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88、寝る…いや… 奏side

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疲れた…

たくさん泣いた。
しかも今日はたくさん色んなことをした。

思い返した途端どっと疲れが溢れてきた。

瞼が重くてしょぼしょぼする。
寝たくない……寝たくないの…
ぎゅーっと目を瞑って開く、少しは目が覚めるけどすぐに逆戻り。

「眠たかったら寝ていいからね、」

フルフル

ぎゅっと抱きしめられ背中をとんとんされる。

「…ゃ」

「ん?どうした?寝たくない?」

「……んっ」

「眠るの怖い?」

コクリ…

抑えることのできない涙が静かに頬をつたる。

「大丈夫、大丈夫、」

涙を指で拭かれる。

胸に顔を付けると頭を優しく撫でてくれる。
静かな涙はつーっと流れるばかり、

「寝るの何が怖い?」

「…っ…ひっく…ねてるとき…ひっく…んっ」

話そうとしてるのに涙が邪魔してなかなか話せない。

「大丈夫、大丈夫、ゆっくりでいいよ。もうちょっと落ち着いてからにしようか。」

コクリ…




さっきよりもゆっくり背中をトントンしてもらって少しずつ落ち着いてきた。

「寝てる時…」

「ん?うん、」

「寝てる時に痛いことされたら、起きてる時より痛い…から怖い…」

「そっか、俺も怖い?」

「え…?」

「俺も奏くんに痛いことする?」

「斗真さんには…まだ…されてない…」

「まだ…ね、これからも、俺は奏くんに痛いことしなよ。」

「…うん、」

「信じてないな、」

信じてる…信じてる…
信じたい…
でも…でも…
ずっとなんて分かんない…

いつか、お父さんとお母さんみたいに…
人は変わっちゃうんだ。

「奏くん、」

無意識に自分の腕に爪を立てていた。
その上にそっと手を置かれる。

「奏くんは信じれないんじゃなくて信じるのが怖いのかな?」

……

「俺も怖いよ。」

「え…」

「だって信じて裏切られたら辛いじゃん。」

そうかも…
僕も…
信じたいけど…斗真さんに心が依存した時、切り捨てられたら 辛い…
だから心を一歩離して接してたんだ。

そしたら裏切られてもそれは裏切りにならない…だって信じてなかったから。

そうやって自分の心を守ろうとしてきたんだ…

「無理に信じようとしなくていいよ。」

「え?」

「信じたい時に信じたらいいんだよ。」

「…信じたい…」

「そっか、ありがとう。」

「嬉しい?」

「嬉しいよ。」

コクリ…

僕が斗真さんを信じてたら斗真さんは嬉しい…
僕も斗真さんを信じたい…

「斗真さん…痛い…しない…」

「うん、しないよ。」

「しない。」

「そういえば、1人で寝てる時座って寝てるけどお腹上向けるのが怖い?」

「お腹…蹴られたら痛いし苦しい…」

「そっか…お腹蹴られたら痛いね。」

コクリ

「じゃあこうしてたら怖くないかな。」

お腹とお腹をピタッとくっつける。

「うん…怖くない」

「良かった。じゃあ今日はこれで寝れる?」

「う…ん…」

「どうした?他にも怖いことある?」

「ゆめ…」

「夢?怖い夢見るの?」

「うん、夢怖い…寝る…いや」

「そっか、どんな夢?」

「お父さん…お父さんとお母さん怒る…タバコ…タバコ…痛い…痛い…」

「もう良いよ。ごめんね、思い出したくなかったよね。大丈夫だよ、痛くないよ、痛くないよ。」

思い出すだけでタバコの痕が痛くて髪の毛を掴む。

「大丈夫、大丈夫だよ。」

頭を撫でられ痛みがなくなっていく。

「怖かったね、もう大丈夫だからね。大丈夫だよ。」
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