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24、相変わらず 斗真side

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奏くんの思いを聞いて心が引きちぎられるような感じがした。
この気持ちを表現することは難しいが心が潰れそうな気がした。

奏くんがいちばん辛いのだから俺が泣いてはいけないと思う。思ってはいるのだが、心に入りきらない辛さが目から流れそうになった。
それを奏くんに見られたくなくて奏くんを抱きしめた。

こんなに小さな子どもが1人で抱えていいことじゃない。

捨てられる。そう思うようなことが過去にあったのかもしれない。
俺はまだ奏くんが何を経験したのか全然知らない。
初めはできることであれば知りたいと思っていた。けど、知るということは奏くんに話してもらわなければいけない。記憶を無理やり思い出させるようなことしたくない。
今はそう思った。

過去はもう変えられない。
なら、これからどうしよう。これから奏くんはどうしたい?どうしたら普通の子どものように笑ったり遊んだりできるようになる。

俺には奏くんを安心させることはできるのだろうか、不安になりながらも奏くんの手を離さないと心に誓った。



「奏くん眠ったか?」

「え?あ、ああ、そうみたいだな。沢山泣いて疲れちゃったのかな。」

「ベッドで少し寝かせるか、」

「ああ、ベッド借りるよ。寝かせてくる。」

「分かった。」

ガチャ
奏くんをベッドに横にさせるとそっと頬を撫でる。
涙のあとを残した目や頬は少し桃色に染まっている。
昨日初めて涙を見た子がこんなに泣けるようになるなんてな。

「おやすみ。」

間接照明だけを付け、寝室を後にした。

ガチャ

「斗真、少し話そう。」

「どうした?」
真面目な顔をする透に戸惑いながらもソファーに座る。

「少し話を聞いただけでも、辛かったな。まだあの子の過去の1割も聞いていない。…新たに痛めつけて初めの痛みを消すって話が1番心が痛んだ。」

「ああ、そんなことを平気な顔してできる人の気持ちが分からない。」

「分からなくていいんだよ。そんなやつの気持ちなんて分かりたくもない。」

「そうだな。」

「人の気持ちになって考えることは悪いことじゃない。けど、自分を見失うなよ。斗真の心が壊れてしまうよ。」

「え、」

「辛かったな。奏くんの前で泣かないようによく頑張ったな。偉いな。」

透に子どものように頭を撫でられ褒められ、心の紐がするりと解けたように涙が溢れ出した。

「電話してきた時からずっと我慢してたもんな。頑張ったな。」

透にはいつもお見通しだ。
こんなにガキみたいに泣く自分が嫌いでいつも涙を堪えていた俺の心をいつも解す透。
相変わらず優しい透と相変わらず泣かされる俺。

「俺の前くらいいっぱい泣いときな~」

「ごめん…」

「泣くことは悪いことじゃないよ~
奏くんも泣けるようになって良かったね。」

「良かった?」

「ああ、涙は表現のひとつ。心には器があってな、そこに入りきらなかった分が涙として出てくるんだ。もし涙が出せなかったら心に水がいっぱい溜まって心が壊れてしまう。だから涙が流せるのは心を守るためにとっても大切なことなんだ。斗真もたまには泣けよ。」

「ありがとう。」


思う存分泣いた俺は、ソファーにもたれかかって天井をぼーっと見つめていた。


「奏くんの様子見てくる。」

「うん、」
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