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225、俺の痛み 斗真side
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泣き腫らした目は赤くなっている。
「寝てもいいよ、」
眠たそうに重たい瞬きを繰り返すがどこかをボーッと見つめ寝ようとはしない。
体温も少し高いし、きっと眠いのだろう。
「………っ…ぃ……」
?
「どうした?」
「……ぃゃ……」
「いや?」
「…もぅ…いゃ…っ…」
止まっていた涙がまた溜まっていく。
「嫌なの?」
「…っぅ…やだ…っ…」
苦しそうに胸元をギュッと掴む。
「何が嫌?」
「……ぜんぶ…ぜんぶいや…もう…嫌…」
辛そうに絞り出した「全部、嫌」の言葉に胸がギュッと痛む。
「嫌い…嫌い…僕なんか…嫌いっ!」
っ!
「ダメだよ」
首に爪を立てた手を離させる。
赤く爪の痕が残った首を優しくさする。
今までは痛みで嫌なことを上書きしようとしていた。
けど、今のは自分を敵視する行動。
エスカレートする前に辞めさせなきゃ、
「っ!やなの!」
「嫌でも、ダメなものはダメ。」
「やだ…やだ……」
珍しく俺に怒られてもなお自分を傷付けようと首に手を持っていく。
「それしない。」
「ぅ…ぅう……んー、」
思い通りにいかなくてまた癇癪を起こしだした。
「唸ってもダメ、痛いことするのはダメ。」
「…違う…違う!」
「何が違う?」
「商品違う!違うの!」
大きい声で訴えた言葉は親から言われた言葉だった。
「奏くんは商品なんかじゃないよ。それは違う。
けど、商品じゃなくても体を傷付けるのはダメ。」
「僕の!僕の体!僕の!」
「奏くんの体だよ。分かってるよ。
それでも、お願いだから傷付けないで?お願い、」
「…なんで…なんで…」
納得がいかず握りこぶしを自分の太ももに押し付ける。
「だから…それやめて?痛くなっちゃうよ、」
手首を掴んで辞めさせると、目を真っ赤にさせて俺を見つめて口を開いた。
「なんで…僕の体…」
「うん、奏くんの体だよ。商品じゃない。
けど、奏くんの体だからって何しても良いわけじゃないよ。
傷付けたらダメ。」
「…なんで…なんで…なんで!!!
僕の体!痛いも僕だけ!痛いないと…痛いないと…僕…僕……っ」
泣きながら「なんで」を繰り返す。
俺も子どもの頃同じことを思ってる時期があった。
自分の体なんだから自分の勝手じゃんって、だから俺が何をしようと周りの人には関係ないって…
その考えを正してくれたのは母さんだった。
日々のストレスで小さい自傷行為が治らなかった俺に母さんは心の繋がりをくれた。
「痛いのは奏くんだけじゃないよ。」
「違う!痛い僕だけ!」
「奏くんだけじゃないよ。奏くんが痛いと俺も痛いよ。」
「違う!違う!僕の!僕の!ぅう…」
カチカチカチ…サパッ
「…ぇ…斗真さん…?…っ…ぇ…はぁ…はぁ…」
以前奏くんから没収したカッターを机の引き出しから取り出し、勢いよく自分の左手首を切りつけた。
それを見た奏くんは慌てて止血しようとするが思った以上に切ってしまいなかなか血が止まらない。
「どうしよう……どうしよう……えっと…えっと…」
軽くパニックにはなっているが、震えた手でその場にあったタオルを強く当ててくれる。
「どうしよう…止まらない……どうしよう…はぁ…はぁ…はぁ…はぁはぁ」
動揺して呼吸が浅くなる。
そろそろいいかな、
「奏くん、今ここ、痛いよね?」
奏くんの胸からお腹にかけて撫でると涙をぼろぼろ零しながら静かに頷いた。
「痛いよね、俺も同じだよ。奏くんが体傷付けたら俺も奏くんと同じように痛くなるの。それでも奏くんは自分だけが痛いって言える?」
「………でも…でも…」
「それに、痛みって人によって感じ方が違うんだよ。奏くんにとっては小さな痛みでも俺は痛みに弱いから少しでもすっごく痛く感じるんだよ。」
「痛い違うの…?」
「違うよ。俺は痛みに慣れてないから、奏くんが体傷付けたら俺はすっごく痛いんだよ。
だから、傷付けないでっていうお願い聞いてくれる?」
「…………コクリ…」
自傷行為は直ぐに辞めれるものじゃない。それは十分に分かっている。だから、悩みながらも頷いてくれたことがスゴく嬉しかった。
「っ!血!…斗真さん痛い!止める!」
血が床に垂れてるのを見て思い出したように慌てだした。
あら…全然止まんないな…そんなに深く切ってないと思うんだけどな…
?!
ドタッ!ガチャ!
奏くんは慌てた様子で部屋を飛び出して行った。
ここに来て、こんなに自分から行動したの初めてだなぁ
なんて、止まらない血を見ながら呑気に思った。
「寝てもいいよ、」
眠たそうに重たい瞬きを繰り返すがどこかをボーッと見つめ寝ようとはしない。
体温も少し高いし、きっと眠いのだろう。
「………っ…ぃ……」
?
「どうした?」
「……ぃゃ……」
「いや?」
「…もぅ…いゃ…っ…」
止まっていた涙がまた溜まっていく。
「嫌なの?」
「…っぅ…やだ…っ…」
苦しそうに胸元をギュッと掴む。
「何が嫌?」
「……ぜんぶ…ぜんぶいや…もう…嫌…」
辛そうに絞り出した「全部、嫌」の言葉に胸がギュッと痛む。
「嫌い…嫌い…僕なんか…嫌いっ!」
っ!
「ダメだよ」
首に爪を立てた手を離させる。
赤く爪の痕が残った首を優しくさする。
今までは痛みで嫌なことを上書きしようとしていた。
けど、今のは自分を敵視する行動。
エスカレートする前に辞めさせなきゃ、
「っ!やなの!」
「嫌でも、ダメなものはダメ。」
「やだ…やだ……」
珍しく俺に怒られてもなお自分を傷付けようと首に手を持っていく。
「それしない。」
「ぅ…ぅう……んー、」
思い通りにいかなくてまた癇癪を起こしだした。
「唸ってもダメ、痛いことするのはダメ。」
「…違う…違う!」
「何が違う?」
「商品違う!違うの!」
大きい声で訴えた言葉は親から言われた言葉だった。
「奏くんは商品なんかじゃないよ。それは違う。
けど、商品じゃなくても体を傷付けるのはダメ。」
「僕の!僕の体!僕の!」
「奏くんの体だよ。分かってるよ。
それでも、お願いだから傷付けないで?お願い、」
「…なんで…なんで…」
納得がいかず握りこぶしを自分の太ももに押し付ける。
「だから…それやめて?痛くなっちゃうよ、」
手首を掴んで辞めさせると、目を真っ赤にさせて俺を見つめて口を開いた。
「なんで…僕の体…」
「うん、奏くんの体だよ。商品じゃない。
けど、奏くんの体だからって何しても良いわけじゃないよ。
傷付けたらダメ。」
「…なんで…なんで…なんで!!!
僕の体!痛いも僕だけ!痛いないと…痛いないと…僕…僕……っ」
泣きながら「なんで」を繰り返す。
俺も子どもの頃同じことを思ってる時期があった。
自分の体なんだから自分の勝手じゃんって、だから俺が何をしようと周りの人には関係ないって…
その考えを正してくれたのは母さんだった。
日々のストレスで小さい自傷行為が治らなかった俺に母さんは心の繋がりをくれた。
「痛いのは奏くんだけじゃないよ。」
「違う!痛い僕だけ!」
「奏くんだけじゃないよ。奏くんが痛いと俺も痛いよ。」
「違う!違う!僕の!僕の!ぅう…」
カチカチカチ…サパッ
「…ぇ…斗真さん…?…っ…ぇ…はぁ…はぁ…」
以前奏くんから没収したカッターを机の引き出しから取り出し、勢いよく自分の左手首を切りつけた。
それを見た奏くんは慌てて止血しようとするが思った以上に切ってしまいなかなか血が止まらない。
「どうしよう……どうしよう……えっと…えっと…」
軽くパニックにはなっているが、震えた手でその場にあったタオルを強く当ててくれる。
「どうしよう…止まらない……どうしよう…はぁ…はぁ…はぁ…はぁはぁ」
動揺して呼吸が浅くなる。
そろそろいいかな、
「奏くん、今ここ、痛いよね?」
奏くんの胸からお腹にかけて撫でると涙をぼろぼろ零しながら静かに頷いた。
「痛いよね、俺も同じだよ。奏くんが体傷付けたら俺も奏くんと同じように痛くなるの。それでも奏くんは自分だけが痛いって言える?」
「………でも…でも…」
「それに、痛みって人によって感じ方が違うんだよ。奏くんにとっては小さな痛みでも俺は痛みに弱いから少しでもすっごく痛く感じるんだよ。」
「痛い違うの…?」
「違うよ。俺は痛みに慣れてないから、奏くんが体傷付けたら俺はすっごく痛いんだよ。
だから、傷付けないでっていうお願い聞いてくれる?」
「…………コクリ…」
自傷行為は直ぐに辞めれるものじゃない。それは十分に分かっている。だから、悩みながらも頷いてくれたことがスゴく嬉しかった。
「っ!血!…斗真さん痛い!止める!」
血が床に垂れてるのを見て思い出したように慌てだした。
あら…全然止まんないな…そんなに深く切ってないと思うんだけどな…
?!
ドタッ!ガチャ!
奏くんは慌てた様子で部屋を飛び出して行った。
ここに来て、こんなに自分から行動したの初めてだなぁ
なんて、止まらない血を見ながら呑気に思った。
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