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346、直人さんに初めて 奏side

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「おいしい、」

「美味しいね。」

斗真さんと一緒に食べるごはんはいっつも美味しい。
斗真さんより遅いけど一生懸命もぐもぐして全部食べる事ができた。

「ごちそうさまでした。」

「…ごちそうさまでした。」

一緒に両手を合わせて言えた。



ガチャ
ビクッ!

ドアが開く音に驚いて肩が上がる。
ゆっくり振り向くと直人さんと目が合った。

「おはよう。朝ごはん食べて偉いね。」

「…おはようございます」

「おはよう。」

強ばった体を斗真さんにさすってもらって少しずつ力を抜いた。

「今日も斗真の家行くの?」

「うん、そうだよ。」

「昼食は家で食べるの?」

「うん、何食べるか決まってないけど笑」

「弁当作ったら持って行く?」

「いいの?持って行く。」

「いいよ。俺も今日仕事遅いから弁当持っていこうと思ってさ、ついでだし作るよ。つっても大したもん作れないけどな笑」

「ありがとう。」

「奏くん食べられないものある?」

「うーん、体調によるけどある程度は食べられると思う。一応わかめスープ持って行こうかな。」

「そっかー、迷うな、ウインナーとかミートボールとか食べられる?」

「食べられると思うよ。」

キョトン
知らない言葉が飛び交う中自分のことを話してることだけが分かる。

「お昼ご飯父さんが作ってくれるんだって」

「直人さんもお家行くの?」

「あ、うーうん、俺は仕事だから行けないんだけど、お弁当っていってこのお弁当箱にごはん入れてお昼に斗真の家で食べてくれる?」

お弁当箱を見せてくれた。
お家から斗真さんのお家にごはんを持って行くんだ。

「食べる。ありがとうございます。」

「いいえ、食べたいものある?」

「………………斗真さんと一緒の…」

「ふふっ笑」

僕の言葉に何故か斗真さんが笑った。

「斗真と一緒かぁ…何にしようかな…」

「…お手伝いする。」

「え、あ、ありがとう。ありがとうなんだけどちょっと待って、うーん」

お手伝いしようと思ってキッチンに行くと直人さんが難しい顔をして冷蔵庫の中を見ていた。

「そんな難しく考えなくても多分食べれるよ笑」

「いや…でも…俺が好きなのって味濃いからさ……あっ、じゃあ奏くん味見してくれる?」

コクリ

「よし、今食べれられたら昼も食べられるよな。」

味見だけでいいの?
どうしたらいいかいいか分からず料理を始めた直人さんの横でソワソワしてしまう。

「奏くんおいでー、」

コクリ

斗真さんに呼ばれカウンターの椅子に座っている斗真さんの膝に乗って出来上がるのを待つことにした。





ガチャ
「おはよ~ん?何してるの?」

「父さんがお昼ご飯用の弁当作ってくれてる。」

「え、今日弁当要るの?!」

「いや、今日仕事遅いから作っていこうかなって思って作ってるだけだよ。それでついでだから斗真と奏くんのお弁当作ろうかなって思って。」

「そうだったんだ~ありがとう。材料足りる?桜のかまぼこも使っても良いわよ。」

「ありがとう。じゃあそれも入れようかな。
奏くん味見お願いしてもいい?」

コクリ

「斗真も味見お願い。」

僕が味見に戸惑ってると美香さんが小皿に斗真さんの分も置いてくれた。

パクッ

「おいしい」

「うん、美味しいね。」

全部のおかずを小さく切ってもらって食べた。

「食べれそうかな?」

コクリ

「ありがとう。じゃあお弁当に詰めるね。」

初めて食べるものばかりだったけど美味しかった。
直人さんも料理上手なんだ。

「デザートにフルーツ入れとくね。」

あ、食べたことある果物だ。

「奏くんが好きなみかんだね。」

嬉しくて身を乗り出すと、斗真さんが気持ちを代弁してくれた。

コクリ コクリ

「「へぇ~、みかん好きなんだぁ」」

直人さんと美香さんの声がピッタリ揃った。

「ふふっ笑 そうだよ笑」

「知らなかったわ~好きな食べ物見つかったのね~♡」

「じゃあ奏くんの方にみかん多めに入れとくね~」

「ありがとうございます。」

「いいえ~こっちが斗真でこっちが奏くんのね。残してもいいからね。食べられるだけ食べたらいいからね。」

コクリ
「ありがとうございます。…っ……っ」

初めてお弁当を作ってくれたこと嬉しくてまた目頭が熱くなってしまう。
泣いちゃダメ…せっかく僕のために作ってくれたのにここで泣いたら嫌な思いさせちゃうかもしれない。

「おいで、我慢しなくていいよ。嬉しいね。」

コクリ コクリ
泣いてるところを見られたくなくて斗真さんの胸に顔を押し付ける。

「お昼になったら一緒に食べようね。」

コクリ コクリ
「食べるっ…一緒に食べる。」

「そんなに喜んでくれたら作りがいがあるよ。こちらこそありがとう。」

「っ……ぅっ…っ……ありがとうございますっ……」

必死に泣き止んで直人さんにちゃんとお礼を言うと直人さんと美香さんが優しく微笑んでくれた。
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