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273、ザワザワが静まるまで 奏side (11日目)

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胸がザワザワ騒がしい

目の前は真っ黒でまるでお家に帰った時のような感覚…
痛みから体を守れるように足を抱えて座る。

ここはどこ…
お家?

じっと息を潜めて痛みを待っていると誰かに触られた。
一気に恐怖が襲ってきて抵抗するもかなわず、引き寄せられる。
そこには僕の大好きな斗真さんの匂いがあった。
このままだと恐怖で心が破裂してしまいそうで斗真さんを求めて手を伸ばした。

「はぁ…はぁ…斗真さん!どこ…どこ…斗真さんっ」

「ここだよ。ここにいるよ。大丈夫、大丈夫、」

求めていた斗真さんの大きな手が僕の手を握ってくれた。
これで安心できる、そう思ったのに心を支えていた細い糸が切れたように息が苦しくなった。

「はぁはぁはぁはぁはぁ…はぁはぁはぁはぁはぁ」

「大丈夫、大丈夫、ゆっくり、ゆっくり、」

斗真さんの声、匂い、感覚に集中して心を落ち着かせる。


斗真さん、行かないで…斗真さん……斗真さん…

何度も斗真さんの存在を確認するため手に力を入れたり、大きく息をして斗真さんの匂いを嗅いだりしてそばに居ることを何度も確認した。




 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


……ッ…

斗真さん…、

斗真さんの胸に顔を押し付けて大きく息をする。


見上げると斗真さんの寝顔が見える。
僕が座ってたから斗真さんも座ってくれてたんだ。
僕は斗真さんにもたれかかってたから体痛くないけど斗真さんは首とかお尻とか痛くないのかな?

布団に寝かせてあげたいけどそんな力ないし…
どうしようか考えモゾモゾしてると斗真さんが起きてしまった。

ハッ……どうしよう起こしちゃった…

「おはよ。眠れた?」

コクリ
「ごめんなさい…」

「?? どうした?」

「僕が座ったから…斗真さんも座って寝ちゃって…体痛い?」

「大丈夫だよ。そんなことより奏くんは体調どう?俺のことちゃんと見えてる?」

コクリ

「ここがどこかも分かる?」

コクリ

「よし、良かった。おいで、」

両手を広げる斗真さんの胸に飛び込んだ。

ッ…

「もう少し寝よ。眠れる?」

抱きつくとそのまま布団に倒れた。

………眠れるかな…

「寝なくてもいいから目瞑って横になってようか、」

コクリ
目瞑るだけならできるかな、

斗真さんの上に乗ったまま目を瞑った。
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