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34、どっちのご飯? 奏side (3日目)

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熱がある時に初めて精子以外のご飯を食べさせてもらった。

目が覚める度に部屋の隅に行こうとするけど、腰を掴まれ布団に戻される。
斗真さんの胸に顔を埋め気づいたら朝になっていた。
朝まで寝てたのなんていつぶりだろう、痛みで気絶したことはあるけど痛みもなく熟睡したのなんて今までしたことなかった。
しかも寝転がって寝るなんて…

寝転がっていたのに熟睡…驚きが隠せない。

「目見開いてどうした?なんかあったか?」

僕の背中に手を回したまま斗真さんが声をかけてきた。
まだ眠そうな斗真さんはまた目を閉じて布団を被り直す。

目が覚めた僕は布団から抜け出そうと体を動かすと、

「どうした?トイレか?」

トイレ…じゃないけど…

「トイレじゃないなら俺と一緒に二度寝するぞ、おやすみ」

え…まだ寝るの?
そんなの僕できないよ…
ただでさえ自己新記録の睡眠時間だったのに…
どうしたらいいか分からずキョロキョロしていると「ふふっ」っと斗真さんの笑い声が聞こえた。

「冗談だよ、本当はもうちょっと寝ててほしいけど夜ちゃんと寝てたから大目に見てやる。その代わり熱が下がるまでは安静な。」

安静って何だろう。
ニコッと笑う斗真さんの顔を見ても考えはやっぱり分からなかった。

「起きるか、布団はそのままで良いよ。」

布団を畳もうとしたら止められた。
敷いたままでいいの?

「奏くんは偉いね。」

偉い?分からず首を傾げる

「ちゃんと布団畳めるの偉いね。俺は敷いたらそのまま放置しちゃうわー
ま、今はベッドだけど。
畳む習慣がついてるんだろうな。」

習慣…
あの家では布団なんて無かった。
床…の日はまだましだったな…
基本は外…コンクリートの上で寝ることがほとんどだった。
布団を使えるのはお客さんのお家やホテルの時だけ

「ごめん、嫌なこと思い出させたな。
ごめん…無神経なこと言った。」

斗真さんは眉を下げ僕の頭を撫でる。
どうしてそんな辛そうな顔をるんだろう。

「顔洗いに行こうか、」

洗面所で昨日と同じようにタオルを濡らしてくれた。
それで顔を拭き、リビングに向かう。

「熱測らせてね。」
またあの長いの…脇に挟まれじっとする。

「38.0かぁ、昨日よりは下がったな。
さて、朝ごはんにしようか。」

ごはん…
今日のご飯はどっち?
まだ体は熱い…ってことは…精液?
でも…昨日上手にできなくて…

でも…夜、美味しいご飯を食べさせてくれた。

頭でいっぱい考えているとこめかみが痛くて、頭を両手で押えてその場にしゃがみこむ。


「大丈夫か?頭痛い?」

ハッ…痛いバレた…………

痛いバレたら…もっと痛いことされる…

そう刻み込まれた思考回路は近づいてくる人に恐怖しか感じなくさせる。

1歩ずつ近づいてくる人が怖い…
やだ…殴らないで…
耳を両手で押さえ、体を丸めてお腹を守る。

殴られる?

蹴られる?

歯を食いしばり今から来る痛みに耐える準備をする。





でも、いくら待っても痛みはやって来ない。
それどころか、大きな手が頭を撫でた。

「大丈夫、大丈夫、怖くないよ。
頭痛ってどうやったら治るかな…薬飲まずに治す方法知らないな…」

斗真さん…そうだ僕は斗真さんと一緒にいたんだ。
恐怖で誰が近くにいるのか分からなかった。

斗真さんは痛いことしない、そのことに安心したら蓋をしていた恐怖が涙になって溢れ出た。

「え、そんなに痛いの?どうしよう…透に聞いたら痛くなくなる方法分かるかな…」


斗真さんの服を掴んで泣きたいだけ泣いたら落ち着いた。

「大丈夫?透にメールしたら頭撫でたら治るって、本当にこんなので治るのかな?」

僕が泣いてる間に聞いてくれたんだ。
本当に斗真さんに撫でられ痛みが消えていく感じがした。

「痛いの治りそう?」

コクリ

「ホントかよ…まぁ、また痛くなったら教えてね。ご飯お粥とか食べれる?」

お粥って何?
分からず首を傾げると

「お粥ってその…柔らかい米?食べたことないか?」

コクリ

「そっか、じゃあ作ってやるから食べれそうだったら食べよう。無理そうだっらた他の作るから、ちょっと待ってて」

コクリ
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