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11、心の中 奏side
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「何考えてるんだ?」
斗真さんが膝を着き目を合わせてきた。
どこを見たらいいか分からず床を見つめる。
「俺は怒ってないよ。それに痛いこともしない。
さっきは叩かれるって思ったんだよな、怖い思いさせてごめんな。」
謝られることしてない。
むしろ謝らなくちゃいけないのは僕なのに…
初めて声が出ないことをもどかしく感じた。
ガチャ
ビクッ!
「おはよう、その子が奏くん?」
「おはよう、そうだよ。奏くん、紹介するねこの人が俺の父さん。」
斗真さんのお父さん…
「どうも、初めまして。
斗真の父の向井直人です。よろしくね。」
斗真さんと似てる。背が高くて顔もかっこいい。
斗真さんと同じで優しい目をしてるのに視線を合わすことができない…
とりあえずぺこりと頭を下げた。
「奏くん、まだ朝早いし俺の部屋でゆっくりしようか。」
斗真さんの部屋…行ったことない。
でもどうして?ここじゃダメなの?部屋で何するの?
聞きたいこといっぱいあるのに聞けない…
「ゆっくりしておいで、」
直人さんにも言われ行く雰囲気になってしまった。
元々僕には拒否権なんてない。
部屋で2人…何されるの…
「階段気をつけてな。」
斗真さんの後ろをついて行く。
2階の1番奥の部屋。
中は整っていて家具はベットと机あとテレビがある。
ベットに座るよう促された。
お互い喋らず静かな時間が数分流れた。
「ちょっと体の力抜けた?」
え?力?
言われてみればさっきより少し楽になった気がする。
直人さんに会って緊張してたのかな…
「手、開けられるか?」
斗真さんに手を触られて気づく。
強くし過ぎて開かなくなった握り拳。
斗真さんが1本ずつ指を外してくれる。
手のひらにはくっきりと爪がくい込んだ痕があった。
「痕残っちゃったね。痛いな、」
斗真さんは痛くないはずなのに痛い顔をしている。
手をさすられると何故か痛みが和らいでいく気がした。
「奏くんにいくつか教えて欲しいことがあるんだけどいいかな?」
教えて欲しいこと?なんだろう。
紙とペンを渡された。
答えをここに書いたらいいのかな。
「この紙に好きに書いていいからね。あと答えたくないことは書かなくてもいいよ。
じゃあ質問ね、奏くんに嫌な思いをしてほしくないから、怖い物とか嫌な事を教えて欲しい。」
怖い物…
〈1こ?〉紙に書いた。
「何個でもいいよ。たくさん教えてくれたら嬉しいかな、」
何個でも良いんだ…
えっと…
〈みず くすり たべもの のみもの めかくし ひも ひと〉
水、薬、食べ物、飲み物、目隠し、紐、人
くらいかな…思いついたものを書いた。
「そっか、教えてくれてありがとう。
水と食べ物と飲み物は昨日も今日も頑張ったんだね。凄いね。」
褒めてもらえるとは思っていなかったから急に褒められてびっくりした。認めてもえた気がして心が温かくなった。
「じゃあ次は好きな事を教えて欲しいな。例えばこんなことしてる時楽しいなとか好きな物とか食べ物とか」
好きな事…
そんなのあるかな…
嫌いな物はたくさん出てきたのに好きな事はなかなか出てこない。
ペンを持ったまま考えた。
…うーん…
〈ひとりのとき〉
一人の時は痛くない…苦しくないから…。
「一人の時か…」
斗真さんは困った顔をした。
あ、今、斗真さんと一緒にいるのにそれが嫌だって言ってるのと一緒だ…
急いで文字の上を塗りつぶした。
〈ちがう ごめんなさい〉
「良いんだよ。俺は奏くんの本当の気持ちが知りたいから。一人の時が好きっていうのは俺も同じだよ。一人の時間って好きなことできるし、楽だよね。」
斗真さんも?
「今日はこのくらいにしとこうか、また今度質問させてな。まだ8時かぁ、10時くらいになったら服とか必要な物買いに行こうか、」
買い物…外、苦手だな…人がいっぱいいるところは怖いからしんどい…
「今から何しようか、観たい映画とかある?」
DVDがたくさんある。
でも、あまりテレビとか観ないから分かんない。
「どれがいい?」
どれが良いか分からないから動物の絵が描かれたものを指さした。
「オッケー、ちょっと待ってな~」
DVDをセットしベッドに戻ってきた。
映画は面白かったが隣に座ってる斗真さんの様子が気になって何度も顔を見た。
斗真さんは目が合う度に優しく微笑んでくれた。
映画が終わる頃1つ疑問が頭に浮かんだ。
斗真さんが手を出したり怒鳴ったりしないっていうのもあるけど、どうしてか斗真さんはあまり怖いと思わなかった。こんな人初めてだな…
「映画終わったしそろそろ買い物行こうか、」
何買おう、服は2着あるし…
あ、でも昨日斗真さんの服借りたな…寝る時の服買った方がいいのかな…
あとは…取られたから新しいカッター買いたいけど、今日はバレるからやめとこう。
「俺の車で行こうか、持っていく物とかある?」
1階に降り財布だけポケットに入れ斗真さんのところに向かった。
「奏くんと買い物行ってくるー、」
「はーい、行ってらっしゃい。」
「気をつけてな。」
美香さんと直人さんに見送られ斗真さんの車に乗った。
斗真さんが膝を着き目を合わせてきた。
どこを見たらいいか分からず床を見つめる。
「俺は怒ってないよ。それに痛いこともしない。
さっきは叩かれるって思ったんだよな、怖い思いさせてごめんな。」
謝られることしてない。
むしろ謝らなくちゃいけないのは僕なのに…
初めて声が出ないことをもどかしく感じた。
ガチャ
ビクッ!
「おはよう、その子が奏くん?」
「おはよう、そうだよ。奏くん、紹介するねこの人が俺の父さん。」
斗真さんのお父さん…
「どうも、初めまして。
斗真の父の向井直人です。よろしくね。」
斗真さんと似てる。背が高くて顔もかっこいい。
斗真さんと同じで優しい目をしてるのに視線を合わすことができない…
とりあえずぺこりと頭を下げた。
「奏くん、まだ朝早いし俺の部屋でゆっくりしようか。」
斗真さんの部屋…行ったことない。
でもどうして?ここじゃダメなの?部屋で何するの?
聞きたいこといっぱいあるのに聞けない…
「ゆっくりしておいで、」
直人さんにも言われ行く雰囲気になってしまった。
元々僕には拒否権なんてない。
部屋で2人…何されるの…
「階段気をつけてな。」
斗真さんの後ろをついて行く。
2階の1番奥の部屋。
中は整っていて家具はベットと机あとテレビがある。
ベットに座るよう促された。
お互い喋らず静かな時間が数分流れた。
「ちょっと体の力抜けた?」
え?力?
言われてみればさっきより少し楽になった気がする。
直人さんに会って緊張してたのかな…
「手、開けられるか?」
斗真さんに手を触られて気づく。
強くし過ぎて開かなくなった握り拳。
斗真さんが1本ずつ指を外してくれる。
手のひらにはくっきりと爪がくい込んだ痕があった。
「痕残っちゃったね。痛いな、」
斗真さんは痛くないはずなのに痛い顔をしている。
手をさすられると何故か痛みが和らいでいく気がした。
「奏くんにいくつか教えて欲しいことがあるんだけどいいかな?」
教えて欲しいこと?なんだろう。
紙とペンを渡された。
答えをここに書いたらいいのかな。
「この紙に好きに書いていいからね。あと答えたくないことは書かなくてもいいよ。
じゃあ質問ね、奏くんに嫌な思いをしてほしくないから、怖い物とか嫌な事を教えて欲しい。」
怖い物…
〈1こ?〉紙に書いた。
「何個でもいいよ。たくさん教えてくれたら嬉しいかな、」
何個でも良いんだ…
えっと…
〈みず くすり たべもの のみもの めかくし ひも ひと〉
水、薬、食べ物、飲み物、目隠し、紐、人
くらいかな…思いついたものを書いた。
「そっか、教えてくれてありがとう。
水と食べ物と飲み物は昨日も今日も頑張ったんだね。凄いね。」
褒めてもらえるとは思っていなかったから急に褒められてびっくりした。認めてもえた気がして心が温かくなった。
「じゃあ次は好きな事を教えて欲しいな。例えばこんなことしてる時楽しいなとか好きな物とか食べ物とか」
好きな事…
そんなのあるかな…
嫌いな物はたくさん出てきたのに好きな事はなかなか出てこない。
ペンを持ったまま考えた。
…うーん…
〈ひとりのとき〉
一人の時は痛くない…苦しくないから…。
「一人の時か…」
斗真さんは困った顔をした。
あ、今、斗真さんと一緒にいるのにそれが嫌だって言ってるのと一緒だ…
急いで文字の上を塗りつぶした。
〈ちがう ごめんなさい〉
「良いんだよ。俺は奏くんの本当の気持ちが知りたいから。一人の時が好きっていうのは俺も同じだよ。一人の時間って好きなことできるし、楽だよね。」
斗真さんも?
「今日はこのくらいにしとこうか、また今度質問させてな。まだ8時かぁ、10時くらいになったら服とか必要な物買いに行こうか、」
買い物…外、苦手だな…人がいっぱいいるところは怖いからしんどい…
「今から何しようか、観たい映画とかある?」
DVDがたくさんある。
でも、あまりテレビとか観ないから分かんない。
「どれがいい?」
どれが良いか分からないから動物の絵が描かれたものを指さした。
「オッケー、ちょっと待ってな~」
DVDをセットしベッドに戻ってきた。
映画は面白かったが隣に座ってる斗真さんの様子が気になって何度も顔を見た。
斗真さんは目が合う度に優しく微笑んでくれた。
映画が終わる頃1つ疑問が頭に浮かんだ。
斗真さんが手を出したり怒鳴ったりしないっていうのもあるけど、どうしてか斗真さんはあまり怖いと思わなかった。こんな人初めてだな…
「映画終わったしそろそろ買い物行こうか、」
何買おう、服は2着あるし…
あ、でも昨日斗真さんの服借りたな…寝る時の服買った方がいいのかな…
あとは…取られたから新しいカッター買いたいけど、今日はバレるからやめとこう。
「俺の車で行こうか、持っていく物とかある?」
1階に降り財布だけポケットに入れ斗真さんのところに向かった。
「奏くんと買い物行ってくるー、」
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「気をつけてな。」
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