こころ・ぽかぽか 〜お金以外の僕の価値〜

神娘

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94、聞きたくない 奏side

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斗真さんと一緒にねこちゃんを撫でた。

動物に初めて触った。
ふわふわで可愛い。



にゃー

「あ…」

「またお散歩にいくのかな。」

「お散歩、」

ねこちゃんはまた塀に登って行ってしまった。
行っちゃったのは少し寂しかったけど沢山触らせてもらったから満足した。

斗真さんにもぎゅーってしてもらって温かいものが心に溜まって行く感覚がする。

「あ、ここにいたのね。」

「母さん、おはよう。どうしたの?」

「いや、特に用があったわけじゃないんだけどどこ行ったのかなって思って、そういえば斗真そろそろ奏くんにあれ言った方がいいんじゃない?」

あれってなんだろう。
もしかして…

「そうだね、奏くんあのね。」

聞きたくない!
斗真さんの上から飛び降りて和室の隅でしゃがみ込む。

「え、奏くん?!どうしたの?」

聞きたくない。
何言われるかは分からないけど、嫌な話な気がする。
やだ…心を守るために両手で耳を塞いで顔を横に振る。

「聞きたくない?」

…コクリ
目に溜まった涙は大粒になって床に落ちる。

「何となく気付いたのかな。でも奏くんを悲しませるようなことはしない。約束する。」

悲しくない…
ほんとに?

「俺の話聞いてくれる?」


…………コクリ

「ありがとう。あのね、あと9日したら俺は自分の家に帰るの、それで奏くんにこの家で暮らすか俺の家に来るか決めてほしいんだ。」

斗真さんがいなくなっちゃう…
頭が真っ白になる。

理解しようと頭を動かすけど受け入れることができない。

いや…斗真さんいない嫌…

斗真さんの服を握りしめて首を振る。

涙がどんどん溢れて視界はぼやけて何も見えない。

「それが奏くんの答えだね。」

僕の…答え?

斗真さんがいなくなっちゃうことしか聞いてなくてその後のことは全然聞いてなかった。

僕、ちゃんと答えれたの?

「俺の家で一緒に暮らすってのでいい?」

斗真さんと一緒…?

「ぇ…」

「あれ?違った?」

「いっしょ…斗真さん…一緒?」

「そうだよ。俺についてくるなら俺と一緒、まぁここにいてもたまに様子見に来る予定ではあるけど。」

「一緒、斗真さん一緒。」

「ついてくるか?」

コクリ コクリ

「決まりだな。」

「本当に斗真に懐いてるわね。私が入る隙ないわ。」

「そういえば、母さんがいる時に声出たの初めてじゃない?」

「確かに、初めてかも!少しは慣れてくれたのかな。そうだと嬉しいな。」

うん…斗真さんと二人の時は以外でお話したのは初めてかも、

僕もちょっと嬉しくなった。
斗真さんとお話するのはとっても楽しいけど、他の人ともお話できるようになりたい。
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