こころ・ぽかぽか 〜お金以外の僕の価値〜

148、どうしてそんなこと 斗真side

痛みを我慢するのが得意…
そんなの得意にならなくていい…

自虐でもない真っ直ぐな目で言われ何て返したら良いかが分からなくなった。

奏くんにとっての当たり前は俺にとっての当たり前とは180度違う。
そんなことはもう分かってる。
けど、その当たり前をどうやったら変えてあげることができるのかはまだ分からない。

もしあの日奏くんの両親が事故に遭わなかったら今日も暴力に耐えていたんだろう。
そして、俺は何も知らずのうのうと過していたんだろう。





「斗真さん…」

「どうした？」
ギュッと裾を握りしめながらこっちを見ている。

「殴る？」

「え？…」

急になんの話？殴る？どうしてそんなことを…

「殴る…いいよ。」

「殴らないよ？どうした？何かあったか？」

「…うーうん、大丈夫…」

なんでもないと下を向く奏くんをほっておけない。
何か嫌な感じがする。

「奏くん？どうして殴るって聞いてきたの？」

「痛みが無くて不安になったか？」

透が隣から言ってきた。

ﾌﾙﾌﾙ
「…大丈夫…ごめんなさい…なんもない…」

「何も無くないでしょ。辛いね。」

透が奏くんの頭を撫でるが頭を振って抵抗する。
「辛くない。…辛くないの…」

「そっか、じゃあここが痛いのはなんでかな。」

「痛い大丈夫なの…大丈夫なの！」

胸が痛いことを言われて大声で否定した。
急に出た大きい声に驚いた。

「無理に大丈夫って思わなくていいんだよ。辛い時は辛いでいいよ。」

「…違う…違うもん…」

「そっか、辛くないか、分かったよ。」



「…っんー、んー、」
やっぱり胸が痛いのか胸元の服を握りしめながら唸っている。