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105、寂しかったのか? 斗真side

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仕事の電話をしていると奏くんが部屋に入ってきた。

初めは急に入ってきたことに驚いたけど、目が合った途端ポロポロ涙を流す姿に俺がいなくて寂しかったのだと分かる。

俺の服を握りしめて俺を探してたんだな。

「おいで、」

「今お仕事中だから静かにできる?」

コクリ

「終わったらご褒美あげるからね。」

コクリ

「ごめん、待たせた。」

「いいよー、なんだ彼女とイチャイチャしてんのか笑」

同僚の日高がからかってきた。

「っ違うよ!」

「別に隠さなくたっていいだろ~」

「本当に違うから、最近子どもの面倒見てて」

「子ども?何歳?」

「11歳」

「へ~、11歳って小6?」

「かな、」

「かなって何だよ。学校行ってないの?」

「行ってない。」

「そっか、なんか意味ありげな感じか、」

「うん…まぁな、」

「まぁ何かあったら言ってくれよ!元不登校として力になれることなら何でもするからよ!」

「っふは、ありがとう。」

そういやこいつも不登校だったんだよな。異常にパソコンが強くてウチの会社ではしたわれてるけど学生時代は色々あったんだろうな。

「んで、さっきの資料なんだけどさ、」

「ああ、あれは______」






「じゃあまたな、」

「休日なのにごめんな、助かった。」

「いや良いよ。暇してるからいつでもどうぞ。」

「ありがとう、さっきの子にも向井貸してくれてありがとうって言っといて。」

「おう、言っとくよ。」

「じゃあ俺は続きするわ、本当に助かった。ありがとう。」


「おう、」





「終わったよーって、寝ちゃったか、」

俺の上で気持ちよさそうに眠る奏くんの頬をつつく。

沢山泣いたんだな。涙の跡をそっと撫でる。


ベッドに寝かせようとしたらそっと目が開く。
起こしちゃったか、

「斗真さん、斗真さん…斗真さん…」

「どうした?ここにいるよ。」

「斗真さん、斗真さん」

名前を連呼してぎゅっと抱きつかれる。

「大丈夫、どこも行かないよ。」

コクリ…コクリ…

「待ってくれてありがとう。電話してた日高もありがとうって言ってたよ。」

「ひだか…さん?」

「うん、職場の同僚。」

「斗真さんのお仕事…」

「ん?どうした?」

悲しいそうな顔で目を逸らされた。
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