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146、拒否反応 斗真side
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お粥も半分残して夕食を終えた。
口にものが入るのを嫌がっているようにも見えたが奏くんは必死に飲み込んでいた。
何度か透が奏くんの背中をさすっていたがその度に出したくないと首を横に振って目に涙を溜める。
今は薬と戦っている。
いつも薬は嫌がるが今日は一段と嫌がっている。
「痛み止めだから絶対飲まなきゃいけないわけじゃないけど、飲んだ方が体楽になるよ?」
透に言われるが唇をぐっと閉じて眉間に皺を寄せる。
「あと5分経って無理だったら今日はやめとこう。パニック起こして吐いたりしたら余計辛くなるから。」
「分かった。」
透に耳打ちされ時間を確認する。
できれば飲んで欲しいけどそれで余計奏くんが辛い思いをすることは避けたい。
「…っ」
?
奏くんの表情がスっと変わった。
透もその瞬間を見逃さなかった。
薬に手を伸ばす奏くんの腕を掴んで薬を離した。
「今日は薬やめとこうか、痛みが酷かったら飲もうね。」
「っ!の…むっ」
「無理に飲まなくていいよ。大丈夫、大丈夫、」
「飲む!はぁ…はぁはぁはぁはぁ…」
「大丈夫、大丈夫、ゆっくり息しよう。だーいじょうぶ、だーいじょうぶ、…」
「できる…できる…」
「大丈夫、怒ってないよ。大丈夫、薬はまた今度にしようね。」
「いや…やだ…できる…できるの…」
震えた小さな手は薬に伸びる。
「透、飲めるって言ってるし飲ましたらいいんじゃないか?」
「ダメだ。今飲んだらパニックを起こす。」
「え…?」
取り上げられたから飲めるって意固地になってるだけじゃないのか?
透が考えていることが分からない。
「奏くん、俺が誰か分かる?」
なんでそんな質問、
「……っ…」
奏くんは目を泳がせて答えられない。
「顔見える?」
「……みえない…」
え…?
「やっぱり見えてないか、俺は透。透が誰か分かる?」
「分かる…透さん…」
「そ、透、俺は透。こっちは斗真、」
「斗真さん…どこ…斗真さん…斗真さん…」
奏くんの手は俺を探す。
「ここだよ。」
手を握るが目は合わないまま。
目が覚めた時と一緒だ…あの時も見えてなかった。
「斗真に抱っこしてもらおうか、」
透に抱き上げられ俺の元に来る。
「おいで、」
奏くんを膝の上に乗せソファーに座る。
「大丈夫、多分落ち着いたらまた見えるようになる。」
そう言って透も横に座る。
「ストレスが原因で脳が拒否反応を起こしてるんだ。
今まで見たくない物が多すぎたんだよな。」
「…治るのか?」
「時間はかかるけど治るよ。いや、治す。」
「うん…」
「普通ならさっきパニックを起こしてもおかしくなかった、でも俺らって分かってパニックを起こさないどころか落ち着いたんだ。奏くんが俺らを受け入れてる証拠だ。希望はあるよ。」
「斗真さん…」
「どうした?」
「あ…」
奏くんがしっかりと俺を見つめている。
「見えるようになったか、」
「良かった…」
「大丈夫?痛い?」
奏くんは泣きそうな俺の胸を撫でてる。
人の心配より自分の心配しろよ…
「斗真さん?」
包み込むように抱きしめて静かに涙を流す。
こんな姿奏くんに見せたらもっと心配かけてしまう。
奏くんにはもっと自分のことだけを考えてほしい。
そう思うけどそれは叶わないのかな。
「透さん、斗真さんの痛い治す薬ある?」
「あるよ。」
「ちょうだい、斗真さん薬飲もう。」
「飲む薬じゃないんだ。奏くんの手を斗真の背中に回して、 そう上手。それでぎゅーってしてあげて、」
「こう?」
「そ、上手。それで痛いの治るよ。」
「斗真さん、痛い治る?」
「…っ…ぅ…」
返事をしようとするけど声を出すと泣き声なってしまうから何度も頷いた。
口にものが入るのを嫌がっているようにも見えたが奏くんは必死に飲み込んでいた。
何度か透が奏くんの背中をさすっていたがその度に出したくないと首を横に振って目に涙を溜める。
今は薬と戦っている。
いつも薬は嫌がるが今日は一段と嫌がっている。
「痛み止めだから絶対飲まなきゃいけないわけじゃないけど、飲んだ方が体楽になるよ?」
透に言われるが唇をぐっと閉じて眉間に皺を寄せる。
「あと5分経って無理だったら今日はやめとこう。パニック起こして吐いたりしたら余計辛くなるから。」
「分かった。」
透に耳打ちされ時間を確認する。
できれば飲んで欲しいけどそれで余計奏くんが辛い思いをすることは避けたい。
「…っ」
?
奏くんの表情がスっと変わった。
透もその瞬間を見逃さなかった。
薬に手を伸ばす奏くんの腕を掴んで薬を離した。
「今日は薬やめとこうか、痛みが酷かったら飲もうね。」
「っ!の…むっ」
「無理に飲まなくていいよ。大丈夫、大丈夫、」
「飲む!はぁ…はぁはぁはぁはぁ…」
「大丈夫、大丈夫、ゆっくり息しよう。だーいじょうぶ、だーいじょうぶ、…」
「できる…できる…」
「大丈夫、怒ってないよ。大丈夫、薬はまた今度にしようね。」
「いや…やだ…できる…できるの…」
震えた小さな手は薬に伸びる。
「透、飲めるって言ってるし飲ましたらいいんじゃないか?」
「ダメだ。今飲んだらパニックを起こす。」
「え…?」
取り上げられたから飲めるって意固地になってるだけじゃないのか?
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「奏くん、俺が誰か分かる?」
なんでそんな質問、
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奏くんは目を泳がせて答えられない。
「顔見える?」
「……みえない…」
え…?
「やっぱり見えてないか、俺は透。透が誰か分かる?」
「分かる…透さん…」
「そ、透、俺は透。こっちは斗真、」
「斗真さん…どこ…斗真さん…斗真さん…」
奏くんの手は俺を探す。
「ここだよ。」
手を握るが目は合わないまま。
目が覚めた時と一緒だ…あの時も見えてなかった。
「斗真に抱っこしてもらおうか、」
透に抱き上げられ俺の元に来る。
「おいで、」
奏くんを膝の上に乗せソファーに座る。
「大丈夫、多分落ち着いたらまた見えるようになる。」
そう言って透も横に座る。
「ストレスが原因で脳が拒否反応を起こしてるんだ。
今まで見たくない物が多すぎたんだよな。」
「…治るのか?」
「時間はかかるけど治るよ。いや、治す。」
「うん…」
「普通ならさっきパニックを起こしてもおかしくなかった、でも俺らって分かってパニックを起こさないどころか落ち着いたんだ。奏くんが俺らを受け入れてる証拠だ。希望はあるよ。」
「斗真さん…」
「どうした?」
「あ…」
奏くんがしっかりと俺を見つめている。
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「あるよ。」
「ちょうだい、斗真さん薬飲もう。」
「飲む薬じゃないんだ。奏くんの手を斗真の背中に回して、 そう上手。それでぎゅーってしてあげて、」
「こう?」
「そ、上手。それで痛いの治るよ。」
「斗真さん、痛い治る?」
「…っ…ぅ…」
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