こころ・ぽかぽか 〜お金以外の僕の価値〜

79、怖いけど、 奏side

お風呂…

怖い…

でも…でも…

斗真さんに褒めてもらいたい…
髪綺麗ってまた言ってほしい…
僕の髪は今まででずっとベタベタして変な臭いがしてお父さんが言う通り汚かった…
でも…斗真さんが優しく洗ってくれたから…綺麗になって…
斗真さんに綺麗って言ってもらえた…

だからお風呂…入りたい…

また綺麗って頭撫でてほしい

だから頑張るの…頑張りたいの…

なのに…どうして足は言うこと聞いてくれないの…どうして…どうして

もう…やだ…

また涙が落ちそうになった時、
斗真さんがひょいと僕を足の上に置いて抱きしめてくれた。

「落ち着いたら入ろっか、」



思わず涙がこぼれ落ちてしまった。

「泣いてるじゃん、そんなに怖いなら今日はお風呂入るのやめとこ。」

ﾌﾙﾌﾙ

「入る…入るの…」

「無理して入るものじゃないよ？今日みたいに明日の朝でもいいよ？」

「やだ…入るの…」

「そかそか、入りたいか。」


それから斗真さんは背中を優しく撫でてくれた。涙も止まり少しずつ怖いのも薄れてきた。

「大丈夫、大丈夫、」

斗真さんの声に耳を傾け体を預ける。

胸がドキドキザワザワするのも手足がブルブルするのも治った。

「入る」

「入れる？じゃあ服脱ごうか、脱げる？」

肩を固定してるから思うように脱げず斗真さんに手伝ってもらう。

「できたよ。ここ治るまではちょっとぬるめのお湯にしようね。」

「ぬるめ…」

ぬるめってどのくらい？熱いの？冷たいの？

「このくらいかな、」

実際にお風呂に入ってシャワーを僕の手にかけてくれれる。

温かい…

「これで洗うけど大丈夫？」

「大丈夫」

「ギブス濡れないようにこれつけようね。」

ビニールをつけてもらって、頭や体を洗ってもらった。

「大丈夫？怖くないからね。」

何度も僕に優しく声をかけてくれる。

その度に小さく頷くことしかできない。

本当は怖くて手をぎゅっと握って我慢しているから声を出すと震えた声しか出ないから、それを聞かれたら斗真さんを困らせてしまう。

一緒にお風呂に入ってくれて、その上僕を洗ってくれてるのにこれ以上迷惑かけちゃダメだ。我慢しなきゃ。
グッと涙を堪える。