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84、薬を飲んでほしい 斗真side

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夕食を食べ終え、奏くんはぼーっとしている。
いつもならソファーに移動させるけど、今日はまだすることがある。
それは、薬だ。
奏くんは痛い素振りを出していないが痣が残る体は相当痛いはずだ。
それで今日病院で鎮痛剤を処方された。

風邪薬のようにゼリーに混ぜて飲ますのは簡単だが、できれば薬を認識して飲んで痛くないことを感じてほしい。

けど…嫌がるよな…

初めて解熱剤を飲まそうとした時はパニック起こしかけてたもんな…
できれば怖い思いはさせたくない…

話して納得してから飲んでもらうか…
でも奏くんは痛くないって言い張って飲まないだろうな…

うーん…でもな…とりあえず話して反応見てみるか、

「奏くん、」

名前を呼ぶとこっちを見てくれる。

「えっと…あのね、ちょっとお話聞いてほしいんだけどいいかな。」

コクリ

「あのね、今日病院で体診てもらったよね。それで、病院の先生から奏くん体の痛みが少しでも抑えられるようにって薬貰ってるんだ。」

薬って単語を聞いた途中眉間にシワがより目が揺れる。

「この薬なんだけど、この1つだけご飯食べた後に飲んでほしいんだけど、できる?」

紙袋から1錠だけ取り出して机に置く。
奏くんはその薬を見つめたまま離さない。

唇をぐっと閉じて固まっている。

「この薬は奏くんの痛みを治す薬だから怖くないよ。大丈夫だよ。」

背中をさするとビクンと肩を上げ強ばっていく。

「おいで、」

今にも泣きそうな奏くんを抱きしめようと脇腹を触ると少し身を引いて首を横に振られた。

拒絶されてる…

そら、怖いよな…

薬は怖いもの、食べ物や飲み物に薬が入っている環境で育ってきたんだ。
多分その薬は睡眠薬や媚薬だろう。
その概念を覆してやりたい。
その為にもここは引き下がれない。

「おいで、」

もう一度抱き上げようとしたがさっきと同じように首を横に振られる。けど、今回は引き下がらず強ばった体を抱き上げ膝に乗せ優しく抱きしめる。

「大丈夫、大丈夫、」

背中を撫でるが体は強ばったまま胸を手で押し返される。
こんなに拒絶されたの初めてだな…

どれだけ時間が経ってもいい、奏くんが飲めると頷くまで付き合おう。
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