こころ・ぽかぽか 〜お金以外の僕の価値〜

170、黒と赤 奏side

「弱音を吐けるのは強い人なんだって、」

？？？

斗真さんに急に言われてどういう意味か分からなくてじっと見つめる。

「俺、昔から弱音吐くの苦手でさ、小さい頃は吐き出し方が分かんなくてよく爆発してたんだ。」

「よわね…？」

「うーん、弱音っていうのは、辛いとかしんどいとか…痛いとか、苦しいとかを言葉にすることかな。」

……それ…僕も…できない…
言葉にしたら認めたみたいで、再確認するみたいで壊れてしまいそうになるのが怖くて…吐き出さずに心に押し込む方が楽だから見えないフリして蓋をするんだ。


「それが未だに苦手で辛くても平気なフリして笑って過ごして、でも心はいっつも限界だよ～って泣いててさ、
自分でも直さなきゃ分かってるんだけどね、辛いことを辛いて受け入れるのってすごい難しいんだよね…
もっと俺が強かったら、辛さを包み込めるくらい心が強かったらもっと楽だったのかなって、いっつも思うんだよね。」

「…難しい…」

「奏くんも？」

…ｺｸﾘ、
「僕は…黒と赤の弱音を心の箱に押し込んで蓋をする…
痛い…言葉にしたらもっと痛くなる…
赤を黒で包んだら見えなくなる。ないと同じになるから…」

「黒と赤って何？」

「え？…黒は絵の具、赤は血」

「絵の具？」



「黒は目隠し、見たくないものを覆い隠すもので、赤は痛み？」

透さんがゆっくりと近づいてきた。

ｺｸﾘ

「痛いと真っ赤になるから黒で包んだら痛くないでしょ？」

？違うの？

斗真さんは辛そうな顔で、透さんは優しい顔で僕を見る。


何か変なこと言っちゃったのかな？
分からなくて黙って俯く。