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54、お湯を見ただけなのに 奏side (4日目)

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今日も目を覚ますと斗真さんにぎゅーされて布団に横になっていた。

「おはよ」

「…お…はよ…ございます」

「熱測ろっか、」

斗真さんの膝の上に座りじっとする。

ピピピッ

「熱下がったよ。ほら、」

体温計を見せてもらう。
36.2
これが熱ない時の数字、覚えてとこう。

「夜に熱上がんなくて良かった~、風呂入ってから朝ごはん食べようか。」

お風呂…そういえば熱出てから入ってなかった。
でも…入りたくない…
けど…臭いかな…

「風呂怖い?」

怖いと頷くと頭を抱えて唸ってしまった。
困らせたかったわけじゃないのに…
我慢したら大丈夫…前入った時も怖いことは何もなかった…だから大丈夫…
自分に言い聞かせて着替えを手に取る。

「入れそう?」

コクリ

「じゃあ行こっか、」

斗真さんと手を繋いでお風呂に向かう。

お風呂に着くと斗真さんは服を脱いで準備をしている。
なのに…お風呂を目の前にしてやっぱり怖くなってしまった。
指先が震えてなかなか服が脱げない。
膝もガクガク震えだし立っていることもできずその場にしゃがみこんでしまう。

「やっぱり怖いか、どうしようかな…」

「入る…」

「うーん、じゃあ抱っこしようか。」

コクリ

抱き上げられ服を脱がしてもらう。
素肌をピッタリと重ね合わせる。

「怖くないからねぇ」

ビクッ

シャワーが体にかかりおちんちんを軽く触られる。

「ちょっとだけ流してからお湯浸かろうね。」



「じゃあ、お湯浸かろうか。」

お湯…湯船に張られたたくさんの水が視界に入り息ができなくなる。

「はっ…はぁはぁ…ひゃっ…はっ…」

「奏くん?!大丈夫、大丈夫、ゆっくり呼吸しようね。大丈夫だよ、」




湯船には蓋がされた。
お風呂の床で斗真さんの上にまたがって深呼吸を繰り返す。

「落ち着いたかな。ごめんね、お湯怖かったね。」

首を横に振って大丈夫って伝える。
今はもう怖くない。

水に顔を入れてないのに息ができなくなったの初めてだった。

「お湯に浸かるのはやめて、頭と体だけ洗おうか。」

コクリ

「椅子座れる?」

椅子に座らせようと脇に手を入れられるけど、お風呂で斗真さんから離れることが怖くて首を振ってしがみつく。

「このまま洗おうか、頭濡らすから目瞑っててね。」

斗真さんにしがみついたまま頭を洗ってもらう。
僕の頭を洗い終えると自分の頭も洗っていた。

「一緒に体洗おうか、奏くんの体洗うから俺の体洗ってくれる?」

コクリ

たくさんの泡泡をお互いのお腹に乗せてお互いの体に手を這わせて洗っていく。
僕の体はあっという間に全身泡泡になったのに、斗真さんは体が大きくてなかなか全身泡泡にならない。

斗真さんの上から降りたくなくて背中は抱きついた状態で手をまわして洗っていく。

「奏くんのお腹で俺のお腹洗ってるみたいだな笑」

斗真さんに笑われて、確かに洗うのは手だけじゃなくてもいいんだ。
そう思い、体を上下に動かして斗真さんの体を僕の体で洗っていく。

「ふぅん…」
はっ!変な声出ちゃった…
恐る恐る斗真さんの顔を見上げる。

「ん?どうした?綺麗になった?」

体を上下すると斗真さんの体に僕のおちんちんが擦れて変な声が漏れてしまう。

「きれい…なった。」

「ありがとう。じゃあ流すね。」


綺麗に流し終えたらまた抱っこしてもらって脱衣所に行く。

「自分で体拭ける?」

コクリ

下ろしてもらってバスタオルを受け取る。



「まだ背中濡れてるよ。」

グイッ

え?

斗真さんに後ろから抱きしめられた。
どうしたんだろう?しんどい?逆上せちゃったのかな?

「ごめんね、」

え?

「ごめん、怖いことしないって言ったのに、風呂で怖い思いさせた。本当にごめん。」

あ、さっき湯船見て怖がっちゃたから…
でもそれは斗真さんが悪いんじゃない!

「ちがう」

「え?」

「斗真さん悪い違う…」

「でも、奏くんが水怖いの知ってたのに怖がらせちゃったから、次から気をつけるから。ごめんな、」

「違う…違う…ごめん違う…」

斗真さんは何も悪くないのに謝られることが嫌で、でも、どうしたら伝わるか分からなくて泣き崩れてしまう。


「ごめん違うの、斗真さん悪い違うの…うぅ…んっ…うっん…」

「分かった分かった、ありがとね。そんな泣かないで~よしよし、奏くんは優しいね。」


斗真さんによしよしされてやっと涙が止まった。

「落ち着いた?風邪ひいちゃうから服着よっか。」

あ、ほんとだ。お互い裸だったんだ。
斗真さんの体温を感じてたから全然寒さを感じなかった。


「髪乾かすからおいで、」

服を着て斗真さんの前に立つ

「熱くない?大丈夫?熱かったら教えてね、」

温かいのと斗真さんに頭をわしゃわしゃされるのが気持ちよくて、眠たくなってしまう。
ダメだ、前も乾かしてもらってる間に寝ちゃったんだ。それに今回は洗面台も前、眠ったら倒れてしまう。
瞬きをたくさんして眠気を飛ばす…けど…もう…無理…

「おっと、疲れたかな。終わったよ~俺が乾かしてる間ちょっと寝てていいよ。」

床に胡座をかいた斗真さんの上にまたがって胸に頬をあてて体を委ねる。

トクトクトクトク…
斗真さんの鼓動が心地よくてそのまま眠ってしまった。
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