27 / 725
27、感情を知る 奏side
しおりを挟む
透さんの家を出て斗真さんの車に乗る。
時計を見ると15:00だった。
「大丈夫?この服着る?」
コクリ
窓の外が怖くて斗真さんのパーカーを着て視界を狭くする。
車に揺られ、時間が経つのを待つ。
____________
頭がぼーっとしてじんわりと汗を感じる。
「奏くん?大丈夫?」
声の方を向くと斗真さんが心配そうにこちらを見ていた。
小さく頷くが斗真さんは僕のおでこに触れ汗を拭う。
手に付いた汗がキラキラと光る。
「水分補給しようか、」
ペットボトルを口元に差し出されるが、口を開くことはできない。
「ごめんね、」
その言葉と共に斗真さんは水を口に含み僕の顎に手を当てて、口付けをした。
その行動に驚き唇の力が緩んだ隙に水が少しずつ中に入ってきた。
押し返そうとするが舌でこじ開けられ、口を離そうとするが後頭部を抑えられそれも叶わずゴクリと水が喉を通る。
「ごめんね、怖かったよね。」
驚きはしたが不思議と怖くはなかった。
何度も謝られ、背中をさすられながらどうして怖くないのかが不思議でたまらなかった。
恐怖どころか不快感すらなかった。
「大丈夫?」
コクリ
「良かった。汗びっしょりかいてたから脱水になっちゃうと思って、無理やりしてごめんね。」
斗真さんは僕のことを心配してしてくれたんだ。
今まで心配なんてされたことのない僕はどうしたらいいか分からなくて俯いてしまった。
「もうすぐ家着くからね、眠たかったら寝てもいいよ。」
そう言って座席を倒してくれる。
けど、お腹を他人に向けることが怖い僕は寝転ぶことができず。座ったままじっとしていた。
「寝転がるのは難しいか、まぁいっか、すぐ着くからね。」
斗真さんは座席を元に戻し車を運転する。
____________
「着いたよ。歩ける?」
斗真さんがドアを開けてくれて体を支えてくれた。
少しフラフラしたが支えてくれるお陰で転けずに済んだ。
「ただいま、」
「おかえり、奏くん布団用意してるから休んでていいよ。」
出迎えてくれた美香さんに手を引かれ布団が敷かれた部屋に向かう。
横になるよう言われたが従えず布団の上に体操座りをして俯く。
「汗かいてるから着替えようか、」
斗真さんがTシャツとタオルを持ってきてくれた。
そういえば買い物に行こうとしてたんだ…
なのに…怖くなって行けなくて…
迷惑かけて…
また服借りて迷惑かけて…
何してるんだろう…僕…
「噛まないよ~」
悔しさや情けなさでグチャグチャになった気持ちを抑えたくて歯を立てた唇に指を当てられる。
唇に触れた斗真さんの指には赤い血が薄く付いた。
「あー、血出ちゃった、どうした?しんどいのか?」
背中をさすられ抑えたかった感情がどんどん出てしまいそうでまた唇を強く噛む。
「分かった、分かった。
ちょっと気分転換してくる。
体冷えちゃうから上の服だけ着替えようね。」
抱きかかえたまま服を着替えさせられ、そのまま部屋を出た。
「分かった。ちょっと待って、これだけ」
美香さんは僕のおでこに冷たいものを貼り、斗真さんに白く濁った液体が入ったペットボトルを渡した。
「ありがとう。」
____________
しばらく斗真さんの家の縁側で風にあたっていた。
体は重いままだけど、髪を優しく揺らす風が心地良い。
気が付けば体の力も抜け、唇の血も止まっていた。
「今日はいっぱい頑張ったな。」
頑張った?
今日のことを思い返してみたけど、頑張った覚えはなくて首を傾げる。
「車にも乗ったし、病院にも透の家にも行けたし、透とお話もできた。
それにご飯もちゃんと食べれた。
沢山頑張ったね。偉いね。」
でも…目的の買い物はできなかった…
「買い物はまた今度行こうね。それまでは俺の服で我慢してね。」
斗真さんに頭をわしゃわしゃされ涙が次々と零れ落ちた。
「俺さ、今日すっごい嬉しいことがあったんだ。」
嬉しいこと?
透さんと何か良いことあったのかな?
涙で赤くなった目を斗真さんに向ける。
すると僕の方をじっと見つめて、
「奏くんが『美味しい』って言ってくれた事。すっごい嬉しかったんだ。声を聞かせてくれたのも嬉しかったんだけど、『美味しい』って言ってくれたのが1番嬉しかった。ありがとね。」
ギューッと抱きしめられ、斗真さんが喜んでくれていることが僕は何より嬉しかった。
嬉しい…こんな感情いつぶりだろう。
斗真さんといると色んな気持ちを知るな…
さっきみたいな悔しさや情けなさは心がギューってなるけど、
嬉しさは心がパーって広がって温かい感じがした。
涙も止まり、体中が重たくて支えきれず斗真さんに体を預け瞼も上がらなくなった。
時計を見ると15:00だった。
「大丈夫?この服着る?」
コクリ
窓の外が怖くて斗真さんのパーカーを着て視界を狭くする。
車に揺られ、時間が経つのを待つ。
____________
頭がぼーっとしてじんわりと汗を感じる。
「奏くん?大丈夫?」
声の方を向くと斗真さんが心配そうにこちらを見ていた。
小さく頷くが斗真さんは僕のおでこに触れ汗を拭う。
手に付いた汗がキラキラと光る。
「水分補給しようか、」
ペットボトルを口元に差し出されるが、口を開くことはできない。
「ごめんね、」
その言葉と共に斗真さんは水を口に含み僕の顎に手を当てて、口付けをした。
その行動に驚き唇の力が緩んだ隙に水が少しずつ中に入ってきた。
押し返そうとするが舌でこじ開けられ、口を離そうとするが後頭部を抑えられそれも叶わずゴクリと水が喉を通る。
「ごめんね、怖かったよね。」
驚きはしたが不思議と怖くはなかった。
何度も謝られ、背中をさすられながらどうして怖くないのかが不思議でたまらなかった。
恐怖どころか不快感すらなかった。
「大丈夫?」
コクリ
「良かった。汗びっしょりかいてたから脱水になっちゃうと思って、無理やりしてごめんね。」
斗真さんは僕のことを心配してしてくれたんだ。
今まで心配なんてされたことのない僕はどうしたらいいか分からなくて俯いてしまった。
「もうすぐ家着くからね、眠たかったら寝てもいいよ。」
そう言って座席を倒してくれる。
けど、お腹を他人に向けることが怖い僕は寝転ぶことができず。座ったままじっとしていた。
「寝転がるのは難しいか、まぁいっか、すぐ着くからね。」
斗真さんは座席を元に戻し車を運転する。
____________
「着いたよ。歩ける?」
斗真さんがドアを開けてくれて体を支えてくれた。
少しフラフラしたが支えてくれるお陰で転けずに済んだ。
「ただいま、」
「おかえり、奏くん布団用意してるから休んでていいよ。」
出迎えてくれた美香さんに手を引かれ布団が敷かれた部屋に向かう。
横になるよう言われたが従えず布団の上に体操座りをして俯く。
「汗かいてるから着替えようか、」
斗真さんがTシャツとタオルを持ってきてくれた。
そういえば買い物に行こうとしてたんだ…
なのに…怖くなって行けなくて…
迷惑かけて…
また服借りて迷惑かけて…
何してるんだろう…僕…
「噛まないよ~」
悔しさや情けなさでグチャグチャになった気持ちを抑えたくて歯を立てた唇に指を当てられる。
唇に触れた斗真さんの指には赤い血が薄く付いた。
「あー、血出ちゃった、どうした?しんどいのか?」
背中をさすられ抑えたかった感情がどんどん出てしまいそうでまた唇を強く噛む。
「分かった、分かった。
ちょっと気分転換してくる。
体冷えちゃうから上の服だけ着替えようね。」
抱きかかえたまま服を着替えさせられ、そのまま部屋を出た。
「分かった。ちょっと待って、これだけ」
美香さんは僕のおでこに冷たいものを貼り、斗真さんに白く濁った液体が入ったペットボトルを渡した。
「ありがとう。」
____________
しばらく斗真さんの家の縁側で風にあたっていた。
体は重いままだけど、髪を優しく揺らす風が心地良い。
気が付けば体の力も抜け、唇の血も止まっていた。
「今日はいっぱい頑張ったな。」
頑張った?
今日のことを思い返してみたけど、頑張った覚えはなくて首を傾げる。
「車にも乗ったし、病院にも透の家にも行けたし、透とお話もできた。
それにご飯もちゃんと食べれた。
沢山頑張ったね。偉いね。」
でも…目的の買い物はできなかった…
「買い物はまた今度行こうね。それまでは俺の服で我慢してね。」
斗真さんに頭をわしゃわしゃされ涙が次々と零れ落ちた。
「俺さ、今日すっごい嬉しいことがあったんだ。」
嬉しいこと?
透さんと何か良いことあったのかな?
涙で赤くなった目を斗真さんに向ける。
すると僕の方をじっと見つめて、
「奏くんが『美味しい』って言ってくれた事。すっごい嬉しかったんだ。声を聞かせてくれたのも嬉しかったんだけど、『美味しい』って言ってくれたのが1番嬉しかった。ありがとね。」
ギューッと抱きしめられ、斗真さんが喜んでくれていることが僕は何より嬉しかった。
嬉しい…こんな感情いつぶりだろう。
斗真さんといると色んな気持ちを知るな…
さっきみたいな悔しさや情けなさは心がギューってなるけど、
嬉しさは心がパーって広がって温かい感じがした。
涙も止まり、体中が重たくて支えきれず斗真さんに体を預け瞼も上がらなくなった。
67
お気に入りに追加
858
あなたにおすすめの小説


塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。
そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

こども病院の日常
moa
キャラ文芸
ここの病院は、こども病院です。
18歳以下の子供が通う病院、
診療科はたくさんあります。
内科、外科、耳鼻科、歯科、皮膚科etc…
ただただ医者目線で色々な病気を治療していくだけの小説です。
恋愛要素などは一切ありません。
密着病院24時!的な感じです。
人物像などは表記していない為、読者様のご想像にお任せします。
※泣く表現、痛い表現など嫌いな方は読むのをお控えください。
歯科以外の医療知識はそこまで詳しくないのですみませんがご了承ください。

身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。
平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです
おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの)
BDSM要素はほぼ無し。
甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。
順次スケベパートも追加していきます

ある少年の体調不良について
雨水林檎
BL
皆に好かれるいつもにこやかな少年新島陽(にいじまはる)と幼馴染で親友の薬師寺優巳(やくしじまさみ)。高校に入学してしばらく陽は風邪をひいたことをきっかけにひどく体調を崩して行く……。
BLもしくはブロマンス小説。
体調不良描写があります。

飼われる側って案外良いらしい。
なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。
なんでも、向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。
「まあ何も変わらない、はず…」
ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。
ほんとに。ほんとうに。
紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22)
ブラック企業で働く最下層の男。悪くない顔立ちをしているが、不摂生で見る影もない。
変化を嫌い、現状維持を好む。
タルア=ミース(347)
職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。
最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる