こころ・ぽかぽか 〜お金以外の僕の価値〜

256、言わない気持ち 奏side

美味しかった。
色んな果物をたくさん食べて幸せでいっぱいになった。
「お腹いっぱいになった?」

ｺｸﾘ
「お腹いっぱいなった、」

「良かったね。おいで、」

ｺｸﾘ

斗真さんの膝の上に乗ってひと休みする。
「眠たかったら寝てもいいよ?」

ﾌﾙﾌﾙ

お腹がいっぱいになるといつも眠たくなっちゃう…
けど、ずっと寝てたらダメだ。

ここに来るまでほとんど寝ずに過ごしてきたのにここに来てからずっと寝てる。
しかも人前で…いくらここの人は痛いことをしないからといってこのままじゃダメになっちゃうんじゃないか…

ここの生活に慣れたら僕がいた元の生活に戻れなくなってしまう…

幸せな時間はずっとは続かない。そんなこと分かってる。分かってるんだ。
だから、自分の心を守るためにもここの生活に慣れ過ぎたらダメだ。

「大丈夫?お腹痛い?」

?　　ﾌﾙﾌﾙ

「本当に?眉間に皺寄せて怖い顔して何かあったんじゃない?」

ﾌﾙﾌﾙ

「教えてほしいな、俺には言いづらい?」

…ﾌﾙﾌﾙ

「そっか…分かった。言いたくなったら教えてね。」

…ｺｸﾘ

きっと僕の気持ちを聞いたら斗真さんは否定してくれる。
けど…人は心変わりするから…その時傷付くのは僕なんだ…自分の心は自分で守る。
僕はそれを何年もかけて学んだ。



「横になっても良い?」

ｺｸﾘ

斗真さんの腕に包まれたままベッドに横になる。
眠たいのかな?

ｯ…
どうして…
横になると溜めることもできず涙がツーっと目尻から溢れる。
それを知ってか知らずか僕の後頭部に手を当てて軽く胸に押される。

バレたくない…
涙の理由を聞かれたくなくて、声を殺して涙が止まるのを待つことにした。