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307、車が怖いんだよな 斗真side

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奏くんはキッチンで母さんに俺の家であったことを話している。

さっきよりは落ち着いてるんだけど左腕のサポーターを握りしめる右手が気になる。

「そっか~楽しかったのね。」

コクリ
「明日も…明日も行くの」

「楽しみね。」

コクリ


明日も行く予定だけど家より車がストレスだとは…
対策を考えなきゃな…っといってもどうしたらいい…
行きは休憩を挟んだけど帰りは真っ直ぐ帰ってきてしまった。それがダメだったのかな…?
休みながら帰るか…

病院までは15分、俺の家はその倍の30分1回の休憩でいいか…いや…2回…

車の何が怖いんだろう…透は音に過敏になってるのかもしれないって言っていたから音か?
フードを深く被って俯いてるから外も怖いのか?

もしかすると車自体にトラウマがあるのかもしれない…

車…エンジン音…外…密室…
今まで車でどこに行っていた…………仕事。

そっか…車に乗る=仕事に行く。
車に乗ると痛いこと、怖いこと、苦しいことが待っていると体が覚えているのか……
そのストレスで聴覚が過敏になり余計怖くなってるのかもしれない。

それなら、車に乗ったら楽しいことが待ってると思えたら少しは恐怖心を和らげられるかもしれない。

風呂のように楽しいことがあったら怖くても頑張れるかもしれない。

……んー、車で楽しいことな……

そういえば、前に病院行った時はアニメを流していたら夢中で観てくれてたな…

あの時は抱っこしてたから比較的落ち着いてたけど一人で座ってても観れるだろうか…

安心するには…匂い…温もり…んー、俺以外に安心感を得るには…
毛布…ぬいぐるみ…

ん………奏くんの心にすっと入って安心させれるようなもの…

俺が子どもの頃は…よくタオルケットやぬいぐるみを持ってたな…

ぬいぐるみ…奏くん動物好きだし気に入ってくれたら安心できるかな?
でも今、家に良さそうなぬいぐるみないな…買いに行くか、

「斗真さん…」

「ん?どうした?」

「おやつ…」

「ああ、帰ったらおやつ食べる約束してたもんな。何食べたいかな?」

「おやつ食べるの~?」

「うん、なんかある?」

「スナック菓子はあるけど…そうだ!!奏くん、クッキー作ってみる?」

「クッキー?」

「甘くてサクサクしたお菓子だよ。」

「…コクリ、作りたい!」

「よし!作ろ~!!」

嬉しそうにキッチンに戻って自ら袖をまくって準備をしている。
さっきまでの強ばった感じは無くなって目を輝かせている。
今なら母さんに奏くんを預けて買い物行けるかな。

「ちょっと買い物行ってくる。奏くん、母さんと一緒にお留守番できる?」

………コクリ
さっきまで楽しそうな顔をしてたのに俺と離れると聞いて表情が曇る。
それでも渋々頷いてくれた。

「すぐ戻るから、それまで母さんといてね。」

ギュー

「美味しいクッキー楽しみにしてるから、」

ハッ  コクリ コクリ

「美味しいの作ろうね笑  いってらっしゃい。」

「いってきます。」
奏くんと母さんに見送られ家を出る。
よし、行くか、クッキーが出来上がるまでに帰ろう。
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