えになる?」
「なるよ。すっごい支えになる。助かるよ。」
「…やってもいい??」
「いいよ。っというか、ありがとう。無理せずできる範囲で良いからね。」
「分かった。家事する。」
「ありがとう。
…あと…どうして俺が怒ると思ったの?」
「………だって……僕が…グラッっっ!」
『どうして出来ないのよ!ホント役立たず!!!』
『金も持ってこれねぇのかよこのクズが!』
『役に立たねぇならお前なんか誰も要らねぇから』
やめて…もう嫌だ…聞きたくないっ
さっきまで斗真さんと話してたはずなのに目の前にはお父さんとお母さんが立っていて2人の声が脳内に響き渡る。
耳を塞いでいても鮮明に聞こえてくる声に頭がおかしくなりそうになる。
「…くん?!、…くん!…くん!奏くん!!」
「っ!!!ん”い”や”あああああああああああ!」
「奏くんっ!大丈夫、落ち着いて、怖くないよ。」
自分の心を守るため声がする方に振りかぶった拳は斗真さんの大きな手で受け止められていた。
「はぁ…はぁ………はぁ…はぁはぁ……はぁ……」
「大丈夫だよ。ゆっくり、ゆっくり息しようね。大丈夫、大丈夫、怖かったね。もう大丈夫だからね。」
「はぁ…はぁ…はぁ…はぁ………はぁ………っ……っ……怒らないで……ごめんなさいちゃんとするから……怒らないで……お願い…お願いします…」
「分かった。怒らないよ。」
「ほんとに?役立たずって言わない?」
「言わない。」
「お金持ってこなくても?」
「持ってこなくても、大丈夫だから。子どもは仕事しなくていいって言っただろ?」
「…っ…っっ…ぅん…っ…っ………」
「大丈夫、大丈夫、大丈夫だよ。」
斗真さんの言葉よりもお父さんとお母さんの声が頭に焼き付いて手の震えが止まらない。
「大丈夫、大丈夫、…外の空気吸おうか、」
さっきみたいに窓を開けて斗真さんの上に乗ったまま座った。
_______________
外からの風に当たって少し落ち着いた。
「あ、そうだ。ちょっと待っててね、」
「っ!」
「すぐだから、」
「…」
一人が不安で斗真さんを見つめていると急いでキッチンから洗剤とコップ、ストローを持って僕の横に座った。
「おいで、」
斗真さんの上に戻って少し安心したけどやっぱり手は震えたままなかなか治まらない。
「奏くんしゃぼん玉って知ってる?」
「…しゃぼんだま??……分かんない……」
「見ててね~」
っ!
何これ!
透明の丸いのがたくさん出てきた。
「…きれい…」
「綺麗だね~やってみる?」
「………コクリ、」
「ここにフーって息ふきかけてみてー、」
「…フ-…っ!!!ぁ…できた」
「上手~いっぱいできたねー、もっとしていいよ、」
初めてすることにワクワクしてたくさんしゃぼん玉を作る。
「じゃあ俺は大きいの作ろうかな~」
「??…っ!!!」
さっきのとは違って1つのシャボン玉がみるみる大きくなっていく。
「お~大きいね~高く飛んで行っても見えるね。」
「…やりたい…」
「いいよー、さっきよりゆっくーり息を吹きかけてー、そう上手!」
斗真さんのよりは小さかったけど大きいしゃぼん玉作れた。
嬉しくて飛んで行くしゃぼん玉を見えなくなるまでじっと目で追いかけた。
「楽しい?」
「コクリ、楽しい…ありがとう。」
「どういたしまして、」
「…ぁ…」
「ん?」
しゃぼん玉に夢中になっていたいつの間にか手の震えが止まっていた。
嬉しくて手を広げて斗真さんに見せる。
「おっ、震え止まった?」
「コクリ、ありがと。」
「うーうん、辛い気持ちもしゃぼん玉に入れてお空に行ったのかな~」
そう言って斗真さんは僕の手を擦りながら優しく微笑んだ。
斗真さんはいつもこうやって僕を助けてくれる。
…かっこいい…本当にそう思った。
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