こころ・ぽかぽか 〜お金以外の僕の価値〜

神娘

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28、強ばる体に 斗真side

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腕の中で眠る奏くんを抱き上げ、部屋に戻る。

布団に横にして熱を測ると38.5だった。
やっぱり上がったか…
少しでもいいから寝てくれ、そう願い襖を閉める。


「様子どう?」

母さんが後ろから問いかけてきた。

「熱は38.5さっき測った時より上がってる。少し寝てくれたらいいんだけど、横になることに抵抗があるからな…」

「何かトラウマでもあるのかな」

「そうかもな…
今日は栄養のあるもの食べてほしいけどそれも難しいかな、」

「うーん…」

今までどんな食事をしてたんだろう。
口にする物に極端に抵抗がある様子からしてちゃんとした食事はしてこなかったことは容易に推測できる。

それでも、こうやって熱を出したり体調が悪い時はどうやって過ごしてたんだろう。


「食べれるか分からないけど、とりあえず無難なお粥にするね。」

「うん、ありがとう。」


_____________

今日あったことを母さんに話していると、襖が静かに開いた。

え…もう起きたの?まだ15分も経ってないのに…

俺と目が合った途端襖が閉まる。
「ちょ…」

中に入ると部屋の隅で小さく座っていた。
せめて布団にいてほしいけど…
またこの目…透の家で警戒してた時と同じ目で俺を見る。
目が合うと逸らされる。

また夢だったと思ってるのか?

「どうした?目覚めちゃったか?」

「……」

無反応のまま時間が過ぎる。
パニックを起こさないよう布団の横に座って様子を伺うが変化がない。
どうしたらいい、
何を思ってる…

少しずつ距離を詰めると体を震わせ床を蹴る。
背中は既に壁に付いていてそれ以上下がれないのに、俺から離れたいのか、
無表情だが目は少し泳いでいる。

「大丈夫、怖くないよ。」

肩に触れるとビクリと体を跳ねさせ、
体を強ばらせる。

「ごめんね、」

怖いのは分かってるけど、このままでは余計しんどくなってしまう。
背中をさすり固くなった体を抱きしめる。
少しでも緊張がほぐれたらいいけど…
その一心で抱きしめるとさっきよりは体の力が抜ける。


抱き上げようとするとまた体が強ばるが、無視して抱き上げて布団に向かう。

布団に座り、奏くんを向き合った状態で膝に乗せ背中から布団をかける。

初めは警戒していたが俺と布団に挟まれ安心したのか体重を預けてくれる。

しばらくして寝息に変わった。

奏くんの顔を見ると目元が光っている。
泣いてたのか、指で涙を拭う。

抱きしめたまま体を倒しても起きなそうだったので、一緒に布団に横になり腕枕をする。
座って寝るよりはいいだろう。


頬を染め荒い息を繰り返す姿はなんとも辛そうで自分の無力さを感じる。
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