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15、新しい世界 奏side
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真っ黒のお部屋
どこを見ても真っ黒
黒いお部屋でぼーっとしていたら
白い光が入ってきた。
なぜだろう。ここに居たら安全なのに向こうの世界が気になる。
ちょっとだけ覗いてもいいかな?
ちょっとだけ…
さっきと違って体が重たい…
頭がずーんってする。
目だけ動かして辺りを見るとそこには知らない人がいた。
今日のお金くれる人…?
ちゃんとやらなきゃ貰えない…
「え、あ、おはよう。」
「はじめまして、小林透っていいます。斗真の友達だよ。よろしくね。」
こばやし…とおる………
今日のお客さん…の名前…
ん?とうま、とうま…斗真さん
知ってる…でも誰だっけ…いつのお客さんだろう。
お仕事の時、お客さんの名前を呼ぶと喜ぶから覚えるようにしていた。
今はその声も出ないけど…
重い体を起こして透さんのベルトに手を掛けた。
ベルトを外そうとすると、手を止められた。
なんで?
すぐに手出したのが嫌だったのかな?
「今日はそういうことしなくていいよ。大丈夫だからね。」
背中をさすられ体を震わせる。
今日はしない…じゃあ何をしたらいい…
今日はやらない…お金貰えない…
痛いのいや…だ………
いたい…
体がズキズキ痛む
まただ…黒い絵の具が…
「奏くん、戻っておいで、奏くんの世界はこっちだよ。」
黒の中から手だけが見えた…
この手を掴んでもいいのかな?
僕の世界は…そっちじゃないのに…戻らなきゃだめ…なのに、
「こっちにおいで、」
ちょっとだけなら……いいかな…
その手を掴んでしまった。
「奏くん、こっちに戻って来てくれてありがとう。」
その人は優しい目をしていた。
「奏くん、俺のこと見えてるかな?」
ぐっと顔を寄せられ、目を合わせることが怖くて急いで逸らす。
「良かった、見えてるね。」
前のソファーに誰かいる。
ムクッ
ビクッ!動いた…
「大丈夫、斗真だよ。」
とうま?あ、さっき言ってた人…
あの顔どこかで見たことある…
誰だっけ……
「斗真のこと覚えてない?今、一緒に住んでる人だよ。」
一緒に住んでる…?
僕のお家は…お父さんとお母さんが居て………
あれ?お父さんとお母さんは……?
居ない…
なんで?
どうして?
どこにいるの?頭がいっぱいになる
「奏くん?、大丈夫、大丈夫だよ。色々あったね。
急にたくさんあって分かんなくなっちゃったんだよね。」
分かってた。分かってるつもりだった。
急にお父さんとお母さんが死んで新しいお家に移動して…
頭では分かってたのに、
心が整理できていない。受け入れていなかった。
白黒だったのに急に色が付いてリアルになっていく。
リアルを受け入れるのが怖くて、自分で黒い絵の具で塗り潰そうとしてたんだ…
お父さんとお母さんがいない…
って事は、もうお金要らない?
じゃあ僕も…要らないね………
不思議と寂しさや悲しさは感じない。
縛りがなくなり肩の力が抜けた。
ぼーっとしてたら泡になる気がした。
「ん…んっ」
斗真さんが眠そうな顔でこっちを見ている。
「すまん、起こしたか?」
「奏くん、目覚ましたのか?! 俺の事分かるか?」
凄い勢いでこっちにやってきた、驚いて体が強ばる。
この顔…あ、ごはん食べさせてくれた人…
小さく頷いた。
「良かった、よかったぁ、よかったぁ、」
斗真さんは僕の手を握りしめながら静かに涙を流した。
どうして泣いてるの?
どこか痛いのかな?苦しいのかな?
昨日僕が泣いた時に斗真さんがしてくれたことを思い出した。
手を斗真さんの背中に回してギュッってする。
これで…涙止まるかな?
「ありがとう、涙止まったよ。」
「奏くんは優しいな。」
透さんが僕に言った。
優しい…って何だろう。
初めて聞く言葉に首を傾げる。
「難しいか、うーん、心が温かいってことかな?」
心が温かい?
分からなかったけど2人が困った顔をしていたから首を傾げるのをやめた。
どこを見ても真っ黒
黒いお部屋でぼーっとしていたら
白い光が入ってきた。
なぜだろう。ここに居たら安全なのに向こうの世界が気になる。
ちょっとだけ覗いてもいいかな?
ちょっとだけ…
さっきと違って体が重たい…
頭がずーんってする。
目だけ動かして辺りを見るとそこには知らない人がいた。
今日のお金くれる人…?
ちゃんとやらなきゃ貰えない…
「え、あ、おはよう。」
「はじめまして、小林透っていいます。斗真の友達だよ。よろしくね。」
こばやし…とおる………
今日のお客さん…の名前…
ん?とうま、とうま…斗真さん
知ってる…でも誰だっけ…いつのお客さんだろう。
お仕事の時、お客さんの名前を呼ぶと喜ぶから覚えるようにしていた。
今はその声も出ないけど…
重い体を起こして透さんのベルトに手を掛けた。
ベルトを外そうとすると、手を止められた。
なんで?
すぐに手出したのが嫌だったのかな?
「今日はそういうことしなくていいよ。大丈夫だからね。」
背中をさすられ体を震わせる。
今日はしない…じゃあ何をしたらいい…
今日はやらない…お金貰えない…
痛いのいや…だ………
いたい…
体がズキズキ痛む
まただ…黒い絵の具が…
「奏くん、戻っておいで、奏くんの世界はこっちだよ。」
黒の中から手だけが見えた…
この手を掴んでもいいのかな?
僕の世界は…そっちじゃないのに…戻らなきゃだめ…なのに、
「こっちにおいで、」
ちょっとだけなら……いいかな…
その手を掴んでしまった。
「奏くん、こっちに戻って来てくれてありがとう。」
その人は優しい目をしていた。
「奏くん、俺のこと見えてるかな?」
ぐっと顔を寄せられ、目を合わせることが怖くて急いで逸らす。
「良かった、見えてるね。」
前のソファーに誰かいる。
ムクッ
ビクッ!動いた…
「大丈夫、斗真だよ。」
とうま?あ、さっき言ってた人…
あの顔どこかで見たことある…
誰だっけ……
「斗真のこと覚えてない?今、一緒に住んでる人だよ。」
一緒に住んでる…?
僕のお家は…お父さんとお母さんが居て………
あれ?お父さんとお母さんは……?
居ない…
なんで?
どうして?
どこにいるの?頭がいっぱいになる
「奏くん?、大丈夫、大丈夫だよ。色々あったね。
急にたくさんあって分かんなくなっちゃったんだよね。」
分かってた。分かってるつもりだった。
急にお父さんとお母さんが死んで新しいお家に移動して…
頭では分かってたのに、
心が整理できていない。受け入れていなかった。
白黒だったのに急に色が付いてリアルになっていく。
リアルを受け入れるのが怖くて、自分で黒い絵の具で塗り潰そうとしてたんだ…
お父さんとお母さんがいない…
って事は、もうお金要らない?
じゃあ僕も…要らないね………
不思議と寂しさや悲しさは感じない。
縛りがなくなり肩の力が抜けた。
ぼーっとしてたら泡になる気がした。
「ん…んっ」
斗真さんが眠そうな顔でこっちを見ている。
「すまん、起こしたか?」
「奏くん、目覚ましたのか?! 俺の事分かるか?」
凄い勢いでこっちにやってきた、驚いて体が強ばる。
この顔…あ、ごはん食べさせてくれた人…
小さく頷いた。
「良かった、よかったぁ、よかったぁ、」
斗真さんは僕の手を握りしめながら静かに涙を流した。
どうして泣いてるの?
どこか痛いのかな?苦しいのかな?
昨日僕が泣いた時に斗真さんがしてくれたことを思い出した。
手を斗真さんの背中に回してギュッってする。
これで…涙止まるかな?
「ありがとう、涙止まったよ。」
「奏くんは優しいな。」
透さんが僕に言った。
優しい…って何だろう。
初めて聞く言葉に首を傾げる。
「難しいか、うーん、心が温かいってことかな?」
心が温かい?
分からなかったけど2人が困った顔をしていたから首を傾げるのをやめた。
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