こころ・ぽかぽか 〜お金以外の僕の価値〜

347、集中 斗真side

「そろそろ行こうか、」

さっきからお弁当が気になってソワソワしている奏くんの手を握って言うとｺｸﾘと大きく頷いた。

今日は昨日みたいに脚が麻痺することも無く順調に家を出ることができそうだ。

昨日と同じ鞄と弁当とクマのぬいぐるみクッキーを持って玄関を出る。

「いってきまーす。」

「「いってらっしゃーい。」」

父さんと母さんに見送られ車に乗る。

「鞄とお弁当は後ろに置いとくね。」

ｺｸﾘ

「シートベルト付けるよ。」

ｺｸﾘ

今日は家に着くまでイヤホンをして動画を見せる約束をしていた。

「どれが観たい？」

「………これ」

奏くんのが選んだのはいつも通り動物が出てくるアニメ。ホント動物が好きなんだな。

「耳痛くない？」

ｺｸﾘ

1番小さいイヤホンを耳につけ、念の為上からイヤーマフを付けさせた。

「行くよ。」

ｺｸﾘ

動画を再生させるとクッキーを抱き直し画面に目を向けた。

ゆっくりと車を走らせ家に向かった。

この動画が15分で終わる。様子を見ながらアニメが終わったら1度どこかで休憩しよう。

信号で止まる度に奏くんの顔を見るが、アニメに夢中で目が合わない。
でも、昨日までみたいにフードを握りしめて俯く様子はなかった。
呼吸も落ち着いてるようで安心した。

やっぱり何かに集中してたら怖くなくなるのかな。
奏くんの集中力が切れないことを願いながら車を走らせ続けた。