15 / 724
15、新しい世界 奏side
しおりを挟む
真っ黒のお部屋
どこを見ても真っ黒
黒いお部屋でぼーっとしていたら
白い光が入ってきた。
なぜだろう。ここに居たら安全なのに向こうの世界が気になる。
ちょっとだけ覗いてもいいかな?
ちょっとだけ…
さっきと違って体が重たい…
頭がずーんってする。
目だけ動かして辺りを見るとそこには知らない人がいた。
今日のお金くれる人…?
ちゃんとやらなきゃ貰えない…
「え、あ、おはよう。」
「はじめまして、小林透っていいます。斗真の友達だよ。よろしくね。」
こばやし…とおる………
今日のお客さん…の名前…
ん?とうま、とうま…斗真さん
知ってる…でも誰だっけ…いつのお客さんだろう。
お仕事の時、お客さんの名前を呼ぶと喜ぶから覚えるようにしていた。
今はその声も出ないけど…
重い体を起こして透さんのベルトに手を掛けた。
ベルトを外そうとすると、手を止められた。
なんで?
すぐに手出したのが嫌だったのかな?
「今日はそういうことしなくていいよ。大丈夫だからね。」
背中をさすられ体を震わせる。
今日はしない…じゃあ何をしたらいい…
今日はやらない…お金貰えない…
痛いのいや…だ………
いたい…
体がズキズキ痛む
まただ…黒い絵の具が…
「奏くん、戻っておいで、奏くんの世界はこっちだよ。」
黒の中から手だけが見えた…
この手を掴んでもいいのかな?
僕の世界は…そっちじゃないのに…戻らなきゃだめ…なのに、
「こっちにおいで、」
ちょっとだけなら……いいかな…
その手を掴んでしまった。
「奏くん、こっちに戻って来てくれてありがとう。」
その人は優しい目をしていた。
「奏くん、俺のこと見えてるかな?」
ぐっと顔を寄せられ、目を合わせることが怖くて急いで逸らす。
「良かった、見えてるね。」
前のソファーに誰かいる。
ムクッ
ビクッ!動いた…
「大丈夫、斗真だよ。」
とうま?あ、さっき言ってた人…
あの顔どこかで見たことある…
誰だっけ……
「斗真のこと覚えてない?今、一緒に住んでる人だよ。」
一緒に住んでる…?
僕のお家は…お父さんとお母さんが居て………
あれ?お父さんとお母さんは……?
居ない…
なんで?
どうして?
どこにいるの?頭がいっぱいになる
「奏くん?、大丈夫、大丈夫だよ。色々あったね。
急にたくさんあって分かんなくなっちゃったんだよね。」
分かってた。分かってるつもりだった。
急にお父さんとお母さんが死んで新しいお家に移動して…
頭では分かってたのに、
心が整理できていない。受け入れていなかった。
白黒だったのに急に色が付いてリアルになっていく。
リアルを受け入れるのが怖くて、自分で黒い絵の具で塗り潰そうとしてたんだ…
お父さんとお母さんがいない…
って事は、もうお金要らない?
じゃあ僕も…要らないね………
不思議と寂しさや悲しさは感じない。
縛りがなくなり肩の力が抜けた。
ぼーっとしてたら泡になる気がした。
「ん…んっ」
斗真さんが眠そうな顔でこっちを見ている。
「すまん、起こしたか?」
「奏くん、目覚ましたのか?! 俺の事分かるか?」
凄い勢いでこっちにやってきた、驚いて体が強ばる。
この顔…あ、ごはん食べさせてくれた人…
小さく頷いた。
「良かった、よかったぁ、よかったぁ、」
斗真さんは僕の手を握りしめながら静かに涙を流した。
どうして泣いてるの?
どこか痛いのかな?苦しいのかな?
昨日僕が泣いた時に斗真さんがしてくれたことを思い出した。
手を斗真さんの背中に回してギュッってする。
これで…涙止まるかな?
「ありがとう、涙止まったよ。」
「奏くんは優しいな。」
透さんが僕に言った。
優しい…って何だろう。
初めて聞く言葉に首を傾げる。
「難しいか、うーん、心が温かいってことかな?」
心が温かい?
分からなかったけど2人が困った顔をしていたから首を傾げるのをやめた。
どこを見ても真っ黒
黒いお部屋でぼーっとしていたら
白い光が入ってきた。
なぜだろう。ここに居たら安全なのに向こうの世界が気になる。
ちょっとだけ覗いてもいいかな?
ちょっとだけ…
さっきと違って体が重たい…
頭がずーんってする。
目だけ動かして辺りを見るとそこには知らない人がいた。
今日のお金くれる人…?
ちゃんとやらなきゃ貰えない…
「え、あ、おはよう。」
「はじめまして、小林透っていいます。斗真の友達だよ。よろしくね。」
こばやし…とおる………
今日のお客さん…の名前…
ん?とうま、とうま…斗真さん
知ってる…でも誰だっけ…いつのお客さんだろう。
お仕事の時、お客さんの名前を呼ぶと喜ぶから覚えるようにしていた。
今はその声も出ないけど…
重い体を起こして透さんのベルトに手を掛けた。
ベルトを外そうとすると、手を止められた。
なんで?
すぐに手出したのが嫌だったのかな?
「今日はそういうことしなくていいよ。大丈夫だからね。」
背中をさすられ体を震わせる。
今日はしない…じゃあ何をしたらいい…
今日はやらない…お金貰えない…
痛いのいや…だ………
いたい…
体がズキズキ痛む
まただ…黒い絵の具が…
「奏くん、戻っておいで、奏くんの世界はこっちだよ。」
黒の中から手だけが見えた…
この手を掴んでもいいのかな?
僕の世界は…そっちじゃないのに…戻らなきゃだめ…なのに、
「こっちにおいで、」
ちょっとだけなら……いいかな…
その手を掴んでしまった。
「奏くん、こっちに戻って来てくれてありがとう。」
その人は優しい目をしていた。
「奏くん、俺のこと見えてるかな?」
ぐっと顔を寄せられ、目を合わせることが怖くて急いで逸らす。
「良かった、見えてるね。」
前のソファーに誰かいる。
ムクッ
ビクッ!動いた…
「大丈夫、斗真だよ。」
とうま?あ、さっき言ってた人…
あの顔どこかで見たことある…
誰だっけ……
「斗真のこと覚えてない?今、一緒に住んでる人だよ。」
一緒に住んでる…?
僕のお家は…お父さんとお母さんが居て………
あれ?お父さんとお母さんは……?
居ない…
なんで?
どうして?
どこにいるの?頭がいっぱいになる
「奏くん?、大丈夫、大丈夫だよ。色々あったね。
急にたくさんあって分かんなくなっちゃったんだよね。」
分かってた。分かってるつもりだった。
急にお父さんとお母さんが死んで新しいお家に移動して…
頭では分かってたのに、
心が整理できていない。受け入れていなかった。
白黒だったのに急に色が付いてリアルになっていく。
リアルを受け入れるのが怖くて、自分で黒い絵の具で塗り潰そうとしてたんだ…
お父さんとお母さんがいない…
って事は、もうお金要らない?
じゃあ僕も…要らないね………
不思議と寂しさや悲しさは感じない。
縛りがなくなり肩の力が抜けた。
ぼーっとしてたら泡になる気がした。
「ん…んっ」
斗真さんが眠そうな顔でこっちを見ている。
「すまん、起こしたか?」
「奏くん、目覚ましたのか?! 俺の事分かるか?」
凄い勢いでこっちにやってきた、驚いて体が強ばる。
この顔…あ、ごはん食べさせてくれた人…
小さく頷いた。
「良かった、よかったぁ、よかったぁ、」
斗真さんは僕の手を握りしめながら静かに涙を流した。
どうして泣いてるの?
どこか痛いのかな?苦しいのかな?
昨日僕が泣いた時に斗真さんがしてくれたことを思い出した。
手を斗真さんの背中に回してギュッってする。
これで…涙止まるかな?
「ありがとう、涙止まったよ。」
「奏くんは優しいな。」
透さんが僕に言った。
優しい…って何だろう。
初めて聞く言葉に首を傾げる。
「難しいか、うーん、心が温かいってことかな?」
心が温かい?
分からなかったけど2人が困った顔をしていたから首を傾げるのをやめた。
63
お気に入りに追加
852
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた
翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」
そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。
チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集
あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。
こちらの短編集は
絶対支配な攻めが、
快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす
1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。
不定期更新ですが、
1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
書きかけの長編が止まってますが、
短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。
よろしくお願いします!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。
小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。
そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。
先輩×後輩
攻略キャラ×当て馬キャラ
総受けではありません。
嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。
ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。
だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。
え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。
でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!!
……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。
本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。
こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる