上 下
90 / 679

90、寂しいが消えない 奏side (5日目)

しおりを挟む
「ぁ…」

チュンチュン

鳥さんの鳴き声?
窓から朝日が差し込んでくる。

いっぱい寝た。

あ…夢…夢見なかった…
斗真さんとお話したかったのに…

なんだか寂しくなって涙が目に溜まる。

目の前に斗真さんはいるのにまだ寝てる斗真さんの顔を見つめて寂しさを紛らわす。

どうしてこんなに寂しいの、今まで一人でも大丈夫でむしろ人が怖くて一人の方が安心できてたのに、斗真さんに出会ってから斗真さんと一緒にいないと安心できなくて、斗真さんの声や匂いで安心できるようになった。

なかなか起きない斗真さん…
どんどん涙が込み上げてくる。
この気持ちを抑えたくて胸に顔を押し付けてみるけど、おさまらない。
じっと顔を見つめる。

きす…キスしたら落ち着くかな。

顔を近づけそっと触れるだけのキスをしてみる。
柔らかくて温かい。
それでも足りない。

もう1回、

足りない

もう1回、

「ん?…おはよ…」

あ、起こしちゃった…ごめんなさい…
でも、斗真さんの声を聞いた途端寂しかった気持ちを抑えきれなくなって涙が次々と溢れてきた。

「どうした?!怖い夢でも見たか?」

「…っ…ん…っ……ちが…ん」

「違うの?どうした?」

落ち着いた声で優しく聞かれる。

「夢…見なかった…斗真さん…っ…夢出てこなかった…」

「ああ、夢の中でお話できなかったんだな。」

「…うん…っ…んっ…」

「そっか、熟睡できたんだね。」

「じゅく…すい?」

「いっぱい寝れたってこと。疲れてたもんね、熟睡しすぎると夢見ないんだよ。」

「寂しい…」

「そっか、お話できなくて寂しかったんだね。」

「寂しくてぎゅーしたり、ちゅーしたりしたけど寂しい無くならなかった。」

「あ…それでキスしてたのか、ちゅーは俺以外にはしちゃダメだよ。」

「どうして?」

「うーん、どうしても。」

そう言ってぎゅーってしてもらった。

さっきしたぎゅーとは違って寂しかったのが消えていく。
それが心地よくて僕も斗真さんの胸に顔をスリスリさせる。

「可愛いね。」

頭も撫でてもらって心が温かくなっていく。

「すき」

「俺も好きだよ。」

斗真さんのことが好き。
斗真さんは優しくて、温かくて安心する。
美味しいご飯も食べさせてくれる。
痛いことも苦しいこともしない。

こんな人初めて。

僕も斗真さんみたいになりたい。
しおりを挟む

処理中です...