こころ・ぽかぽか 〜お金以外の僕の価値〜

167、痛みとは 奏side

斗真さんの胸に耳を当ててぼーっとする。
心臓の音と斗真さんの匂いで心が穏やかになる。

こうやってぼーっとしたり、心が穏やかになるなんて今まで無かった。
ずっと警戒して胸がドキドキ、ザワザワして胸が静かになるのは痛みを感じなくなる時だけ。

この家に来てまだ数日だけど僕は…変わっちゃった…





もう…戻れない…

もし戻ったら心が壊れてしまう。

今まで培ってきた慣れや痛みを感じなくなるように意識を飛ばす方法。
こんな温かいとこに慣れちゃったらもうできない…


斗真さんはずっとそばにいていいって言ってくれた。
けど…そんなの分かんない。
だから少なくともいつでも戻れるようにここに染まらないように…って思ってたけど…

自分でも分かるくらい染まっちゃった…



「んー、んー、んー」

不安がどろどろと僕の中に流れ込んでくる。

不安に飲み込まれそうになって、奥歯をギュッと噛み締めて右手で左手首を握りしめ爪を立てる。

ピリッとした痛みがまた心を落ち着かせてくれる。




痛み…


痛みは嫌い

痛みは怖い…

けど…痛みはお金をくれる。
痛みは安心をくれる。


僕にとって痛みは手放せない存在。