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127、俺の限界 斗真side (8日目)

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あれから2日経った。
変化は無い。
栄養は点滴でとることになった。


入院は精神的な負担が大きいということで、透が病院とここを行き来してくれている。

眠れていないのか目の下には隈ができている。




「奏くん、また一緒にお話しようよ。
俺、奏くんとしたいこと沢山あるんだよ。……奏くん…何か言ってよ……ぅ…」

もう俺も限界だ…
何もできない無力さ、もしかしたら俺が追い詰めたんじゃないかという後悔…

いくら話しかけても返事は返ってこない。
その度に胸に黒くて重い物が溜まっていく。

奏くんに話しかける時はできるだけ優しく明るく話しかけようって決めてたのに、気持ちを抑えきれなくなって涙で顔もぐちゃぐちゃになってる。

こんな情けない姿奏くんに見せたくないのに…






_______________

そういえば透が絵本持ってきてくれてたんだ。

涙を拭いて一冊の絵本を手に取る。

『白雪姫』
奏くんも白雪姫みたいにキスしたら…
なんてバカなことを考える。


「白雪姫って知ってる?俺もあんまり読んだことないんだけどね。」

アニメとか真剣に見てたから絵本も気に入ってくれるかな。





絵本を読みながらも奏くんの少しの反応を見逃さないように様子を見る。




最後まで読み終えた。

「どうだった?白雪姫目覚まして良かったね。」

反応は無い。



……ごめんね。

心の中では謝ったけど体は抑えられなかった。

気付いた時には奏くんを押し倒して口付けをしていた。

「奏くん、好きだよ。…起きて、奏くん、」


…あ、

表情は変わらないが、クッと目が開く。

やっと目が合った。

「奏くん、俺のこと分かる?」

パチパチと瞬きをして視線が泳ぐ。


「良かった、…良かった…」

優しく包み込むように抱きしめる。
安心のあまり「良かった」しか言葉が浮かばない。

ふわ…

奏くんが俺の頭を撫でてくれる。
頬に触れた奏くんの小さな手は俺の涙で濡れている。

あ、俺泣いてるんだ。
みっともない姿を見せたくないとか考える余裕もなく、子どものように泣き崩れた。
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