こころ・ぽかぽか 〜お金以外の僕の価値〜

神娘

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185、失う 奏side

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さっきまで普通だったのに、病院に行くってなった途端体が言うことを聞かなくなった。
斗真さんに顔を押し付けて視界を遮って斗真さんの匂いで頭をいっぱいにする。

それでも頭は怖いを優先した。


「奏くん?見てーわんちゃん出てきたよー」

斗真さんの声、見上げる。

「あっち、見てごらん、」

指をさす方をゆっくり見る。
そこには男の子と楽しそうに遊ぶわんちゃんがいた。

「わんちゃん…」

「うん、わんちゃん、可愛いね。今から本物のわんちゃんに会えるよ。」

「わんちゃん…会う。」

「うん、会おうね。」

少し見づらかったけど車の中はやっぱり怖くて斗真さんの服をぎゅっと握ったまま顔だけ向けた。

何度か外の人が怖くて斗真さんの胸に顔を押し付けたけど、斗真さんの匂いや温もりを感じて落ち着いたらまたテレビを見る。
その繰り返しをしていた。

「そろそろ着くよ~」
透さんの声で病院に向かっていたことを思い出す。

見渡すと車がいっぱい止まっている。

人が歩いてる。当たり前のことなのに知らない人が怖くて下を向く。

「ちょっと待ってて、先に受付済ませてくる。」

透は車を降りて病院に入っていった。

僕も今からここに入るんだ…
急に実感して怖くなってきた。

「大丈夫、大丈夫、」

何も言ってないのに斗真さんはいつものように優しく抱きしめてくれた。

行きたくない…
ここまで来てそんなの言えない…
それに、もう既に喉は固くなって声が出なくなっている。

前ここに来た時もこうだった…
声も涙も出なくて、頭も動かなくなる。

「奏くん?」

斗真さんの声…聞こえるけど反応できなくてぼーっと一点を見つめる。

「ずっと一緒にいるからね。」

フードを深く被らせてもらって、手を包み込まれた。

感覚はある…ちゃんと斗真さんは感じれてる…
大丈夫…まだ大丈夫…
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