こころ・ぽかぽか 〜お金以外の僕の価値〜

106、俺の仕事は 斗真side

「斗真さん…お仕事…してる…」

「ん？うん、まあ、今は休んでるけどな。」

「お仕事…お金……」

「ん？どうした？」

暗い顔をしたままぶつぶつ呟いている。

「お仕事…僕代わる。」

「え？」

何を言い出すかと思ったら、
稼いでないのが不安のか？それとも俺が働いてるのが不満なのか？

「僕働くから…斗真さん…働かなくて大丈夫…だから…だから…」

「どうして？」

「だって…だって…お仕事…痛い…苦しい…僕知ってる。」

あ、そういう事か、

「僕…我慢できる。痛いのも苦しいのも我慢できる。だから…だから…斗真さんお仕事しなくて大丈夫。僕お金持ってくる。」

真っ直ぐな目で言われて言葉よりも体が先に動いた。
ぎゅっと抱きしめる。

「お仕事…僕大丈夫…大丈夫…」

自分に言い聞かせるように呟く声に心がえぐられていく。

「俺の仕事は痛くも苦しくもないよ。」

「え…でも…僕知ってる。お仕事…知ってる。」

「色んな仕事があるんだよ。奏くんがしてたのは確かに辛い仕事だったと思う。けど俺のはそれに比べたら辛くない仕事だよ。」

奏くんは売りの仕事しか知らないんだもんな。

「俺の仕事見る？」

「え…いいの？」

「良いよ。おいで、」

また奏くんを膝に乗せてパソコンを立ち上げる。


俺の仕事はプログラマーだ。
俺が今までに書いてきたプログラミングを見せる。

「えいご？」

「うーん、まぁ英語に近いかな～俺はこういう文字を並べてゲームとかアプリを作る仕事をしてるんだ。」

「斗真さんのお仕事？」

「そうだよ。だから痛くも苦しくもないよ。」

「うん…痛くない…そっか…」

「そうだよ。だから大丈夫、心配してくれてありがと。」

「良かった…良かった……」

良かったと呟く奏くんの目には涙が溜まっていく。
本当に心配してくれてたんだな。

「ありがとう。」

抱きしめて奏くんの心をほぐしていく。

幼い頃からあんな仕事させられてたら仕事は痛いものだって思っても仕方がないよな。

自分と同じ辛い思いを相手にしてほしくないから自分が代わるか…
優しいけどそれじゃ優し過ぎるよ。

自分のことも同じだけ大切にできるようになろうな。

そのためにはまず大切にされることを知らなきゃいけないんだろうな。

俺が奏くんを大切にするよ。