こころ・ぽかぽか 〜お金以外の僕の価値〜

133、もっと感じたい 奏side

斗真さんの匂い…
斗真さん…斗真さん！

「どうした？」

「っ！はぁ…はぁ…はぁはぁはぁ、」

「大丈夫、ゆっくり呼吸しようね。大丈夫、大丈夫、」

斗真さんを求めて伸ばした手はギュッと握って抱きしめてくれた。

斗真さんを全身で感じる…

斗真さんが…斗真さんが傍にいる。

ずっと傍にいてくれてたけどずっと頭がぼーっとしててあんまり感じれてなかった。
けど、今はしっかりと感じる。
斗真さんの匂いや温もり、優しさ全部感じ取れる。

斗真さん、もっと、もっと斗真さんを感じたい。

溢れる涙なんて気にせず斗真さんの胸に顔を押し付ける。

「どうした？怖い夢でも見た？」

ﾌﾙﾌﾙ

見てない。
「……」

あれ？声が出ない…どうして？

喉を抑えてもう一度声を出そうとするけど音のない息が出るだけ。

「無理に出したら喉痛めちゃうよ。大丈夫、また出るようになるよ。ゆっくりで大丈夫。」


また…出なくなっちゃった……

僕も斗真さんに好きって伝えたかったのに………

せっかく好きって言ってくれたのにまだ答えられてない。
声が出ないこと自体よりも『好き』を伝えられないことのほうがショックだった。