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13、後悔 斗真side

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買い物に行くことになったのだが、もう少し考えてから行けばよかった。
奏くんの事甘く見てた。

体の傷よりも心の傷がどれだけ多くどれだけ深いか、


今は後部座席で蹲っている。

さっき駐車場で暴れ出したから力ずくで車の中に連れ込んだ。
連れ込んだ途端抵抗をやめ、少し穏やかな顔になった。
初めは音が遮断され落ち着いたのかと思ったが多分違う。
何かを、いや、全てを諦めたような顔…



目を合わせても俺を見ている訳ではない。
声を掛けても反応しない…
まるで心は違うところにいるような…


俺の安易な行動が、
奏くんを壊したのか…





プルルルル…
どうしたらいいか途方に暮れていると携帯が鳴った。

画面には小林透こばやし とおると書かれている。
透は高校からの友達で今は精神科医をしている。
昨夜奏くんの自傷行為の事を相談しようと電話をかけたが仕事中だったので、また折り返す約束をしていたのだ。

縋る思いで、電話に出た。

「もしもし、「助けてくれ。」」

相手の声も聞かず助けを求めた。

「どうした?なんかあったか?今どこにいる。」

「ショッピングモール、」

「分かった。すぐ行く。」

っとだけ言い、電話が切れた。



怯えなくなった奏くんを抱きしめ透が来るのを待った。

あ、今更だけどあの電話じゃ俺が何かあったって思ってないか?
透は奏くんの事知らないし…

まぁいいか、


30分後、透から電話がかかってきた。

「もしもし、ショッピングモール着いたけどどこにいる。」

「入口近くの駐車場、 」

「分かった。すぐ行くから、電話繋げとけ。」

「ありがとう。」


隣に透の車が止まった。


コンコン、
後部座席の窓をノックされ、ドアを開ける。

「大丈夫か?何があった。」

今までの事を全て透に話した。



「はぁ…そういうことな。お前のことじゃないのかよ。
まぁお前じゃないから良いって訳じゃねぇえけど、それなら電話でそう言えよ。」

「ごめん、     助けてくれ。」

「分かってるよ。とりあえずお前はその子といてやれ、」

ドアを閉め、透は自分の車に向かった。
カバンを持って戻ってきた。

「俺が運転するから車の鍵貸して、」

「いいけど、透の車は?」

「お前が運転できない状況なのかと思って後輩乗せてきたからそいつに運転させる。じゃあ、病院行くぞ。」

「分かった。」





運転して数分後、

「奏くん、だっけ?パニック起こす前何か言ってたか?」

「口パクでは何か言ってたけど何言ってたかは分からない。」

「そっか、昨日は何か言ってたか?」

「今朝は筆談で少し話したけど、それ以外は何も、」

「筆談?声出ないのか?」

「分からんけど多分、荒い息の時は少し声が漏れてる時あるけど、言葉は聞いたことない。」

「そういうのを早く言えって、」

「あ、ごめん、」

「まぁいいや、」

少しイライラしながらも、考えてくれている。
透は優しい。


「奏くん、寝てるか?」

「いや、多分起きてるかな、ぼーっとしてる。」

「そっか、」



「着いたぞ。」


奏くんを抱き車を降りる。
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