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220、我儘な心 奏side
しおりを挟む昨日透さんにトイレを手伝ってもらって、斗真さんにもお願いしてもいいって言ってくれた…けど、どうやってお願いしたらいいか分からなくなっていた時斗真さんから昨日どうやったかを聞いてくれて、透さんと同じように手伝ってくれるって言ってくれた。
ほっと安心した。
これでトイレが怖くなくなるかもしれない…
強制的に出していた時はお父さんが手伝ってくれていた。
毎日使って切れたおしりの穴に無理やりお風呂でシャワーのホースをねじ込んでくる。
それだけでも傷口が痛むのにだんだんお腹も痛くなってきて…
苦しくて出したいのにお父さんは嬉しそうに僕の歪んだ顔を気が済むまで楽しむ。
僕が辛いとお父さんは喜ぶ。
それはいつものこと…なのに…なぜかこの時はいつも胸がギューっていたくなるんだ…
本当は辛くて…お父さんに助けてほしいのに…裏切れた気持ちになって胸が締め付けられる。
頭の中が矛盾で黒く染まる。
自分の気持ち
親の気持ち
自分の気持ちを優先したい気持ちと親の気持ちに沿いたい気持ちと…
自分の気持ちは言っても叶わない…だから言葉にすることを辞めた。
けど…斗真さんは違う…
斗真さんは僕の願いを叶えてくれる…
嫌なことはしない…
一緒にいたいと言ったらそばにいさせてくれる。
怖いと言ったら守ってくれる。
ギューしてほしいって言ったらギューしてくれる。
もっとのチューもしてくれる。
どうしてそんなに僕に優しくしてくれるの?
その優しさはいつも僕を安心させてくれる。
けど…たまにその優しさが怖くなる。
お父さんとお母さんと斗真さん…違いすぎてどう接するのが正解なのかが分からない。
お父さんとお母さんとの繋がりはお金だった。
けど、僕と斗真さんとの繋がりは何もない。
僕は斗真さんが好きで好きと言ったら斗真さんも好きだと返してくれる。
けど……足りない……
また…我儘になってる……
ここに来て自分がどんどん我儘になっていく…こんな自分嫌だ…
もう十分なくらい貰ってるのに…
これ以上求めたらダメだ…
だって…僕はまだ斗真さんに1つも返せてないじゃないか………
「奏くん?」
っ!
「どうした?」
ベッドに座って考えていたら寝転んでる斗真さんが顔を覗き込んでいた。
急に目が合って体が跳ねた。
「ごめん、驚かせちゃった?
どうしたの?難しい顔してたよ」
フルフル
「大丈夫…大丈夫…」
小さな声で自分の言い聞かせるように呟き、緩くなった心の紐を強く括り直した。
「…俺に教えるのは難しい?」
「……ごめんなさい…大丈夫…大丈夫だから…」
悲しい顔をする斗真さんを見て心が痛んだが今、言葉を一つ落としたら全部零れてしまいそうで…
我儘な心まで全部…
我儘な心を隠していたくて下唇を噛む。
キュッと喉が硬くなる感覚がして少し心が落ち着いた。
これで声を出したくても出ない。
我儘な僕の心も出てこない。
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