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186、不安で固くなった奏くん 斗真side

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いくら奏くんの名前を呼んでも反応しなくなった。
少しでも安心してほしくて、フードで視界を狭くして包み込む。

グーグー

弱い力で胸を押された。

その手は震えていてた。

「大丈夫、怖くないからね。大丈夫、大丈夫」

チュッ
何をしてあげるのが正解か分からず小さな顎をクイッと持ち上げ固く閉じた唇にそっと触れるだけのキスをした。

唇がふぁっと開き、目が合った。

「…ぁ…」

「おかえり、」

「んっ…」

瞬きを繰り返して俺の胸に顔をグリグリ押し付けた。

「……もう1回…」

「良いよ。」

もう一度キスをする。
でも、納得がいかないのか口を尖らせた。

「違う…もっと…」

もっと…多分ディープキスのことを言ってると思うが今は車の中でそろそろ透が戻ってくるし、もしここで勃っちゃったら大変だし…

「うーん、今はちょっと…お家帰ったらしてあげる。」

「…なんで…」

「なんでも、…今から病院頑張ったら何回でもしてあげる。」

「何回でも?」

「うん、何回でも、病院頑張ったご褒美はそれで良い?」

コクリ
「ご褒美」

満足そうに自分の唇を触る。

「可愛いな、頑張ろうな。」

コクリ グリグリ

また顔を擦り付けてきた。






ガチャ

「お待たせ、奏くんの様子どう?」

名前を呼ばれてゆっくりと振り返る。

「俺の事分かる?」

「透さん…」

「よし、声も出てるな。」

わしゃわしゃと頭を撫でてもらって目を細める。

「診察までもうちょっと時間あるけど、車と俺の診察室どっちがいい?」

車の方が精神的に安定してそうだけど、いきなり診察ってのもまた警戒しそうだしな…

「透の診察室で少し慣らしてから行く方がいいかな?」

「そうだな、そうしようか、」

車を降りた途端奏くんは固まって地面を見つめる。

「おいで、抱っこしていこうか、」

抱き上げると服を握りしめてピッタリとくっつく。

鼓動が早くなってる…

「急ごうか、こっち」

透に着いて院内に入る。

人が怖いのか肩に顔を押し付ける。




「着いたよ。ベッドでゆっくりしようか、」

ベッドに下ろそうとしたが服を離してくれなくて抱きしめたまま座った。

診察の時間まであと15分くらいあるけど…それまでには落ち着くかな?

犬に会えるって楽しみにしてたのに、このままじゃ会っても楽しめない。
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