こころ・ぽかぽか 〜お金以外の僕の価値〜

神娘

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143、やっぱり 奏side

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斗真さんは痛いことも苦しいこともしないって言った。

斗真さんはいつも優しくしてくれるから信じたい。
…信じたいけど、体は警戒を解いてくれない。
強ばった体は言うことを聞いてくれない。

「大丈夫、怖くないよ。大丈夫、大丈夫、」


硬く閉じた脚を少しずつ開くと、その間に手が入ってきた。

「怖いね、やめる?」

ハッ
思わず脚を閉じて斗真さんの腕を挟んでしまった。

「ごめんなさい…ごめん…なさい…」

「ごめん、やっぱりやめよう。落ち着いたら治まるから。」

怖くないって自分の気持ちに蓋をしていたのに、我慢できなくなって一気に吹き出した。

「怖かったね。ごめんね、もうしないよ。大丈夫、大丈夫。」

抱きしめてもらって静かに泣いた。

斗真さんは僕のためにしてくれたのに、僕は斗真さんを信じきれなかった。

「ごめんなさい…ごめんなさい…っ」

「大丈夫、奏くんは悪くないよ。俺こそごめんね。気分転換しようか、」

コクリ

抱き上げられ縁側に行く。

「今日は何かいるかな?」

「ぁ…」

「すずめだね。」

触りたくて斗真さんの上にから降りる。
前はすぐに飛んで行っちゃったから今回は驚かさないように静かに近づく。


「…あっ」

触ろうと手を伸ばしたら飛んで行ってしまった。

もうちょっとだったのに…

寂しくなって斗真さんの方を見る。

「惜しかったね。おいで、」

両手を広げた斗真さんの元に走って行く。

「お、足もちゃんと力入るようになってる。良かったぁー、」

斗真さんに脚をさすられてさっき上手く歩けなかったことを思い出す。

そういえば、おちんちん…
視線を落とすとズボンの膨らみもなくなってる。

「治まったね、良かった。」

コクリ

怖いのもなくなって斗真さんに思いっきり抱きつく。

「ん?どうした?」

スリスリ
なんだか心が軽くて斗真さんの胸に顔を擦りつける。
斗真さんの匂い。

「不安だったんだな。」

不安…でも斗真さんがいるから…不安ちがう…

「不安ない…」

「本当に?俺は不安だったよ。」

「斗真さん…も?」

「うん、俺も。
奏くんが反応してくれなくなってなのに俺には何もできなくて、起きたら奏くん目見えてないみたいだったし、キスしたら奏くんに怖い思いさせちゃうし、
すっごい不安だったよ。」

「………ぼく…僕も…不安…だった…かも…」

「そっか、一緒だね。」

「一緒……うん、斗真さんと一緒。」

不安を口に出したら認めてしまうみたいで、認めたら心が破裂してしまいそうで怖かった。
けど、斗真さんと一緒はちょっと…いや、すっごく嬉しかった。
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