こころ・ぽかぽか 〜お金以外の僕の価値〜

神娘

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350、所有者の印 奏side

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昨日はなかなかリビングに行けなかったのに今日は真っ直ぐリビングに向かえた。

「お水飲もうか、」

斗真さんがお水を入れてくれた。
ソファーに座ってゆっくりお水を飲む。
喉乾いてたのかな?一口飲んだらゴクゴク全部飲んじゃった。

「喉乾いてた?もう一杯飲む?」

コクリ

「はい、どうぞ。」

もう一杯も全部飲めた。

「お水溜めてるの?」

水道水でもペットボトルでもないお水、上に沢山水が入ってる。

「ウォーターサーバーだよ。」

「うぉーたーさーばー…??」

「ふふっ笑 飲める水が入ってるの。コップを持ってレバーを上げたら水が出るからね。好きに飲んでいいよ。」

凄い、どうなってるんだろう。
気になってじっと見つめる。

その横で斗真さんは伸びをしていた。

「寝る?」

「んー?寝ないけどちょっと眠たいかも笑 ゆっくり過ごそうか。」

コクリ

クッキーを持ったまま斗真さんにもたれかかる。

「そういえば腕の腫れどうなった?朝確認し忘れてて、」

っ!
忘れてた…見られるのが怖くて袖を押さえてしまった。

「腫れてても怒らないよ。ちょっと見るだけ、」

………ン…

恐る恐る袖を捲るとまだ歯型がくっきり残っていた。

「腫れは引いてるね。痛みは?昨日よりどう?」

「…痛いない…」

「痛いないかぁ、分かった。痛みが酷くなったら教えてね。」

…コクリ

「約束。」

「…やくそく…」

小指を立てられどうしていいか分からず戸惑っていると僕の小指に絡めてきた。…?

「体の傷も落ち着いてきたし、痣はもうすぐ治りそうだね。」

…っ…………

痕……

もし傷が全部治ったら…
また新しいの付けるの?
お客さんの中で自分のものっていう印を付けるって言ってた人がいた。

傷が治る度に新しい傷を付ける…

もし今の傷が無くなったら…

「奏くん??」

っ!!!ン!

「どうした?」

気付いたら斗真さんの顔が目の前にあって肩が飛び跳ねる。

フルフル
「なんもない…」

「ごめん、傷の話されたくなかったな。嫌なこと思い出しちゃった?ごめんね、おいで、」

俯く僕の脇に手を入れ抱き上げる。

「大丈夫、もう怖くないからな。」

フルフル
「…怖くない」

「怖くないの?」

「………傷無くなったらどうするのか気になった…だけ…」

「どうするって?」

「……新しいの付ける?」

「付けないよ。もう傷なんて付けさせない。どうして?」

「……斗真さんは僕に印付けないの?」

「印?」

「斗真さんの物っていう印」

「付けないよ。奏くんは俺の物じゃないよ。」

「…え………どうして………」

じゃあ僕は誰の物……お父さんもお母さんもお客さんも居なくなった今…僕は斗真さんの物になったんだと思ってた……
それなのに…斗真さんの物じゃない…

一気に斗真さんから距離を感じ、孤独感に襲われた。

「俺は誰の物だと思う?」

「え…」

急な斗真さんの問いに戸惑う。

「えっと……」

斗真さんは直人さんと美香さんの子どもだから…2人の物?

「直人さんと美香さんの物…?」

「違うよ。俺は2人の物ものじゃない。」

「………」

「俺は俺のもの、ちなみに物でもない。」

「…ぁ…」

「奏くんも、奏くんは奏くんのもの。誰かが所有する物じゃないよ。」

「僕のもの…」

「そ、奏くんのもの。前に奏くんがもう商品じゃない。って言ってたでしょ?」

「…うん」

自分を傷付けようとしてた時に言ったことだ…

「それと一緒。みんな誰かの物になったりしないよ。商品でも物でもない。」

「でも…」

「うん、」

「僕は……斗真さんになんでもしてもらって…斗真さんがいないと何もできないから…」

「うーん、なんて言えばいいのかな。大人がよく言う言葉を使うなら、子どもは何もできなくていいんだよ。これからできるようになるから子どもの仕事は沢山泣いて沢山甘えること。
だからそれに負い目を感じる必要は無い。」

「…………うん…」

でもそれじゃ…斗真さんに何も返せない………

僕は体でご奉仕することでしか恩返しできないのに…

「魂全部捧げていいのは本気で好きになった人にだけだよ。」

「????」

「ふふっ笑  難しいか笑  まぁ自分をあげるのは今じゃないよってこと笑  それまで大事にとっときな。
脱線したな。傷で印を付けるって??そんな事しないよ。付けてもキスマークくらいだよ。」

「キスマーク??」

「痛いことは絶対にしないよってこと。そんな事しなくても奏くんは俺と一緒にいてくれるでしょ?笑」

「コクリ、斗真さんと一緒にいる。」

「なら付ける必要ないじゃん。」

そっか…斗真さんと一緒にいたら印は要らないんだ…なんだか綺麗に腑に落ちた。
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