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2、気になる 斗真side

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久しぶりに実家に帰った。
普段はひとり暮らしだが親の友達の葬式に出席することになった。
って言っても1回しか会ったことないんだよな。
息子の奏くんも2歳の時に1回会っただけだし、もうあれから9年...ってことは、11歳か、
大きくなってるんだろうな。


あ、あの子かな...
イスに座り床を見つめている。

その子の近くでひそひそとおばさん達が話していた。
「あの子が息子でしょ?」
「あぁ、両親が亡くなった時も体売ってたらしいわよ。」
「そんな時も?汚らしい子ね」

そんな近くで話していたら聞こえるぞ。
っていうか、体売ってたことが汚いって...体を売っていたことはさっき親から聞いた。
でも、それは親がギャンブルにハマって金がないからやらされてたって、
あの子が自らやりたくてやってたわけじゃないんだろ。
聞いてるだけで腹が立ってきた。



あ、外出るのか?

「あれ?奏くん見なかった?」
母さんが聞いてきた。
「さっき外に行ったけど。」

「そう、もう少ししたら奏くん連れて家帰るからね。」

「奏くん家来るんか?」

「うん、うちで預かることになったのよ。
ギャンブルにハマるまでは1番仲良かった友達だからね。」

「そうなんだ、分かった。」

「じゃあ奏くん呼んでくるから荷物車に積んでて、」

「はーい、」

車に荷物を積み、車の中で待った。

「お待たせ、奏くんは後ろね。横になってても良いからね。」


奏くん俯いたまま、静かに座っていた。

しばらく車に揺られ俺と母さんはたわいもない話をしていた。




「はぁ…はぁ…はぁ………はぁ…はぁ…………」


…奏くん?
「母さん、ちょっと車止めて、俺後ろ行く」

「うん、」


奏くんの横に座り顔を見ると息を荒くして体を強ばらせていた。
声をかけても反応しない。
肌寒いかもと持ってきておいた上着を奏くんの肩に掛けてフードを被らせた。
一応1回は会ったことはあるが多分奏くんは覚えてないから初対面と同じで怖いんだろうな。
少しでも布があったら怖くないかな…なんて気休めにしかならないか…
呼吸はさっきよりはマシになったけど体は強ばらせたままだ。
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