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339、それは痛いよ。 斗真side

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パジャマを着て、ドライヤーをしている間もずっと左腕の傷を見つめていた。
普段痛くても痛そうな素振りを見せない奏くんがここまで腕を気にするってことは、かなり痛い?
でも、痛いことを隠したい奏くんに直接聞くと余計痛くないと頑なに教えてくれなくなってしまう。
とりあえず今すぐできることは冷やすくらいか、

「ちょっと待ってて、」

??…コクリ

ドライヤーを中断して、氷嚢を取りにキッチンへ向かった。

「どうしたの?」

「奏くんの腕が痛そうだから氷嚢取りに来た。」

キッチンに入ると母さんが聞いてきて、氷嚢を渡してくれた。

「腫れ引いてないの?」

「うん、赤く腫れてて、奏くんは痛くないって言ってるんだけど、明らか腕を気にしてて痛そうだからとりあえず冷やしてみるわ。」

「わかった。明日になっても腫れが引かなかったら考えようか。」

「うん、奏くん病院苦手だからできるだけ行きたくないんだよな。」

「そうね、」

「奏くん待たせてるから行ってくる。」

「はーい、何かあったら教えてね。」

「ありがと。」

キッチンを出て、奏くんが待つ脱衣所に向かった。

脱衣所に入るとさっきまで気にしていた腕を反対の手で握り締めていた。
?!
腕を圧迫させて痛くしてる?
自傷行為を疑ったが表情を見て違うことに気づいた。

「痛いな、氷嚢持ってきたからこれで冷やしてな。」

「痛い違うっ!痛いないっ」

目に涙を溜めて否定する奏くんのその言葉には信憑性はなく、否定も肯定も
せず氷嚢を患部に当てさせた。

「痛い違う…っ…っぅぅぅっ」

痛くないと泣きながら氷嚢を押し返す奏くんの手を上から押さえ当てさせる。

「痛いよ。」

「痛いないっ、痛いないのっ!」

「痛いよ。痛いときは痛いでいいんだよ。」

「違う!違う!」

「違わない。痛いときは痛いでいいの。誰も怒ってないし、誰ももう奏くんに痛いことなんてしないいから。」

「違う…違うの…」

痛くないと言い張る奏くんに痛い気持ちを肯定して伝えたが、やはり反論され余計引き下がらなくなってしまった。
こうなることは分かっていた。分かっていたが、痛くてもいいこと、もう痛いことをされないことを言葉で伝えたかった。
聞き入れることができなくても俺の言葉を聞くだけでいい。
聞くだけ聞いてほしかった。

「これいらない。」

「もう少し当ててて、」

フルフル

「ドライヤーが終わるまででいいから当ててて」

…コクリ

渋々だったが頷いてくれた。
風呂では素直に冷水に患部を当ててくれたが、氷嚢は嫌なようで眉間に皺が寄る。
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